高校生物の問題演習
令和3年11月21日
DNAクローニング(PCR法)
※長崎大学の入試問題を参考に作られています。
次の文章を読み、問1~問4に答えよ。
特定の遺伝子を解析する場合、ゲノムDNAから目的の遺伝子を単離したり、増幅したりする必要がある。目的の塩基配列のDNA鎖を短時間で大量に増幅させるにはPCR法が有効である。そこで、ある生物試料(サンプル)中のDNAをもとにしてPCR法の実験を行った。鋳型となるDNAを含むサンプル溶液,DNAの材料となる4種類のヌクレオチド,2種類の①短い1本鎖DNA,②DNAを複製させる酵素を混合した。それらの混合液を95℃,55℃,72℃に、その順で一定時間ずつさらし、その操作を一定の回数(サイクル数)繰り返して目的の配列のDNAを増幅させた。なお、図1はPCR法の原理を簡単に説明したものである。
問1 下線部①と②について、以下の問に答えよ。(アルファベットは半角で、それ以外は全角で入力すること。)
(1)PCR法に用いられる①の名称を答えよ。
(2)②の名称を答えよ。
問2 次の配列をもつ2本鎖DNAをPCR法で増幅させたい。ただし、2本鎖のうちの一方の鎖の5'側からの配列のみを記してある。PCR法を実行するためには、2種類の短い1本鎖DNAを、次の配列中に示した2ヶ所の2重下線部に対して、それぞれ設計する必要がある。その設計として正しいものを以下の(ア)~(カ)から2つ選び、記号で答えよ。(全角カタカナのみ入力すること。)
問3 PCR法における温度設定は、DNA増幅の効率および正確性に大きく影響する要素である。95℃を85℃に変更したところ、DNAはまったく増幅されなくなった。その理由を35字以内で述べよ。
問4 A,B,Cの3種類のサンプル溶液を用いて、目的のDNAが正確かつ効率的に増幅されるように調整されたPCR法を同時並行で実行した。その増幅中のDNA量を経時的に測定した結果を図2に示す。A,B,Cのサンプル溶液には、同一生物種由来のDNAが異なる濃度で入っているが、それ以外の条件はすべて同一である。また、この調整されたPCR法では、1サイクルでDNA量が2倍になることを確認している。
(1)PCR法の実行前にAに含まれていた目的の配列をもつDNAの濃度は、Bにおけるその濃度の何倍であったかを記せ。(半角でのみ入力すること。分数は、たとえば「4分の1」なら1/4のように、(分子)/(分母)の形で入力すること。)
(2)PCR法の実行前にCに含まれていた目的の配列をもつDNAの濃度は、Aにおけるその濃度の何倍であったかを記せ。(半角でのみ入力すること。分数は、たとえば「4分の1」なら1/4のように、(分子)/(分母)の形で入力すること。)
令和3年8月12日
植生と遷移
※( )内の年度の大学入学共通テスト・センター試験の問題を参考に作られています。(答えはすべて半角数字で入力すること)
問1 次の文章中の ア ~ ウ に入る語句の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。
(2021(令和3)・第2日程)
シベリアの落葉樹林は陽樹の林であり、自然の山火事によって遷移の進行が妨げられることで維持されている。高木は林冠に達してから ア を行うため、陽樹が林冠を占めた後、陰樹が林冠に到達する前に山火事が起きると陰樹が次の世代を残せない。ここでは、山火事後に出現する明るい裸地で イ や落葉樹の種子が発芽し、 ウ が始まる。
ア |
イ |
ウ |
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① | 光合成 | 草本 | 一次遷移 |
② | 光合成 | 草本 | 二次遷移 |
③ | 光合成 | 陰樹 | 一次遷移 |
④ | 光合成 | 陰樹 | 二次遷移 |
⑤ | 種子生産 | 草本 | 一次遷移 |
⑥ | 種子生産 | 草本 | 二次遷移 |
⑦ | 種子生産 | 陰樹 | 一次遷移 |
⑧ | 種子生産 | 陰樹 | 二次遷移 |
問2 次の文章中の エ ~ キ に入る語の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。
(2018(平成30))
森林伐採の跡地などから始まる遷移が エ とよばれるのに対して、噴火直後の溶岩台地から始まり森林に至る遷移は オ とよばれる。 エ では、遷移の始まりから カ が存在するため、 エ の進行は、 オ の進行と比べて、 キ 。
エ |
オ |
カ |
キ |
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① | 一次遷移 | 二次遷移 | 風化した岩石 | 速い |
② | 一次遷移 | 二次遷移 | 風化した岩石 | 遅い |
③ | 一次遷移 | 二次遷移 | 土壌 | 速い |
④ | 一次遷移 | 二次遷移 | 土壌 | 遅い |
⑤ | 二次遷移 | 一次遷移 | 風化した岩石 | 速い |
⑥ | 二次遷移 | 一次遷移 | 風化した岩石 | 遅い |
⑦ | 二次遷移 | 一次遷移 | 土壌 | 速い |
⑧ | 二次遷移 | 一次遷移 | 土壌 | 遅い |
問3 遷移に関する記述として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
(2018(平成30))
① 遷移が進み極相となっている森林では、種の構成が、全体として大きく変化しない。
② 遷移が進み極相となった森林の林床(地表付近)は、どこも同じ程度の暗さに保たれている。
③ 噴火直後の溶岩台地から始まり森林に至る典型的な遷移は、裸地・荒原→草原→高木林→低木林の順に進行する。
④ 噴火直後の溶岩台地から始まり森林に至る遷移の初期では、窒素化合物などの栄養塩や水分を豊富に利用できるため、このような環境に適応した植物が侵入・定着する。
⑤ 湖沼から始まる遷移は、乾性遷移とよばれる。
問4 森林の二次遷移の初期に出現する樹木の由来を調べるため、実験1・実験2を行った。
実験1
暖温帯に位置するある極相林から、地表付近の土を採取して室内に持ち帰り、土に混ざっていた植物の葉,茎,および根を全て取り除いた。この土を平皿にごく薄く敷きつめ、ときどき水を与えながら、日当たりの良いガラス温室内に放置した。2ヶ月後に皿の中を観察すると、樹木の芽ばえが多数生えていた。これらの芽ばえは、いずれも、極相林の主要な構成種のものではなかった。
実験2
実験1で土を採取した森林の一部が、実験1を行った翌春に伐採された。伐採直後から半年間、この伐採跡地に自然に生えてきた全ての樹木の芽ばえについて、種名を調べて記録した。(d)記録された樹木種の大部分は、実験1で芽生えた樹木種と共通であった。
実験1・実験2の結果から推測される、下線部(d)の樹木種の由来として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
(2019(平成31))
① 伐採前に生えていた樹木の切り株から再生した。
② 伐採跡地の周囲に残っていた陰樹が落とした種子から発芽した。
③ 伐採前の土壌中にあった陽樹の種子から発芽した。
④ 伐採された樹木が前年に作った種子から発芽した。
令和3年5月9日
個体数の調査の一方法
※北海道大学の入試問題です。
ある池に生息するザリガニの個体数を調べることにした。捕獲用の籠わな10個をランダムに池の中にしかけると、一晩で合計480匹のザリガニが捕獲された。各籠わなで捕獲された個体数に大きな違いはなく、ザリガニは池の中で均等に分布していることがわかった。個体数を推定するため、すべてのザリガニの背中に特別な蛍光塗料でマークをつけて再び池に戻した。1週間後に再び籠わなをしかけると、今度は合計300匹のザリガニが捕獲され、そのうち120匹にマークがついていた。このデータを用いて、池に生息するザリガニの個体数を推定した。
問1 このような個体数推定の方法を何と呼ぶか答えよ。
問2 問1の方法によって正確な個体数を推定するためには、いくつかの条件(仮定)が満たされていなければならない。たとえば、個体識別用のマークが消えないこと、調査期間中に新たな出生や死亡がないこと、があげられる。これら以外の条件を2つあげよ。
問3 問2の条件がすべて満たされているとき、この池のザリガニの推定個体数($N$)はどのような数式で計算できるか。1回目に捕獲された個体数(マークをつけた個体数)を$M$,2回目に捕獲された個体数を$C$,2回目に捕獲された個体のうちマークがついていた個体数を$R$,として示せ。(半角のみで入力し、分数の場合は、たとえば分母が4で分子が1なら1/4のように、(分子)/(分母)の形で入力すること。)
問4 問3の式から推定されるザリガニの個体群密度(個体/m2)を整数で答えよ。割り切れない場合は小数第1位を四捨五入せよ。なお、池の面積は400m2である。(半角数字で入力すること。)
問5 問2の条件が満たされていないとき、問3の式で求めた推定個体数($N$)はどうなるか。次から正しいものをすべて選べ。(半角数字のみで入力し、記号と記号の間は全角の読点(、)でつなぐこと。)
① 調査中に個体識別用のマークが消えていた場合、問3の推定個体数は過大評価となる。
② 調査中に個体識別用のマークが消えていた場合、問3の推定個体数は過小評価となる。
③ 調査期間中に新たな個体が生まれていた場合、問3の推定個体数は過大評価となる。
④ 調査期間中に新たな個体が生まれていた場合、問3の推定個体数は過小評価となる。
令和3年1月24日
光発芽・光受容体
※名城大学の入試問題です。(すべて全角カタカナのみで入力すること。)
次の文を読み、(1)~(7)の問に答えよ。
植物は光を受け取ってさまざまな反応を引き起こす。種子の中には光が当たらなければ発芽しない①光発芽種子がある。光発芽種子は光を受容すると、植物ホルモンである( a )が合成されて発芽が起こる。一般に光発芽種子は小さいものが多く、種子中の貯蔵物が非常に少ない。よって、②光発芽種子が光の刺激によって発芽することは都合のよいしくみといえる。
光発芽種子における発芽にかかわる光受容体は( b )で、おもに赤色光と遠赤色光を吸収する。下の表は、ある光発芽種子に赤色光(R)および遠赤色光(FR)を交互に照射したときの発芽率を調べたものである。
光による植物の反応は赤色光以外に青色光でもみられ、青色光を受容する光受容体としてフォトトロピンおよび X が知られている。青色光は、③光屈性,④茎(胚軸)の伸長抑制,⑤葉緑体の光逃避反応,⑥気孔の閉口などさまざまな反応を引き起こすことが知られている。
(1)文中の( a )と( b )に適切な語を記せ。
(2)下線部①の例として最も適切なものを次のア)~エ)から1つ選び、その記号を記せ。
ア)カボチャ イ)ケイトウ
ウ)レタス エ)キュウリ
(3)下線部②について、どのような点で都合がよいのか。25字以内で説明せよ。
(4)表の結果から、この光発芽種子の発芽に関してどのようなことがわかるか。40字以内で説明せよ。
(5)光発芽種子の発芽に関する次の文中におけるA~Cの{ }内からそれぞれ適切なものを選び、その記号を記せ。
発芽に関わる光受容体には、赤色光吸収型(Pr型)と遠赤色光吸収型(Pfr型)の2つの型があり、それぞれの光を吸収すると相互に変換される。このため、表に示されるように、赤色光,遠赤色光ともに光を照射することによる累積効果がA{ア みられる イ みられない}。また、後の光の照射によりその前の光の照射の効果がB{ア 増強される イ 打ち消される}。2つの型のうち、実際に発芽を引き起こすのはC{ア Pr型 イ Pfr型}である。
(6)文中の X に適するものを次のア)~エ)から1つ選び、その記号を記せ。
ア)ブラシノステロイド イ)フロリゲン
ウ)クリプトクロム エ)カイネチン
(7)下線部③~⑥の反応のうち、フォトトロピンが青色光を受容することで起こる反応として、正しい組合せを次のア)~オ)から1つ選び、その記号を記せ。
ア)③と④ イ)⑤と⑥
ウ)③と④と⑤
エ)③と⑤と⑥
オ)③と④と⑤と⑥
令和2年10月11日
酵素の性質
※( )内の大学の入試問題を参考に作られています。(アルファベットと記号(ハイフンなど)は半角で、それ以外は全角で入力すること)
次の🄰・🄱のそれぞれの問いに答えなさい。
🄰 酵素に関する次の文章を読み、以下の問いに答えよ。
(九州工業大)
酵素が触媒として化学反応を促進するときには、まず酵素の活性部位に基質が結合し、 A を形成する。次に、活性部位に結合していた基質が生成物に変化して酵素から離れる。酵素反応が起こるときには鍵と鍵穴のように酵素と基質の組み合わせが決まっている場合があり、これを酵素の B という。一般的な無機触媒では温度の上昇とともに反応速度も増加していくが、酵素反応では、多くの場合、35~40℃程度で速度が最大となる。この温度を C という。温度をさらに上昇させると反応速度は次第に減少し、ついには触媒として働かなくなる。
問1 文章中の A ~ C にあてはまる最も適切な語句を記せ。
問2 酵素の活性の低下を引き起こす、温度以外の原因を一つ記せ。
🄱 次の文章を読んで下の問いに答えよ。
(東京農工大)
酵素はタンパク質を主成分とする高分子化合物であり、様々な化学反応のa触媒として働く。酵素反応はb温度の影響を受けるが、無機触媒が作用する反応の温度と反応速度との関係とは大きく異なっている。また、c消化酵素の活性の最適pHはそれぞれの消化酵素が働く環境のpHとほぼ一致する。
問1 下線部aについて、触媒とはどのような物質か30字以内で記せ。なお、句読点も文字数に含める。
問2 下線部bについて、最も反応が活発になる温度を大きくこえたとき、酵素はどのような状態になるか20字以内で記せ。なお、句読点も文字数に含める。
問3 下線部cに関連して、下の図2にpHとヒトの唾液アミラーゼ,ペプシン,トリプシンの反応速度との関係を示した。(ア)~(ウ)に相当する酵素名を記せ。