この問題でおさえておきたいこと
標識再捕法の公式を理解しよう!
標識再捕法を使うための前提条件を確認しよう!
解答
問1 標識再捕法(標識再捕獲法)
問2 (例)個体識別用のマークが捕獲率に影響しないこと、調査期間中に個体の移入や移出がないこと
問3 \( \displaystyle N = \frac{MC}{R} \)
問4 3
問5 ①,③
重要事項のまとめ
・個体群
ある地域に生息する同種の個体の集団を個体群という
(例:アリの大群、アフリカのある地域に生息している象の群れなど)
個体群が一定の面積や空間に、どのくらい集まっているのかを数値で示したものを個体群密度という
ふつうはその動物の個体数を面積で割ると求まる
個体群の中における個体の散らばりぐあい(集まりぐあい)は次の3つの分布パターンに分けられる
- 集中分布…
何個か集まったものがいろいろなところに分布している - 一様分布…
一定の間隔をあけて分布している - ランダム分布…
不規則に分布して規則性がない
・個体数の推定方法
どれぐらいの個体が生息しているか全部数え上げるのは無理がある場合は、次の2つの手法が使われている
1.区画法
生息地域内の何か所かに一定の面積の区画をつくり、その区画の中の個体数を数えて、その数をもとに全部の個体数を推定する方法
植物や動きの遅い動物を数えるときに適している
求め方:
区画の中の個体数を数えて、その平均をとる
→(平均の個体数)× | (生息地域の面積) |
(区画の面積) |
2.標識再捕法
捕獲した個体に標識をつけて放し、次にもう一度捕獲してその中に標識をつけた個体がどれだけの割合で含まれているかをもとに全部の個体数を推定する方法
生息域内を自由に行き来したり発見しにくい動物を数えるときに適している
求め方:
次の公式を利用する
(最初の標識個体数) | = | (再捕獲の標識個体数) |
(全個体数) | (2回目の全捕獲数) |
※標識再捕法を利用するうえで、その個体群が以下の4つの条件を満たしていなければ正確な全個体数を算出することができなくなります。
- 調査期間中に個体識別用の標識が消えてしまわないこと
- 個体識別用の標識が捕獲のしやすさなどに影響を与えないこと
- 調査期間中に個体の移出入がないこと
- 調査期間中にその個体群で新たな出生や死亡がないこと
解説
問1 「重要事項のまとめ」を参照してください。
問2 「重要事項のまとめ」にて、標識再捕法で正確な全個体数を算出するための、個体群が満たすべき条件が示されています。その条件のうち1つめと4つめが問題文に書かれていますので、2つめと3つめを解答すればよいということになります。
問3 「重要事項のまとめ」にある標識再捕法の公式にあてはめると、
\( \displaystyle \frac{M}{N} = \frac{R}{C} \)
これを変形すると、
\( MC = NR \)
\( \displaystyle ∴N = \frac{MC}{R} \)
問4 まず、池に生息するザリガニの全個体数がわからなければ、個体群密度を求めることができません。問3で求めた式を利用すると、ザリガニの全個体数は、
\( \displaystyle \frac{480×300}{120} = \frac{144000}{120} = 1200 \)
池の面積は400m2なので、「重要事項のまとめ」にあるとおり、割り算すれば個体群密度は求まりますから、
1200÷400 = 3
問5 個体識別用のマークが消えてしまえば、2回目に捕獲された個体のうちマークがついていた個体数は本来より少なくなってしまいます。問3で求めた式をもとに考えると、$R$の数が小さくなってしまうことになります。分母が小さくなってしまうことになるので、求まる数値は過大評価のものになってしまいます。
ためしに、$R$の数値が90になってしまったとして計算をしてみると、
\( \displaystyle \frac{480×300}{90} = \frac{144000}{90} = 1600 \)
となり、問4で求めた全個体数より多くなってしまっています。
また、調査期間中に新たな個体が生まれると、ザリガニの数が多くなって捕獲されやすくなることになり、2回目に捕獲される個体数は本来より多くなってしまいます。問3で求めた式をもとに考えると、$C$の数が大きくなってしまうことになるので、求まる数値は過大評価のものになってしまいます。
ためしに、$C$の数値が320になってしまったとして計算をしてみると、
\( \displaystyle \frac{480×320}{120} = \frac{153600}{120} = 1280 \)
となり、問4で求めた全個体数より多くなってしまっています。
「標識再捕法が使えるという前提が成り立たなくなったら」ということを考察させる、おもしろい問題だといえるでしょう。