高校生物の問題演習
令和7年5月25日
アロステリック酵素
※福島県立医科大学の入試問題を参考に作られています。(答えはすべて半角数字で入力すること)
ヌクレオチドに関する次の文章を読み、下の問い(問1~4)に答えよ。
核酸の構成単位であるヌクレオチドは、塩基と ア からなるヌクレオシドにリン酸が結合してできている。核酸の一種である イ の場合、塩基にはアデニン,グアニン,ウラシル,シトシンがあり、 ア は ウ である。ヌクレオシドにリン酸が3つ結合したヌクレオシド三リン酸のうち、塩基がアデニンのものは①ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる。ヌクレオチドの新規合成には、ウラシル,シトシン,チミンを含むピリミジンヌクレオチドの合成経路とアデニン,グアニンを含むプリンヌクレオチドの合成経路がある。②ピリミジンヌクレオチドの生合成は、ATCase(アスパラギン酸トランスカルバミラーゼ)の触媒による、カルバモイルリン酸とアスパラギン酸の反応から始まり、UMP(ウリジン一リン酸)に終わる5段階の反応からなる。UMPはさらにCTP(シチジン三リン酸)へと変換される。一方、DNAを合成する場合、リボヌクレオシド二リン酸の ウ が③リボヌクレオチド還元酵素によってデオキシ ウ へと還元され、さらにリン酸が1つ結合して、デオキシリボヌクレオシド三リン酸が作られる。このデオキシリボヌクレオシド三リン酸がDNAの複製時に酵素である エ の働きによって結合することで、新生鎖が伸長していく。
問1 文中の ア ~ エ に適切な語句を記せ。
問2 下線部①について、ヒトの場合、ATPは細胞1個当たり0.00084ngしか存在しないが、1日に細胞1個当たり0.84ngのATPが消費されている。ヒトの身体が60兆個の細胞からできているとすると、1日に何kgのATPを消費することになるか、小数第一位まで求めよ。なお、1ngは\( 1×10^{-9} \)gである。
問3 下線部②について、基質濃度と酵素活性の関係について調べるため、大腸菌のATCaseを用いた次の実験を行った。
実験 ATCaseは6つの触媒サブユニット*と6つの調節サブユニットからなる酵素で、次の反応を触媒する。
*サブユニット:四次構造を持つタンパク質において、個々のポリペプチドが形成する構造のこと
カルバモイルリン酸+アスパラギン酸→カルバモイルアスパラギン酸+リン酸

なお、ATCaseには、酵素の活性を調節する低分子物質(エフェクター)が結合するアロステリック部位が存在する。
ATCase活性を、カルバモイルリン酸が十分に存在する条件下で、アスパラギン酸の濃度を変化させて測定した(曲線a)。同様の実験を2.0mmol/L CTP存在下(曲線b),2.0mmol/L ATP存在下(曲線c)で行った。また、触媒サブユニット単独でATCase活性を測定すると曲線dが得られた。一方、調節サブユニット単独でATCase活性を測定すると曲線eが得られた。
(1) 本実験でCTPがATCase活性に与えたような、最終生成物の生産量を調節するしくみを一般的に何と呼ぶか答えよ。
(2) ATPはATCaseのどこに結合し、どのように活性を調節しているか、曲線aと曲線cを比較して考察せよ。
(3) ATCase活性の基質濃度と反応速度の関係(曲線a)は、S字型である。分子との結合において、このような濃度依存性を示す、ヒトが持つタンパク質の例を1つ挙げ、その性質が生理的に有利であることを説明せよ。なお、タンパク質は酵素でなくても良い。
(4) 曲線a,d,eを比較して、ATCaseの触媒サブユニットと調節サブユニットの働きについて考察せよ。
問4 下線部③について、リボヌクレオチド還元酵素が阻害されると、細胞にどのような影響を及ぼすと考えられるか述べよ。
令和6年12月1日
光合成と呼吸
※( )内の年度の大学入学共通テスト・センター試験の問題を参考に作られています。(答えはすべて半角数字で入力すること)
問1 光合成に関する次の文章中の ア ~ ウ に入る語の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
(2023(令和5))
水草は、光合成により光エネルギーを ア エネルギーに変換し、有機物中に蓄える。光合成は同化の一種であり、 イ が生成される過程や ウ が生成される過程も、同化に相当する。
ア |
イ |
ウ |
|
① |
熱 |
グルコースからグリコーゲン |
ADPからATP |
② |
熱 |
グルコースからグリコーゲン |
ATPからADP |
③ |
熱 |
グリコーゲンからグルコース |
ADPからATP |
④ |
熱 |
グリコーゲンからグルコース |
ATPからADP |
⑤ |
化学 |
グルコースからグリコーゲン |
ADPからATP |
⑥ |
化学 |
グルコースからグリコーゲン |
ATPからADP |
⑦ |
化学 |
グリコーゲンからグルコース |
ADPからATP |
⑧ |
化学 |
グリコーゲンからグルコース |
ATPからADP |
問2 植物および動物における代謝を次の図1に示した。矢印ケ~スのうち、同化の過程を過不足なく含むものを、下の①~⑨のうちから一つ選べ。
(2015(平成27))

① ケ ② コ ③ ケ,サ
④ ケ,シ ⑤ コ,サ ⑥ コ,シ
⑦ コ,ス ⑧ ケ,シ,ス ⑨ コ,シ,ス
問3 授業用プリントの一部に、図2のようなATP合成に関連したパズルがあった。図2のⅠ~Ⅲに、下のピースⓐ~ⓕのいずれかを当てはめると、光合成あるいは呼吸の反応についての模式図が完成するとのことだ。図2のⅠ~Ⅲそれぞれに当てはまるピースⓐ~ⓕの組合せとして最も適当なものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。
(2021(令和3))

Ⅰ |
Ⅱ |
Ⅲ |
|
① |
ⓐ |
ⓒ |
ⓔ |
② |
ⓐ |
ⓒ |
ⓕ |
③ |
ⓐ |
ⓓ |
ⓔ |
④ |
ⓐ |
ⓓ |
ⓕ |
⑤ |
ⓑ |
ⓒ |
ⓔ |
⑥ |
ⓑ |
ⓒ |
ⓕ |
⑦ |
ⓑ |
ⓓ |
ⓔ |
⑧ |
ⓑ |
ⓓ |
ⓕ |
問4 ミドリさんとアキラさんは、サンゴの白化現象について資料を見ながら議論した。
(2021(令和3)・第2日程)
ミドリ:サンゴの白化現象が起こるのは、サンゴの個体であるポリプ(図1)の細胞内に共生している褐虫藻が、高温ストレスなどの原因でサンゴの細胞からいなくなるからなんだって。サンゴの色は、褐虫藻に由来しているんだね。
アキラ:えっ、褐虫藻は、単細胞生物だよね。
ミドリ:そのとおり。褐虫藻が共生しているサンゴの胃壁細胞の図(図2)を見つけたんだけど、褐虫藻には核も葉緑体もあるみたいだし、そもそも宿主のサンゴの細胞と大きさがあまり変わらないようだよ。
アキラ:つまり、褐虫藻が共生しているサンゴの細胞は、真核細胞を細胞内に取り込んだ動物細胞ということだね。
ミドリ:そのとおりだね。ところで、褐虫藻が細胞からいなくなるとサンゴが死んでしまうのは、なぜなのかな。
アキラ:あっ、褐虫藻が共生したサンゴは、餌だけではなく、光合成でできた有機物も利用しているんだって。
ミドリ:へえ。つまり、サンゴは イ ということでよいのかな。
アキラ:そういうことだね。シャコガイやゾウリムシのなかまにも、藻類を共生させて、光合成でできた有機物を利用しているものがいるみたいだよ。
ミドリ:へえ、そうなんだ。生物って本当に多様なんだね。

会話文中の イ に入る文として最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
① 同化をする能力を全くもたないので、共生している褐虫藻が同化した有機物のみを利用している
② 異化をする能力を全くもたないので、共生している褐虫藻が異化した有機物のみを利用している
③ 食物からも有機物を得ているが、これだけでは不足しており、共生している褐虫藻が同化した有機物も併せて利用している
④ 食物からも有機物を得ているが、これだけでは不足しており、共生している褐虫藻が異化した有機物も併せて利用している
⑤ 褐虫藻から取り込んだ葉緑体を用いて同化を行い、有機物を得て利用している
⑥ 褐虫藻から取り込んだ葉緑体を用いて異化を行い、有機物を得て利用している