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この問題のポイント

(大きいほう)-(小さいほう)でできた関数が増加か減少することを示して不等式を証明できる!
左辺も右辺も同じ関数の形ならば、その値の間でどうなるか調べる!

(1)〈指針〉

たとえば、$x = 1$を代入して調べてみると、
\( \sqrt{1+1} = \sqrt{2} \) ≒ 1.414
\( \displaystyle 1+\frac{1}{2} \) = 1.5
\( \displaystyle 1+\frac{1}{2}-\frac{1}{8} \) = 1+0.5-0.125 = 1.375

これより、\( \displaystyle 1+\frac{1}{2}x-\frac{1}{8}x^2 \)<\( \sqrt{1+x} \)<\( \displaystyle 1+\frac{1}{2}x \)という大小関係になると予測することができます。あとはこれをどう証明するかということがカギとなります。

不等式の証明では、大きいほうとされている式から小さいほうとされている式を引いて、それでできた式を変形して0以上となることを示すのが一般的です。しかし、今回は引き算をしてもこれ以上式を変形できないので、このやり方では行き詰ってしまいます。

そんなときは、引き算してできた式を微分して、その式がプラスになるかマイナスになるか調べましょう。微分した式がプラスなら単調増加でマイナスなら単調減少となるので、0以上で増加していくということを示せば不等式を証明できたことになります(下の〈証明〉を見ると具体的にわかりやすいかと思います)。

〈証明〉

\( \displaystyle f(x) = 1+\frac{1}{2}x-\sqrt{1+x} \)とおくと、
\( \displaystyle f'(x) = \frac{1}{2}-\frac{1}{2\sqrt{1+x}} = \frac{\sqrt{1+x}-1}{2\sqrt{1+x}} \)
$x>0$のとき、\( \sqrt{1+x}>1 \)なので、$f'(x)>0$である。

これより、$x>0$のとき$f(x)$は増加し、また、
\( \displaystyle f(0) = 1+\frac{1}{2}・0-\sqrt{1+0} = 1-1 = 0 \)
なので、$x>0$ならば$f(x)>0$

よって、\( \displaystyle 1+\frac{1}{2}x-\sqrt{1+x}>0 \)
\( \displaystyle ∴1+\frac{1}{2}x>\sqrt{1+x} \) …A

\( \displaystyle g(x) = \sqrt{1+x}-\left(1+\frac{1}{2}x-\frac{1}{8}x^2\right) \)とおくと、
\( \displaystyle g'(x) = \frac{1}{2\sqrt{1+x}}-\frac{1}{2}+\frac{1}{4}x \)
\( \displaystyle g''(x) = -\frac{1}{4\sqrt{(1+x)^3}}+\frac{1}{4} = \frac{\sqrt{(1+x)^3}-1}{4\sqrt{(1+x)^3}} \)
$x>0$のとき、\( \sqrt{(1+x)^3}>1 \)なので、$g''(x)>0$である。

これより、$x>0$のとき$g'(x)$は増加し、また、
\( \displaystyle g'(0) = \frac{1}{2\sqrt{1+0}}-\frac{1}{2}+\frac{1}{4}・0 \)
\( \displaystyle = \frac{1}{2}-\frac{1}{2}+0 = 0 \)
なので、$x>0$ならば$g'(x)>0$

$g'(x)>0$なので、$x>0$のとき$g(x)$は増加し、
\( \displaystyle g(0) = \sqrt{1+0}-\left(1+\frac{1}{2}・0-\frac{1}{8}・0^2\right) \)
\( \displaystyle = \sqrt{1}-1 = 0 \)
なので、$x>0$ならば$g(x)>0$

よって、\( \displaystyle \sqrt{1+x}-\left(1+\frac{1}{2}x-\frac{1}{8}x^2\right)>0 \)
\( \displaystyle ∴\sqrt{1+x}>1+\frac{1}{2}x-\frac{1}{8}x^2 \) …B
A,Bより、\( \displaystyle 1+\frac{1}{2}x-\frac{1}{8}x^2 \)<\( \sqrt{1+x} \)<\( \displaystyle 1+\frac{1}{2}x \)

(2)〈指針〉

大きいほうから小さいほうを引いて\( e^{\frac{1}{e}}-\sqrt{2} \)として、これが0より大きいことを示そうとしても、式をこれ以上変形できませんから、その方法をとることはできません。さらに、この式を微分しようとしても、\( e^{\frac{1}{e}} \)をどう微分すればいいかわかりません。

こういうときは、不等式の左辺と右辺が何かの関数であらわせないか考えてみましょう。たとえば、今回の問題の場合、
\( \sqrt{2} = 2^{\frac{1}{2}} \)と\( e^{\frac{1}{e}} \)
なので、2つとも\( f(x) = x^{\frac{1}{x}} \)であらわすことができます。

なので、この関数が$f(2)$と$f(e)$の間で増加することを示せば、不等式を証明できることになります。

〈証明〉

\( f(x) = x^{\frac{1}{x}} \)とおくと、
\( \sqrt{2} = 2^{\frac{1}{2}} = f(2) \)
\( e^{\frac{1}{e}} = f(e) \)
よって、$f(2)<f(e)$を示せばよい。

\( f(x) = x^{\frac{1}{x}} \)の両辺の対数をとると、
\( \log {f(x)} = \log {x^{\frac{1}{x}}} \)
\( \displaystyle \log {f(x)} = \frac{1}{x}\log x \)

両辺を$x$で微分すると、
\( \displaystyle \frac{f'(x)}{f(x)} = -\frac{1}{x^2}\log x+\frac{1}{x}・\frac{1}{x} \)
\( \displaystyle ∴\frac{f'(x)}{f(x)} = \frac{1-\log x}{x^2} \)

これより、
\( \displaystyle ∴f'(x) = \frac{1-\log x}{x^2}・f(x) \)
\( \displaystyle = \frac{1}{x^2}(1-\log x)・x^{\frac{1}{x}} \)
\( = x^{\frac{1}{x}-2}(1-\log x) \)

ここで、$x>0$において\( x^{\frac{1}{x}-2}>0 \)なので、$f'(x) = 0$となるときは\( 1-\log x = 0 \)のとき、つまり$x = e$のときである。よって、
$0<x<e$のときは\( 1-\log x>0 \)より$f'(x)>0$
$e<x$のときは\( 1-\log x<0 \)より$f'(x)<0$

$x$ 0 $e$
$f'(x)$ × 0
$f(x)$ × \( e^{\frac{1}{e}} \)

よって、増減表は右のとおりであり、$f(x)$は\( 0<x≦e \)の範囲では単調増加する。
$2<e$であるから、$f(2)<f(e)$である。
\( ∴2^{\frac{1}{2}}<e^{\frac{1}{e}} \)
\( ∴\sqrt{2}<e^{\frac{1}{e}} \)

(3)① \( \displaystyle \left\{\frac{g(x)}{f(x)}\right\}' = \frac{g'(x)f(x)-f'(x)g(x)}{\{f(x)\}^2} \)を利用して微分すると、

\( \displaystyle f'(x) = \frac{\frac{1}{x+1}・x-1・\log {(x+1)}}{x^2} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{x-(x+1)\log {(x+1)}}{x+1}}{x^2} \)
\( \displaystyle = \frac{x-(x+1)\log {(x+1)}}{x^2(x+1)} \)

② 〈指針〉

\( (a+1)^b-(b+1)^a>0 \)を証明しようにも、これ以上式を変形できませんし、この式をそのまま微分することもできません。そこで、さっきの(2)と同じように、何かの関数で表せないかを考えてみます。しかもこの問題では、①で\( \displaystyle f(x) = \frac{\log {(x+1)}}{x} \)が与えられているので、これを活用することを考えます。

\( (a+1)^b>(b+1)^a \)の両辺の対数をとると、
\( \log {(a+1)^b}>\log {(b+1)^a} \)
\( b\log {(a+1)}>a\log {(b+1)} \)

この両辺を$ab$で割れば、左辺は\( \displaystyle \frac{\log {(a+1)}}{a} \)つまり$f(a)$となり、右辺は\( \displaystyle \frac{\log {(b+1)}}{b} \)つまり$f(b)$となります。あとは、さっきの(2)のように、$f(x)$が$f(a)$と$f(b)$の間でどう変化するかをとらえて不等式を証明するといいでしょう。

〈証明〉

\( (a+1)^b>(b+1)^a \)の両辺の対数をとると、
\( \log {(a+1)^b}>\log {(b+1)^a} \)
\( b\log {(a+1)}>a\log {(b+1)} \)

この両辺を$ab$で割ると、\( a>0 \),\( b>0 \)より、
\( \displaystyle \frac{\log {(a+1)}}{a}>\frac{\log {(b+1)}}{b} \)

この不等式の左辺は①の関数の$f(a)$,右辺は$f(b)$なので、\( f(a)>f(b) \)、つまり$f(x)$は\( 0<a<b \)の範囲で単調減少することを示せばよい。

①より、\( \displaystyle f'(x) = \frac{x-(x+1)\log {(x+1)}}{x^2(x+1)} \)
\( h(x) = x-(x+1)\log {(x+1)} \)とおくと、
\( \displaystyle h'(x) = 1-\left\{1・\log {(x+1)}+(x+1)・\frac{1}{x+1}\right\} \)
\( \displaystyle = -\log {(x+1)} \)

よって、$x>0$のとき\( -\log {(x+1)}<0 \)なので、$h'(x)<0$なので、$h(x)$は減少する。
$x>0$のとき$x^2(x+1)>0$なので、$f'(x)<0$であるため、$f(x)$は減少する。
よって、\( 0<a<b \)のため、\( f(a)>f(b) \)が成立する。
よって、\( (a+1)^b>(b+1)^a \)

答え.
(1)
(上の〈証明〉参照)
(2)
(上の〈証明〉参照)
(3)
① \( \displaystyle f'(x) = \frac{x-(x+1)\log {(x+1)}}{x^2(x+1)} \)
② (上の〈証明〉参照)