この問題のポイント
(大きいほう)-(小さいほう)でできた関数が増加か減少することを示して不等式を証明できる!
左辺も右辺も同じ関数の形ならば、その値の間でどうなるか調べる!
(1)〈指針〉
たとえば、x=1を代入して調べてみると、
√1+1=√2 ≒ 1.414
1+12 = 1.5
1+12−18 = 1+0.5-0.125 = 1.375
これより、1+12x−18x2<√1+x<1+12xという大小関係になると予測することができます。あとはこれをどう証明するかということがカギとなります。
不等式の証明では、大きいほうとされている式から小さいほうとされている式を引いて、それでできた式を変形して0以上となることを示すのが一般的です。しかし、今回は引き算をしてもこれ以上式を変形できないので、このやり方では行き詰ってしまいます。
そんなときは、引き算してできた式を微分して、その式がプラスになるかマイナスになるか調べましょう。微分した式がプラスなら単調増加でマイナスなら単調減少となるので、0以上で増加していくということを示せば不等式を証明できたことになります(下の〈証明〉を見ると具体的にわかりやすいかと思います)。
〈証明〉
f(x)=1+12x−√1+xとおくと、
f′(x)=12−12√1+x=√1+x−12√1+x
x>0のとき、√1+x>1なので、f′(x)>0である。
これより、x>0のときf(x)は増加し、また、
f(0)=1+12・0−√1+0=1−1=0
なので、x>0ならばf(x)>0
よって、1+12x−√1+x>0
∴1+12x>√1+x …A
g(x)=√1+x−(1+12x−18x2)とおくと、
g′(x)=12√1+x−12+14x
g″(x)=−14√(1+x)3+14=√(1+x)3−14√(1+x)3
x>0のとき、√(1+x)3>1なので、g″(x)>0である。
これより、x>0のときg′(x)は増加し、また、
g′(0)=12√1+0−12+14・0
=12−12+0=0
なので、x>0ならばg′(x)>0
g′(x)>0なので、x>0のときg(x)は増加し、
g(0)=√1+0−(1+12・0−18・02)
=√1−1=0
なので、x>0ならばg(x)>0
よって、√1+x−(1+12x−18x2)>0
∴√1+x>1+12x−18x2 …B
A,Bより、1+12x−18x2<√1+x<1+12x
(2)〈指針〉
大きいほうから小さいほうを引いてe1e−√2として、これが0より大きいことを示そうとしても、式をこれ以上変形できませんから、その方法をとることはできません。さらに、この式を微分しようとしても、e1eをどう微分すればいいかわかりません。
こういうときは、不等式の左辺と右辺が何かの関数であらわせないか考えてみましょう。たとえば、今回の問題の場合、
√2=212とe1e
なので、2つともf(x)=x1xであらわすことができます。
なので、この関数がf(2)とf(e)の間で増加することを示せば、不等式を証明できることになります。
〈証明〉
f(x)=x1xとおくと、
√2=212=f(2)
e1e=f(e)
よって、f(2)<f(e)を示せばよい。
f(x)=x1xの両辺の対数をとると、
logf(x)=logx1x
logf(x)=1xlogx
両辺をxで微分すると、
f′(x)f(x)=−1x2logx+1x・1x
∴f′(x)f(x)=1−logxx2
これより、
∴f′(x)=1−logxx2・f(x)
=1x2(1−logx)・x1x
=x1x−2(1−logx)
ここで、x>0においてx1x−2>0なので、f′(x)=0となるときは1−logx=0のとき、つまりx=eのときである。よって、
0<x<eのときは1−logx>0よりf′(x)>0
e<xのときは1−logx<0よりf′(x)<0
x | 0 | … | e | … |
f′(x) | × | + | 0 | - |
f(x) | × | ↗ | e1e | ↖ |
よって、増減表は右のとおりであり、f(x)は0<x≦eの範囲では単調増加する。
2<eであるから、f(2)<f(e)である。
∴212<e1e
∴√2<e1e
(3)① {g(x)f(x)}′=g′(x)f(x)−f′(x)g(x){f(x)}2を利用して微分すると、
f′(x)=1x+1・x−1・log(x+1)x2
=x−(x+1)log(x+1)x+1x2
=x−(x+1)log(x+1)x2(x+1)
② 〈指針〉
(a+1)b−(b+1)a>0を証明しようにも、これ以上式を変形できませんし、この式をそのまま微分することもできません。そこで、さっきの(2)と同じように、何かの関数で表せないかを考えてみます。しかもこの問題では、①でf(x)=log(x+1)xが与えられているので、これを活用することを考えます。
(a+1)b>(b+1)aの両辺の対数をとると、
log(a+1)b>log(b+1)a
blog(a+1)>alog(b+1)
この両辺をabで割れば、左辺はlog(a+1)aつまりf(a)となり、右辺はlog(b+1)bつまりf(b)となります。あとは、さっきの(2)のように、f(x)がf(a)とf(b)の間でどう変化するかをとらえて不等式を証明するといいでしょう。
〈証明〉
(a+1)b>(b+1)aの両辺の対数をとると、
log(a+1)b>log(b+1)a
blog(a+1)>alog(b+1)
この両辺をabで割ると、a>0,b>0より、
log(a+1)a>log(b+1)b
この不等式の左辺は①の関数のf(a),右辺はf(b)なので、f(a)>f(b)、つまりf(x)は0<a<bの範囲で単調減少することを示せばよい。
①より、f′(x)=x−(x+1)log(x+1)x2(x+1)
h(x)=x−(x+1)log(x+1)とおくと、
h′(x)=1−{1・log(x+1)+(x+1)・1x+1}
=−log(x+1)
よって、x>0のとき−log(x+1)<0なので、h′(x)<0なので、h(x)は減少する。
x>0のときx2(x+1)>0なので、f′(x)<0であるため、f(x)は減少する。
よって、0<a<bのため、f(a)>f(b)が成立する。
よって、(a+1)b>(b+1)a
答え.
(1)
(上の〈証明〉参照)
(2)
(上の〈証明〉参照)
(3)
① f′(x)=x−(x+1)log(x+1)x2(x+1)
② (上の〈証明〉参照)