この問題のポイント
x→aのときのf(x)の極限値がf(a)と同じならば、x = aにおいて連続!
右側極限と左側極限が一致していればx = aにおいて微分可能!
(1)問題文にて$x = 0$で微分可能と書かれています。微分可能ということは、次の性質が成り立つということになります。
\( \displaystyle \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h)-f(a)}{h} = \lim_{x \to a} \frac{f(x)-f(a)}{x-a} \\ = f'(a) \)が存在するとき、$f(x)$は$x = a$で微分可能である。
(つまり、極限値をとってみると1つの値として求まるのであれば、$x = a$で微分可能であるということ)
これを利用して、「この値で微分可能かどうか」を調べるには、その値を境界とした右側極限と左側極限が一致するかを調べ、一致していれば微分可能と判断するということが一般的な方法となっています。この問題でも、$x = 0$での右側極限と左側極限をとりましょう。
$x≧0$のとき、\( f(x) = x(e^{2x}+a) \)ですから、右側極限はこうなります。
\begin{eqnarray} &&\displaystyle \lim_{h \to +0} \frac{f(0+h)-f(0)}{h}\\ &&\displaystyle = \lim_{h \to +0} \frac{h(e^{2h}+a)-0}{h}\\ &&\displaystyle = \lim_{h \to +0} (e^{2h}+a)\\ &&= e^0+a = 1+a \end{eqnarray}
$x<0$のとき、\( f(x) = -x(e^{2x}+a) \)ですから、左側極限はこうなります。
\begin{eqnarray} &&\displaystyle \lim_{h \to -0} \frac{f(0+h)-f(0)}{h}\\ &&\displaystyle = \lim_{h \to -0} \frac{-h(e^{2h}+a)-0}{h}\\ &&\displaystyle = \lim_{h \to +0} \{-(e^{2h}+a)\}\\ &&= -e^0-a = -1-a \end{eqnarray}
微分可能であるためには、右側極限と左側極限が一致している必要があるので、
\( 1+a = -1-a \)
\( ∴a = -1 \)
これより、\( 1+a \)も\( -1-a \)も0となるので、\( f'(0) = 0 \)です。
(2)〈指針〉
連続であることの証明ですが、その証明には次の性質を利用することができます。
\( \displaystyle \lim_{x \to a} f(x) = f(a) \)が成り立つとき、$f(x)$は$x = a$において連続である。
よって、\( \displaystyle \lim_{x \to 0} f'(x) \)が$f'(0)$の値と同じになることを証明すればいいということになります。ただし、$f(x)$は$x = 0$を境に関数が変わりますから、$f'(x)$も$x = 0$を境に関数が変わるはずです。なので、(1)と同じように$x = 0$での右側極限と左側極限をとって調べる必要があります。「この値で連続かどうか」を調べるときは、その値を境界とした右側極限と左側極限の値を調べ、さらにその2つが一致するかを調べるということが多いです。
〈証明〉
$x≧0$のとき、\( f(x) = x(e^{2x}-1) \)より、
\( f'(x) \\ = 1・(e^{2x}-1)+x(2e^{2x}) = (2x+1)e^{2x}-1 \)なので、
\begin{eqnarray} &&\displaystyle \lim_{x \to +0} f'(x)\\ &&\displaystyle = \lim_{x \to +0} \{(2x+1)e^{2x}-1\}\\ &&= (0+1)e^0-1\\ &&= 1-1 = 0 \end{eqnarray}
$x<0$のとき、\( f(x) = -x(e^{2x}-1) \)より、
\( f'(x) \\ = -1・(e^{2x}-1)-x(2e^{2x}) = -(2x+1)e^{2x}+1 \)なので、
\begin{eqnarray} &&\displaystyle \lim_{x \to -0} f'(x)\\ &&\displaystyle = \lim_{x \to -0} \{-(2x+1)e^{2x}+1\}\\ &&= -(0+1)e^0+1\\ &&= -1+1 = 0 \end{eqnarray}
右側極限と左側極限が一致し、(1)より\( f'(0) = 0 \)なので、\( \displaystyle \lim_{x \to +0} f'(x) = \lim_{x \to -0} f'(x) = f'(0) \)が成り立つ。
よって、$f'(x)$は$x = 0$で連続である。
(3)〈指針〉
\( \displaystyle \lim_{x \to +0} \frac{f'(x)}{x} \)については、\( f'(x) = (2x+1)e^{2x}-1 \)を代入して計算を進めれば求まります。そして、微分可能でないことの証明ですが、(1)で説明したように右側極限と左側極限をとって微分可能かを調べる方法で考えればよいでしょう。
ちょうど\( \displaystyle \lim_{x \to +0} \frac{f'(x)}{x} \)を求めたところですが、この形は\( \displaystyle \lim_{x \to a} \frac{f(x)-f(a)}{x-a} \)の式の$f(x)$に$f'(x)$をあてはめ、$a$に0を代入したとみなせば、$x = 0$での右側極限をとったことになります。
よって、それと同じ方法で左側極限をとって、その2つが一致しなければ微分可能でないと証明することができます。
〈証明〉
\( \displaystyle \lim_{x \to +0} \frac{f'(x)}{x} \)を求める。$x≧0$において、\( f'(x) = (2x+1)e^{2x}-1 \)より、
\( \displaystyle \small{\lim_{x \to +0} \frac{f'(x)}{x}} \)
\( \displaystyle \small{= \lim_{x \to +0} \frac{(2x+1)e^{2x}-1}{x}} \)
\( \displaystyle \small{= \lim_{x \to +0} \left(\frac{e^{2x}-1}{x}+2e^{2x}\right)} \)
\( \displaystyle \small{= \lim_{x \to +0} \left\{\frac{(e^x+1)(e^x-1)}{x}+2e^{2x}\right\}} \)
\( \displaystyle \small{= \lim_{x \to +0} (e^x+1)・\lim_{x \to +0} \frac{(e^x-1)}{x}+2\lim_{x \to +0} e^{2x}} \)
\( \displaystyle \small{= \lim_{x \to +0} (e^x+1)・\lim_{x \to +0} \frac{(e^x-e^0)}{x-0}+2\lim_{x \to +0} e^{2x}} \)
\( \small{= (e^0+1)・e^0+2・e^0} \)
= (1+1)・1+2・1 = 4
同様にして\( \displaystyle \lim_{x \to -0} \frac{f'(x)}{x} \)を求める。$x<0$において、\( f'(x) = -(2x+1)e^{2x}+1 \)より、
\( \displaystyle \small{\lim_{x \to -0} \frac{f'(x)}{x}} \)
\( \displaystyle \small{= \lim_{x \to -0} \frac{-(2x+1)e^{2x}+1}{x}} \)
\( \displaystyle \small{= \lim_{x \to -0} \left\{\frac{-(e^{2x}-1)}{x}-2e^{2x}\right\}} \)
\( \displaystyle \small{= \lim_{x \to -0} \left\{\frac{-(e^x+1)(e^x-1)}{x}-2e^{2x}\right\}} \)
\( \displaystyle \small{= -\lim_{x \to -0} (e^x+1)・\lim_{x \to -0} \frac{(e^x-1)}{x}-2\lim_{x \to -0} e^{2x}} \)
\( \displaystyle \small{= -\lim_{x \to -0} (e^x+1)・\lim_{x \to -0} \frac{(e^x-e^0)}{x-0}-2\lim_{x \to -0} e^{2x}} \)
\( \small{= -(e^0+1)・e^0-2・e^0} \)
= -(1+1)・1-2・1 = -4
右側極限と左側極限の値が等しくないので、$f'(x)$は$x = 0$で微分可能ではない。
答え.
(1)
\( a = -1 \),\( f'(0) = 0 \)
(2)
(上の〈証明〉参照)
(3)
\( \displaystyle \lim_{x \to +0} \frac{f'(x)}{x} = 4 \)
($x = 0$で微分可能でない証明は上の〈証明〉参照)