この問題のポイント
関数内にある定積分は、定数とみなして計算をしても進まない場合は、いったん積分の計算をしてしまう!
(1)\( \displaystyle \int_{-x}^x (e^t-e^{-t})dt \)
\( \displaystyle = \left[e^t+e^{-t}\right]_{-x}^x \)
\( = (e^x+e^{-x})-(e^{-x}+e^{-(-x)}) \)
\( = (e^x+e^{-x})-(e^{-x}+e^x) \)
\( = e^x+e^{-x}-e^{-x}-e^x \)
= 0
(2)定積分の部分は計算していくと、なんらかの数になります。そこで、定積分の部分をなんらかの文字に置き換えて計算していくという方法があります。ところが、この問題については、その方法を用いたとしても、
\( F(x) = m \)($m$は定数)
となるだけで、これ以上、計算などを進めることができません。そこで、その定積分の部分について、積分の計算を進める方法を使います。この問題について、$f(t)$の原始関数のひとつを$G(t)$とおきます。すると、
\( \displaystyle F(x) = \int_{-x}^x f(t)dt \)
\( \displaystyle = \left[G(t)\right]_{-x}^x \)
\( = G(x)-G(-x) \)
よって、これを微分すると、
$F'(x)$
\( = G'(x)-G'(-x)・(-1) \)
\( = G'(x)+G'(-x) \)
\( = f(x)+f(-x) \)
\( = g(x)+h(x)+g(-x)+h(-x) \)
\( g(-t) = g(t) \),\( h(-t) = -h(t) \)の関係ですから、
$F'(x)$
\( = g(x)+h(x)+g(-x)+h(-x) \)
\( = g(x)+h(x)+g(x)-h(x) \)
\( = 2g(x) \)
(3)\( g(t) = t^2-1 \),\( h(t) = (e^t-e^{-t})\cos{t} \)とおくと、
$g(-t)$
\( = (-t)^2-1 \)
\( = t^2-1 \)より、\( g(-t) = g(t) \)
$h(-t)$
\( = (e^{-t}-e^{-(-t)})\cos{(-t)} \)
\( = (e^{-t}-e^t)\cos{t} \)
\( = -(e^t-e^{-t})\cos{t} \)より、\( h(-t) = -h(t) \)
よって、(2)より、
$F'(x)$
\( = 2g(x) \)
\( = 2(x^2-1) \)
\( = 2(x+1)(x-1) \)
これより、$F(x)$は、\( x = -1 \)のとき極大値、\( x = 1 \)のとき極小値をとるので、\( x>0 \)における$F(x)$の増減は次のようになります。
$x$ |
0 |
… |
1 |
… |
$F'(x)$ |
- |
0 |
+ |
|
$F(x)$ |
↘ |
極小値 |
↗ |
この増減表より、\( x = 1 \)のときに$F(x)$は最小値をとります。
そして、\( g(-t) = g(t) \)なので$g(t)$は偶関数、\( h(-t) = -h(t) \)なので$h(t)$は奇関数ですから、
\( \displaystyle \int_{-a}^a g(t)dt = 2\int_0^a g(t)dt \)
\( \displaystyle \int_{-a}^a h(t)dt = 0 \)
なので、
\begin{eqnarray} &&F(x)\\ &&= \int_{-x}^x f(t)dt\\ &&= \int_{-x}^x \{g(t)+h(t)\}dt\\ &&= \int_{-x}^x g(t)dt+\int_{-x}^x h(t)dt\\ &&= 2\int_0^x g(t)dt\\ &&= 2\int_0^x (t^2-1)dt\\ &&= 2\left[\frac{1}{3}t^3-t\right]_0^x\\ &&= 2\left(\frac{1}{3}x^3-x\right)\\ &&= \frac{2}{3}x^3-2x\\ \end{eqnarray}
よって、最小値をとる\( x = 1 \)のときの値は、
$F(1)$
\( \displaystyle = \frac{2}{3}・1^3-2・1 \)
\( \displaystyle = \frac{2}{3}-2 \)
\( \displaystyle = -\frac{4}{3} \)
答え.
(1)\( F(x) = 0 \)
(2)\( F'(x) = 2g(x) \)
(3)\( \displaystyle -\frac{4}{3} \)