この問題のポイント
複素数zが実数ならz = z!
zのままやx+yiの形で考えても解けない問題は、極形式r(cosθ+isinθ)を利用して考えてみる!
(1)複素数$z$が実数、純虚数であるときの条件として、次のようなものがあります。
$z$が実数\( \iff \)
\( z = \overline{z} \)
$z$が純虚数\( \iff \)
\( z = -\overline{z} \)かつ\( z \neq 0 \)
この条件を使って考えてみると、
\( \displaystyle \overline{z+\frac{1}{z}} = z+\frac{1}{z} \)
ここで、共役複素数について、次のような性質があることを利用して、上の式を変形していきましょう。
A.\( \overline{α+β} = \overline{α}+\overline{β} \)
B.\( \overline{α-β} = \overline{α}-\overline{β} \)
C.\( \overline{αβ} = \overline{α}\overline{β} \)
D.\( \displaystyle \overline{\left(\frac{α}{β}\right)} = \frac{\overline{α}}{\overline{β}} \)
※つまり、四則計算をした後に共役をとっても、共役をとった後に四則計算をしても、結果は変わらないということです。
上のA.の性質を利用すると、
\( \displaystyle \overline{z}+\frac{1}{\overline{z}} = z+\frac{1}{z} \)
両辺に\( z\overline{z} \)をかけると、
\( z(\overline{z})^2+z = z^2\overline{z}+\overline{z} \)
\( z(\overline{z})^2-(z^2+1)\overline{z}+z = 0 \)
因数分解すると、\( (\overline{z}-z)(z\overline{z}-1) = 0 \)
ここで、\( |z|^2 = z\overline{z} \)より、\( (\overline{z}-z)(|z|^2-1) = 0 \)
これより、\( \overline{z}-z = 0 \)か、\( |z|^2-1 = 0 \)と考えられますが、$z$は虚数ですから、\( z = \overline{z} \)にはなりえません(\( z = \overline{z} \)だと実数になります)。
つまり、\( \overline{z}-z \)は0にならないということになります。
よって、\( |z|^2-1 = 0 \)
\( |z|^2 = 1 \)
\( |z|≧0 \)より、\( |z| = 1 \)
ちなみに、\( |z|^2 = z\overline{z} \)はかなり重要な定理になりますので、きちんとおさえるようにしてください。
(2)この問題については、(1)のように式をたてて変形していくということができませんし、\( z = x+yi \)とおいて考えていくと、非常に計算がややこしくなります。そこで、複素数$z$を極形式の形で置き換えて考えてみましょう。極形式とは、\( r(\cos{θ}+i\sin{θ}) \)(\( 0≦θ≦2π \))の形です。
$r$は複素数$z$の絶対値のことなので、(1)で\( |z| = 1 \)と求めましたので、\( z = \cos{θ}+i\sin{θ} \)(\( 0≦θ≦2π \))とおけます。
すると、
\( \displaystyle \frac{1}{z} \)
\( \displaystyle = \frac{1}{\cos{θ}+i\sin{θ}} \)
\( \displaystyle = \frac{\cos{θ}-i\sin{θ}}{(\cos{θ}+i\sin{θ})(\cos{θ}-i\sin{θ})} \)
\( \displaystyle = \frac{\cos{θ}-i\sin{θ}}{\cos^2{θ}+\sin^2{θ}} \)
\( = \cos{θ}-i\sin{θ} \)(\( ∵\cos^2{θ}+\sin^2{θ} = 1 \))
\( \displaystyle ∴z+\frac{1}{z} = 2\cosθ \)
\( 0≦θ≦2π \)より、\( -1≦\cosθ≦1 \)なので、これが整数となるなら、
\( 2\cosθ = -2,-1,0,1,2 \)
のどれかの値になるということになります。
\( 2\cosθ = -2 \)ならば、\( \cosθ = -1 \)より、\( θ = π \)
このとき\( z = \cos{π}+i\sin{π} = -1 \)
しかし、これは$z$が虚数であるという問題文の条件に合いません。
\( 2\cosθ = -1 \)ならば、\( \displaystyle \cosθ = -\frac{1}{2} \)より、\( \displaystyle θ = \frac{2}{3}π,\frac{4}{3}π \)
このとき\( \displaystyle z = \cos{\frac{2}{3}π}+i\sin{\frac{2}{3}π} = \frac{-1+\sqrt{3}i}{2} \)か\( \displaystyle z = \cos{\frac{4}{3}π}+i\sin{\frac{4}{3}π} = \frac{-1-\sqrt{3}i}{2} \)
\( 2\cosθ = 0 \)ならば、\( \cosθ = 0 \)より、\( \displaystyle θ = \frac{1}{2}π,\frac{3}{2}π \)
このとき\( \displaystyle z = \cos{\frac{1}{2}π}+i\sin{\frac{1}{2}π} = i \)か\( \displaystyle z = \cos{\frac{3}{2}π}+i\sin{\frac{3}{2}π} = -i \)
\( 2\cosθ = 1 \)ならば、\( \displaystyle \cosθ = \frac{1}{2} \)より、\( \displaystyle θ = \frac{1}{6}π,\frac{5}{6}π \)
このとき\( \displaystyle z = \cos{\frac{1}{6}π}+i\sin{\frac{1}{6}π} = \frac{1+\sqrt{3}i}{2} \)か\( \displaystyle z = \cos{\frac{5}{6}π}+i\sin{\frac{5}{6}π} = \frac{1-\sqrt{3}i}{2} \)
\( 2\cosθ = 2 \)ならば、\( \cosθ = 1 \)より、\( θ = 0 \)
このとき\( z = \cos{0}+i\sin{0} = 1 \)
しかし、これは$z$が虚数であるという問題文の条件に合いません。
以上をまとめると、
$z$ = \( \displaystyle \frac{-1+\sqrt{3}i}{2} \),\( \displaystyle \frac{-1-\sqrt{3}i}{2} \),$i$,$-i$,\( \displaystyle \frac{1+\sqrt{3}i}{2} \),\( \displaystyle \frac{1-\sqrt{3}i}{2} \)
答え.
(1)\( |z| = 1 \)
(2)$z$ = \( \displaystyle \frac{-1+\sqrt{3}i}{2} \),\( \displaystyle \frac{-1-\sqrt{3}i}{2} \),$i$,$-i$,\( \displaystyle \frac{1+\sqrt{3}i}{2} \),\( \displaystyle \frac{1-\sqrt{3}i}{2} \)