この問題のポイント
微分可能な関数でf(a)-f(b)という関数の差の形があるときは、平均値の定理の利用を考えてみよう!
(1)〈指針〉
この問題では、\( f(x)-f(0) \)という関数どうしの引き算の形が出ています。この形が出ている不等式の証明の問題では、平均値の定理が使えるのではないかと考えてみましょう。平均値の定理は下の説明のとおりでしたね?
微分可能な$f(x)$について、区間\( [a,b] \)で連続のとき
\( \displaystyle \frac{f(b)-f(a)}{b-a} = f'(c) \)
を満たす$c$が$a$と$b$の間に存在する(=\( a<c<b \)である)
この定理について、$a$を$x$,$b$を0に置き換えれば、それによって微分した式(たとえば$f'(t)$とおきます)が得られますが、微分した式は問題文にあるとおり$c$より小さいです。これを利用して式を変形していくとよいでしょう。
〈証明〉
[1]\( x>0 \)のとき
平均値の定理より、区間\( [0,x] \)において、
\( \displaystyle \frac{f(x)-f(0)}{x-0} = f'(t) \)
つまり、\( \displaystyle \frac{f(x)-f(0)}{x} = f'(t) \),\( 0<t<x \)を満たす$t$が存在する。
\( f'(t)<c \)より、
\( \displaystyle \frac{f(x)-f(0)}{x}<c \)
\( f(x)-f(0)<cx \)
[2]\( x = 0 \)のとき
\( f(x)-f(0) = f(0)-f(0) = 0 \)
\( cx = c・0 = 0 \)より、\( f(x)-f(0) = cx \)
[3]\( x<0 \)のとき
平均値の定理より、区間\( [x,0] \)において、
\( \displaystyle \frac{f(0)-f(x)}{0-x} = f'(t) \)
つまり、\( \displaystyle \frac{f(0)-f(x)}{-x} = f'(t) \),\( x<t<0 \)を満たす$t$が存在する。
\( f'(t)<c \)より、
\( \displaystyle \frac{f(0)-f(x)}{-x}<c \)
\( \displaystyle \frac{f(x)-f(0)}{x}<c \)
\( x<0 \)より\( f(x)-f(0)>cx \)
[1]~[3]より、\( x≧0 \)のときは\( f(x)-f(0)≦cx \),\( x≦0 \)のときは\( f(x)-f(0)≧cx \)
解答のチェックポイント
- $x$が0より大きいか、小さいか、0のときかで場合分けして証明しているか
- 平均値の定理を使って証明を進めているか
- $f'(x)$が$c$より小さいということを利用しているか
(2)〈指針〉
$f(x)$という形を使った方程式に実数解があることを証明するときに使える定理として中間値の定理があります。中間値の定理は下のような定理です。
\( a≦x≦b \)で連続な関数$f(x)$について、$f(a)$と$f(b)$の間にあるどんな実数$k$に対しても、\( f(c) = k \)となる$c$が存在する(\( a≦c≦b \))
この問題の式を\( f(x)-x = 0 \)に変形すれば、中間値の定理を使えるようになりますが、この問題では$x$についての範囲はありませんから、\( f(x)-x \)がどこかの値で最大・最小になることはないことを示しておかないといけません。
また、(1)で証明したことを使って(2)を証明するというパターンは多いので、\( f(x)-x \)がどこまでも続くということを示すときに(1)の式を利用するといいでしょう。
〈証明〉
方程式\( f(x)-x = 0 \)について考える。ここで、\( g(x) = f(x)-x \)とおく。
$g(x)$は微分可能な関数であり、連続である。
[1]\( x≧0 \)のとき
\( f(x)-f(0)≦cx \)より、\( f(x)≦f(0)+cx \)
よって、\( f(x)-x≦f(0)+cx-x = f(0)+(c-1)x \)
ここで、\( c<1 \)より\( c-1<0 \)だから、
\(\displaystyle \lim_{x \to \infty} (c-1)x = -\infty\)なので、
\(\displaystyle \lim_{x \to \infty} g(x) = \lim_{x \to \infty} \{f(0)+(c-1)x\} = -\infty\)
[2]\( x≦0 \)のとき
\( f(x)-f(0)≧cx \)より、\( f(x)≧f(0)+cx \)
よって、\( f(x)-x≧f(0)+cx-x = f(0)+(c-1)x \)
\( c<1 \)より\( c-1<0 \)だから、 \(\displaystyle \lim_{x \to -\infty} (c-1)x = \infty\)なので、 \(\displaystyle \lim_{x \to -\infty} g(x) = \lim_{x \to -\infty} \{f(0)+(c-1)x\} = \infty\)
$g(x)$は連続な関数なので、[1],[2]と中間値の定理により、\( g(x) = 0 \)は少なくとも1つの実数解をもつ。
つまり、\( f(x)-x = 0 \)は少なくとも1つの実数解をもつので、\( f(x) = x \)は少なくとも1つの実数解をもつ。
解答のチェックポイント
- 方程式を\( f(x)-x = 0 \)に変形して\( f(x)-x \)について証明を進めているか
- その方程式が実数解をもつことを中間値の定理を使って証明しているか
- 中間値の定理を使ううえで、$x$をどれほど大きく(小さく)しても\( f(x)-x \)の値に終わりがないことを示しているか
答え.
(1)(上の〈証明〉参照)
(2)(上の〈証明〉参照)