この問題のポイント
三角関数の積分では1次式になおしてから積分していく!
公式を利用して式を変形していこう!
(1)\( \cos{mx}\cos{nx} \)というのは、\( \cos{mx} \)と\( \cos{nx} \)のかけ算、つまり積の形になっています。\( \cos{mx} \)も\( \cos{nx} \)も両方とも1次式ですから、それらの積である\( \cos{mx}\cos{nx} \)は2次式です。
三角関数の積分では、式の次数を下げて1次式になおしてから積分しようとするのがポイントです。この問題でも2次式を1次式に変換していくことにしましょう。
この式をよく見ると、\( \cos \)どうしのかけ算という形になっています。そこで数学Ⅱで習った積→和の公式を使えばかけ算から足し算の式に変わり、次数が下がりそうだと考えることができます。\( \cos \)どうしのかけ算の式ならば、積→和の公式はこの形でしたね?
\( \displaystyle \cos{α}\cos{β} = \frac{1}{2}\{\cos{(α+β)}+\cos{(α-β)}\} \)
というわけで、$I_{m,n}$は、次のように書き換えできます。
\( \displaystyle \frac{1}{2}\int_0^{2π} \{\cos{(m+n)x}+\cos{(m-n)x}\}dx \) …①
これで1次式にできました。そして、\( \cos \)の積分はこのような形になりますね?
\( \displaystyle \int \cos{kx}dx = \frac{\sin{kx}}{k}+C \)
ただし、$I_{m,n}$の場合は$m$や$n$といった文字が使われているので、分母が0になる可能性があります。それではいけませんので、ここからは場合分けして考えていきましょう。
[1]\( m+n \neq 0 \)かつ\( m-n \neq 0 \)\( \Rightarrow \)\( m \neq ±n \)の場合
$I_{m,n}$は、このようになります。
\( \displaystyle \frac{1}{2}\left[\frac{\sin{(m+n)x}}{m+n}+\frac{\sin{(m-n)x}}{m-n}\right]_0^{2π} \)
\( \sin{2π} \)も\( \sin0 \)も0ですから、この式は0と計算できます。
[2]\( m+n \neq 0 \)かつ\( m-n = 0 \)\( \Rightarrow \)\( m = n \neq 0 \)の場合
\( \cos{(m-n)x} \)は\( \cos0 = 1 \)となるわけですから、①の式は、
\( \displaystyle \frac{1}{2}\int_0^{2π} \{\cos{(m+n)x}+1\}dx \)
となります。よって、このように変形できます。
\( \displaystyle \frac{1}{2}\left[\frac{\sin{(m+n)x}}{m+n}+x\right]_0^{2π} \)
\( \displaystyle = \frac{1}{2}\{(0+2π)-(0+0)\} \)
\( = π \)
[3]\( m+n = 0 \)かつ\( m-n \neq 0 \)\( \Rightarrow \)\( m = -n \neq 0 \)の場合
\( \cos{(m+n)x} \)は\( \cos0 = 1 \)となるので、①の式はこのように変形できます。
\( \displaystyle \frac{1}{2}\int_0^{2π} \{1+\cos(m-n)x\}dx \)
\( \displaystyle = \frac{1}{2}\left[x+\frac{\sin{(m-n)x}}{m-n}\right]_0^{2π} \)
\( \displaystyle = \frac{1}{2}\{(2π+0)-(0+0)\} \)
\( = π \)
[4]\( m+n = 0 \)かつ\( m-n = 0 \)\( \Rightarrow \)\( m = n = 0 \)の場合
\( \cos{(m+n)x} \)も\( \cos{(m-n)x} \)も1となるので、
\( \displaystyle \frac{1}{2}\int_0^{2π} (1+1)dx \)
\( \displaystyle = \left[x\right]_0^{2π} \)
\( = 2π \)
(2)$J_n$はこのようにできますね。
\begin{eqnarray} &&\int_0^{2π} \left(\sum_{k=1}^n \sqrt{k}\cos{kx}\right)^2dx\\ &&= \int_0^{2π} (\cos{x}+\sqrt{2}\cos{2x}+…+\sqrt{n}\cos{nx})^2dx\\ \end{eqnarray}
\begin{eqnarray} &&\small{\int_0^{2π} \left(\sum_{k=1}^n \sqrt{k}\cos{kx}\right)^2dx}\\ &&\small{= \int_0^{2π} (\cos{x}+\sqrt{2}\cos{2x}+…+\sqrt{n}\cos{nx})^2dx}\\ \end{eqnarray}
ここで、(1)で考えた[1]にて、$m$と$n$の値が違ったものであれば0になるとわかったわけですから、この式は結局このようになるといえます。
\( \displaystyle \int_0^{2π} (\cos^2{x}+2\cos^2{2x}+…+n\cos^2{nx})dx \)
そして(1)で考えた[2]にて、$m$と$n$の値が0以外の等しい値だった場合は\( \displaystyle \int_0^{2π} \cos{mx}\cos{nx}dx = π \)と考えていましたね?
ということは、
\begin{eqnarray} &&\int_0^{2π} (\cos^2{x}+2\cos^2{2x}+…+n\cos^2{nx})dx\\ &&= π+2π+3π+…+nπ\\ &&= (1+2+3+…+n)π\\ &&= \frac{n(n+1)}{2}π\\ \end{eqnarray}
答え.
(1)$$ \begin{cases} 0 & (m \neq ±nの場合) \\ π & (m = ±n \neq 0の場合) \\ 2π & (m = n = 0の場合) \\ \end{cases} $$
(2)
\( \displaystyle \frac{n(n+1)}{2}π \)