この問題のポイント
●乗を考える問題では、問題の条件を方程式や不等式であらわしたら常用対数をとる!
(1)1回以上「あたり」の出る確率を考えるとき、0回「あたり」の出る確率、つまり「はずれ」だけが出る確率を考えてそれを1から引くほうが簡単ですね?なので、1回ボタンを押して「はずれ」が出る確率を$P$とします。
20回ボタンを押して20回とも「はずれ」が出る確率は$P^{20}$です。よって、20回ボタンを押して1回以上「あたり」の出る確率は$1-P^{20}$で、これが36%なので、
\( \displaystyle 1-P^{20} = \frac{36}{100} \)
\( \displaystyle ∴P^{20} = \frac{64}{100} \)
\( \displaystyle P = \left(\frac{64}{100}\right)^{\frac{1}{20}} \)
これを使って、1回以上「あたり」の出る確率が90%以上となる回数を考えます。求める回数を$x$とすると、さっきの20回ボタンを押した確率を考えたときと同じように考えれば、
\( \displaystyle 1-P^x≧\frac{90}{100} \)
\( \displaystyle P^x≦\frac{10}{100} \)
\( \displaystyle P^x≦\frac{1}{10} \)
「●乗」の部分を求めることになるわけですが、このような問題では、常用対数(10を底とした対数)をとって考えます。
\( \displaystyle \log_{10} P^x≦\log_{10} \frac{1}{10} \)
\( \displaystyle x\log_{10} P≦\log_{10} 10^{-1} \)
\( x\log_{10} p≦-1 \)
さっき、\( \displaystyle P = \left(\frac{64}{100}\right)^{\frac{1}{20}} \)と求めましたから、
\( \displaystyle x\log_{10} \left(\frac{64}{100}\right)^{\frac{1}{20}}≦-1 \)
\( \displaystyle \frac{1}{20}x\log_{10} \frac{64}{100}≦-1 \)
\( \displaystyle \frac{1}{20}x(\log_{10} 64-\log_{10} 100)≦-1 \)
\( \displaystyle \frac{1}{20}x(\log_{10} 2^6-\log_{10} 10^2)≦-1 \)
\( \displaystyle \frac{1}{20}x(6\log_{10} 2-2)≦-1 \)
\( \displaystyle \frac{1}{10}x(3\log_{10} 2-1)≦-1 \)
\( x(3\log_{10} 2-1)≦-10 \)
ここで、\( 0.3010<\log_{10} 2<0.3011 \)なので、\( 0.9030<3\log_{10} 2<0.9033 \)ですから、\( 3\log_{10} 2-1 \)は負の数となることがわかります。
よって、\( \displaystyle x≧-\frac{10}{3\log_{10} 2-1} \)
\( \displaystyle x≧\frac{10}{1-3\log_{10} 2} \)…Ⓐ
\( 0.9030<3\log_{10} 2<0.9033 \)なので、
\( -0.9033<-3\log_{10} 2<-0.9030 \)
\( 0.0967<1-3\log_{10} 2<0.0970 \)
\( \displaystyle \frac{10}{0.0970}<\frac{10}{1-3\log_{10} 2}<\frac{10}{0.0967} \)
\( \displaystyle \frac{10}{0.0970} \)を計算すると103.09…、\( \displaystyle \frac{10}{0.0967} \)を計算すると、103.41…ですから、\( \displaystyle 103<\frac{10}{1-3\log_{10} 2}<104 \)
よって、Ⓐを満たす最小の自然数は104なので、最低104回押せばよいということになります。
(2)① 16枚のカードの並べ方は全通りだと16×15×14×…×1で求まります。そのうち、1から16まで左から小さい順に並ぶという並べ方は1通りしかありませんから、
\( \displaystyle p = \frac{1}{16×15×14×…×1} \)
ここで、16を2^4、15を3×5、14を2×7というように、すべて素因数分解してかけ算したとすると、$p$はこのように書き換えできます。
\( \displaystyle p = \frac{1}{2^{15}・3^6・5^3・7^2・11・13} \)
これより、\( \log_{10} p \)はこのようになります。
\( \displaystyle \log_{10} \frac{1}{2^{15}・3^6・5^3・7^2・11・13} \)
\( = \log_{10} (2^{-15}・3^{-6}・5^{-3}・7^{-2}・11^{-1}・13^{-1}) \)
\( = \log_{10} 2^{-15}+\log_{10} 3^{-6}+\log_{10} 5^{-3}+\log_{10} 7^{-2}+\log_{10} 11^{-1}+\log_{10} 13^{-1} \)
\( = -(15\log_{10} 2+6\log_{10} 3+3\log_{10} 5+2\log_{10} 7+\log_{10} 11+\log_{10} 13) \)
\( \displaystyle = -(15\log_{10} 2+6\log_{10} 3+3\log_{10} \frac{10}{2}+2\log_{10} 7+\log_{10} 11+\log_{10} 13) \)
\( = -\{15\log_{10} 2+6\log_{10} 3+3(\log_{10} 10-\log_{10} 2)+2\log_{10} 7+\log_{10} 11+\log_{10} 13\} \)
\( = -\{15\log_{10} 2+6\log_{10} 3+3(1-\log_{10} 2)+2\log_{10} 7+\log_{10} 11+\log_{10} 13\} \)
\( = -(3+12\log_{10} 2+6\log_{10} 3+2\log_{10} 7+\log_{10} 11+\log_{10} 13) \)
\( = -(3+12×0.301+6×0.477+2×0.845+1.041+1.114) \)
\( \displaystyle \log_{10} \frac{1}{2^{15}・3^6・5^3・7^2・11・13} \)
\( = \log_{10} (2^{-15}・3^{-6}・5^{-3}・7^{-2}・11^{-1}・13^{-1}) \)
\( = \log_{10} 2^{-15}+\log_{10} 3^{-6}+\log_{10} 5^{-3}+\log_{10} 7^{-2} \\ ~~~~+\log_{10} 11^{-1}+\log_{10} 13^{-1} \)
\( = -(15\log_{10} 2+6\log_{10} 3+3\log_{10} 5+2\log_{10} 7 \\ ~~~~+\log_{10} 11+\log_{10} 13) \)
\( \displaystyle = -(15\log_{10} 2+6\log_{10} 3+3\log_{10} \frac{10}{2} \\ ~~~~+2\log_{10} 7+\log_{10} 11+\log_{10} 13) \)
\( = -\{15\log_{10} 2+6\log_{10} 3+3(\log_{10} 10-\log_{10} 2) \\ ~~~~+2\log_{10} 7+\log_{10} 11+\log_{10} 13\} \)
\( = -\{15\log_{10} 2+6\log_{10} 3+3(1-\log_{10} 2) \\ ~~~~+2\log_{10} 7+\log_{10} 11+\log_{10} 13\} \)
\( = -(3+12\log_{10} 2+6\log_{10} 3+2\log_{10} 7 \\ ~~~~+\log_{10} 11+\log_{10} 13) \)
\( = -(3+12×0.301+6×0.477+2×0.845 \\ ~~~~+1.041+1.114) \)
これを計算すると、-13.319と求まります。
② 1個のさいころにつき、1の目が出る確率は\( \displaystyle \frac{1}{6} \)なので、$n$個のさいころすべてで1の目が出る確率は\( \displaystyle \left(\frac{1}{6}\right)^n \)です。この「●乗」の部分になっている$n$の値について考えるわけなので、常用対数をとることとなります。さっきの問題で\( \log_{10} p \)を考えたのはこのためですね。
\begin{eqnarray} &&\log_{10} q\\ &&= \log_{10} \left(\frac{1}{6}\right)^n\\ &&= n\log_{10} \frac{1}{6}\\ &&= n(\log_{10} 1-\log_{10} 6)\\ &&= -n\log_{10} 6\\ &&= -n\log_{10} (2×3)\\ &&= -n(\log_{10} 2+\log_{10} 3)\\ &&= -n(0.301+0.477)\\ &&= -0.778n\\ \end{eqnarray}
\( q<p \)ならば\( \log_{10} q<\log_{10} p \)なので、
\( -0.778n<-13.319 \)
\( \displaystyle n>\frac{13.319}{0.778} \)
そもそも$n$はさいころの個数をあらわしていましたから自然数です。\( \displaystyle \frac{13.319}{0.778} \)は17.11…ですので、この不等式を満たす最小の自然数は18です。
(3)① 1年後に銀行に返済しないといけない金額は(300万×1.1)円です。複利で銀行から借り入れをしたんですから、2年後には(300万×1.1×1.1)円,3年後には(300万×1.1×1.1×1.1)円の金額を返済しないといけないこととなります。
なので、5年後に返済するべき総返済額は、\( 300万×1.1^5 \)、つまり(300万×1.61051)円です。これを計算すると4831530円です。
② アルバイト従業員の年間給与を考えると、
1年目:150万円
2年目:150×1.05万円
3年目:150×1.05×1.05万円 = \( 150×1.05^2 \)万円
4年目:\( 150×1.05^2×1.05 \)万円 = \( 150×1.05^3 \)万円
5年目:\( 150×1.05^3×1.05 \)万円 = \( 150×1.05^4 \)万円
となっていきます。
よって、$n$年目の給与は\( 150×1.05^{(n-1)} \)万円とおけます。削減できる人件費はこのアルバイト従業員への給与累計額であると問題文にありましたから、$f(n)$とは、
\( 150+150×1.05+…+150×1.05^{(n-1)} \)
ということになります。
これは、1.05が毎回かけられているのを全部合わせているという式ですから、初項が150,公比が1.05の等比数列の和ということになりますね?等比数列の和は\( \displaystyle \frac{a(r^n-1)}{r-1} \)という公式で求められるのですから、
\begin{eqnarray} &&f(n) = \frac{150(1.05^n-1)}{1.05-1}\\ &&= \frac{150}{0.05}(1.05^n-1)\\ &&= \frac{15000}{5}(1.05^n-1)\\ &&= 3000(1.05^n-1)\\ \end{eqnarray}
③ 銀行への総返済額は(3)①の問題で4831530円と求まりました。$X$万円とあるので、その表記にしたがうと$X = 483.153$です。
$f(n)>X$ならば、
\( 3000(1.05^n-1)>483.153 \)
\( \displaystyle 1.05^n-1>\frac{483.153}{3000} \)
\( \displaystyle 1.05^n-1>\frac{483153}{3000000} \)
\( \displaystyle 1.05^n>\frac{3483153}{3000000} \)
\( \displaystyle 1.05^n>\frac{1161051}{1000000} \)
\( \fbox{テ} \)は小数第3位を四捨五入し小数第2位まで求めればいいので、\( 1.05^n>1.16 \)となります。
「●乗」の部分になっている$n$の値について考えるわけなので、常用対数をとります。
\( \log_{10} 1.05^n>\log_{10} 1.16 \)
\( n\log_{10} 1.05>\log_{10} 1.16 \)
常用対数表より、\( 0.0212n>0.0645 \)
\( \displaystyle n>\frac{0.0645}{0.0212} \)
\( \displaystyle n>\frac{645}{212} \)
\( \fbox{ト} \)も小数第3位を四捨五入し小数第2位まで求めればいいので、\( n>3.04 \)
よって、この条件を満たす最小の整数は$n = 4$です。
答え.
(1)
104回
(2)
①
\( \log_{10} p \) = -13.319
②
$n$ = 18
(3)
①
ソ 4831530
②
タ 3000 チ 1.05 ツ $n$
③
テ 1.16 ト 3.04 ナ 4