この問題のポイント
(n+1)回目とn回目の関係をつかんで漸化式を作る!
Pn+1 = ●Pn+▲の形の漸化式は特性方程式を使って変形する!
(1)① 1日目にA定食が提供されることがわかっていますから、2日目にはA定食,B定食のどちらかが提供されるはずです。問題文より、2日目にA定食が提供される確率は\( \displaystyle \frac{1}{2} \),B定食が提供される確率も\( \displaystyle \frac{1}{2} \)です。
もし2日目にA定食が提供されれば、その次の営業日にA定食が提供される確率は\( \displaystyle \frac{1}{2} \)ですから、2日目にA定食が提供された場合、3日目にA定食が提供される確率は\( \displaystyle \frac{1}{2}×\frac{1}{2} \)ということになります。
一方、2日目にB定食が提供されれば、次の営業日は必ずA定食が提供されます。必ず起こることがらの確率は1でしたから、2日目にB定食が提供された場合、3日目にA定食が提供される確率は\( \displaystyle \frac{1}{2}×1 \)です。
よって、3日目にA定食が提供される確率は、
\( \displaystyle \frac{1}{2}×\frac{1}{2}+\frac{1}{2}×1 = \frac{1}{4}+\frac{1}{2} = \frac{3}{4} \)
② さっきの①のように、ある営業日についてA定食が提供されるかどうかというのは、前日にどの定食が提供されるかを考える必要があります。このようにして確率を考える問題では、漸化式を立てて考える方法があります。
その場合、ある回($n$回目)でどのようなことが起こり、それぞれについてどれぐらいの確率で次の回($(n+1)$回目)にて問題で指定されたことがらが起こるかを考える必要があります。
この問題でそれを考えましょう。起こることがらは、㋐A定食が提供される,㋑B定食が提供される,の2つです。そして、さっきの①で考えたとおり、㋐が起こったら、確率\( \displaystyle \frac{1}{2} \)で次の回ではA定食が提供されます。㋑が起こったら、必ず(=確率1)で次の回はA定食が提供されるんでしたね?
それをふまえて、$n$日目にA定食が提供される確率を$p_n$とおくと、$n$日目で起こるのは㋐か㋑だけなので、$n$日目にB定食が提供される確率は$1-p_n$とおけます。よって、$(n+1)$日目にA定食が提供される確率は
\( \displaystyle p_{n+1} = \frac{1}{2}p_n+1・(1-p_n) \)
\( \displaystyle p_{n+1} = \frac{1}{2}p_n+1-p_n \)
\( \displaystyle p_{n+1} = -\frac{1}{2}p_n+1 \) …[A]
このような漸化式ができました。ここから一般項を導くわけですが、\( p_{n+1} = ●p_n+▲ \)という形の漸化式は$p_{n+1}$や$p_n$を同じ文字にした方程式である特性方程式を解いて、その解を両辺からひく方法をとります。
この漸化式でも$p_{n+1}$や$p_n$を$α$として特性方程式をつくると、
\( \displaystyle α = -\frac{1}{2}α+1 \)
これを解くと\( \displaystyle α = \frac{2}{3} \)です。
(ちなみに、問題を解く過程を解答に記す場合、この特性方程式について書く必要はありません。)
[A]の両辺から\( \displaystyle \frac{2}{3} \)をひくと、
\( \displaystyle p_{n+1}-\frac{2}{3} = -\frac{1}{2}p_n+1-\frac{2}{3} \)
\( \displaystyle p_{n+1}-\frac{2}{3} = -\frac{1}{2}p_n+\frac{1}{3} \)
\( \displaystyle p_{n+1}-\frac{2}{3} = -\frac{1}{2}\left(p_n-\frac{2}{3}\right) \)
ここで、\( \displaystyle P_n = p_n-\frac{2}{3} \)とおくと、\( \displaystyle P_{n+1} = -\frac{1}{2}P_n \)となります。
これは、ある項($n$項目)に\( \displaystyle -\frac{1}{2} \)をかけると次の項($(n+1)$項目)になるということを示しているので、等比数列をあらわしていることになります。
よって、\( \displaystyle P_n = P_1・\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1} \)
\( \displaystyle P_1 = p_1-\frac{2}{3} \)ですが、$p_1$とは1日目にA定食が提供される確率であり、1日目にはA定食が提供されることがわかっていると問題文にありましたから、必ず1日目はA定食が提供されるので、
\( \displaystyle P_1 = 1-\frac{2}{3} = \frac{1}{3} \)
\( \displaystyle ∴P_n = \frac{1}{3}・\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1} \)
\( \displaystyle p_n-\frac{2}{3} = \frac{1}{3}・\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1} \)
\( \displaystyle p_n = \frac{1}{3}・\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}+\frac{2}{3} \)
\( \displaystyle p_n = \frac{1}{3}\left(\left(\frac{-1}{2}\right)^{n-1}+2\right) \)
〈参考〉
ある項と次の項、つまり$n$項目と$(n+1)$項目の関係を示した式が漸化式ですが、等差数列と等比数列の場合、漸化式は次の形であらわすことができます。
等差数列…\( a_{n+1} = a_n+d \)
(ある項に決まった数を足すと次の項になることをあらわしている)
等比数列…\( a_{n+1} = ra_n \)
(ある項に決まった数をかけると次の項になる)
漸化式を変形していくときは、この形をめざして変形していけば、$a_n$が漸化式でない形の場合にどんな式になるかを求める(つまり一般項を求める)ときにとてもラクになります。等差数列と等比数列の漸化式の形は覚えておくようにしましょう。
(2)まず$P_1(n)$、つまりXが頂点$A_1$に$n$秒後に存在する確率を考えます。Xは正四面体の各頂点をあちこちに動くので、「直前にこの点にいてこう動けばこの点に来ることができる」と考える必要があります。直前の動きとの関係を考えることとなるので、漸化式を立てていきましょう。
起こることがらとして考えられるのは、㋐Xが$A_1$に存在する,㋑Xが$A_2$に存在する,㋒Xが$A_3$に存在する,㋓Xが$A_4$に存在する,の4つです。ただし、今はXが頂点$A_1$に存在する確率を考えていて、Xは同じ頂点にとどまることはないので、㋑と㋒と㋓の3つだけとみなしていいでしょう。
そして、他の3つの頂点に同じ確率で移動するわけですから、$A_2$→$A_1$,$A_3$→$A_1$,$A_4$→$A_1$という移動はどれも\( \displaystyle \frac{1}{3} \)の確率で起こります。
ということは、Xが$n$秒後に$A_2$,$A_3$,$A_4$それぞれに存在する確率は$P_2(n)$,$P_3(n)$,$P_4(n)$とおけるので、$(n+1)$秒後にXが$A_1$に存在する確率は
\( \displaystyle P_1(n+1) = \frac{1}{3}P_2(n)+\frac{1}{3}P_3(n)+\frac{1}{3}P_4(n) \) …[B]
ところが、この式だと$P_1(n+1)$はありますが$P_1(n)$はないので、きちんとした漸化式になっていません。
ただ、Xはさっきの㋐~㋓の必ずどれかの状態になるわけなので、㋐~㋓が起こる確率をすべてたすと1になります。
つまり、\( P_1(n)+P_2(n)+P_3(n)+P_4(n) = 1 \)なので、\( P_2(n)+P_3(n)+P_4(n) = 1-P_1(n) \)です。
よって、[B]の式は
\( \displaystyle P_1(n+1) = \frac{1}{3}(P_2(n)+P_3(n)+P_4(n)) \)
\( \displaystyle P_1(n+1) = \frac{1}{3}(1-P_1(n)) \)
とできます。このように、確率をすべてたすと1ということを利用できます。
これで漸化式の形になったので、さっきの(1)②と同じように一般項を導きます。
\( \displaystyle P_1(n+1) = \frac{1}{3}-\frac{1}{3}P_1(n) \)となり、特性方程式を使って考えると(ちなみに、試験の解答を書くうえで特性方程式のことは一言もふれなくていい)、両辺から\( \displaystyle \frac{1}{4} \)をひいて、
\( \displaystyle P_1(n+1)-\frac{1}{4} = \frac{1}{3}-\frac{1}{3}P_1(n)-\frac{1}{4} \)
\( \displaystyle P_1(n+1)-\frac{1}{4} = -\frac{1}{3}P_1(n)+\frac{1}{12} \)
\( \displaystyle P_1(n+1)-\frac{1}{4} = -\frac{1}{3}\left(P_1(n)-\frac{1}{4}\right) \)
\( \displaystyle X_n = P_1(n)-\frac{1}{4} \)とおくと、\( \displaystyle X_{n+1} = -\frac{1}{3}X_n \)となり、$\{X_n\}$は等比数列だとわかります。
$n$は0以上の整数であり、問題文より\( \displaystyle P_1(0) = \frac{1}{4} \)なので、
\( \displaystyle X_0 = P_1(0)-\frac{1}{4} = \frac{1}{4}-\frac{1}{4} = 0 \)
\( \displaystyle ∴X(n) = 0・\left(-\frac{1}{3}\right)^n = 0 \)
\( \displaystyle P_1(n)-\frac{1}{4} = 0 \)より、\( \displaystyle P_1(n) = \frac{1}{4} \)
同様にして$P_2(n)$、つまりXが頂点$A_2$に$n$秒後に存在する確率を考えると、$A_1$→$A_2$,$A_3$→$A_2$,$A_4$→$A_2$という移動はどれも\( \displaystyle \frac{1}{3} \)の確率で起こるので、
\( \displaystyle P_2(n+1) = \frac{1}{3}P_1(n)+\frac{1}{3}P_3(n)+\frac{1}{3}P_4(n) \)
\( \displaystyle P_2(n+1) = \frac{1}{3}(P_1(n)+P_3(n)+P_4(n)) \)
\( P_1(n)+P_2(n)+P_3(n)+P_4(n) = 1 \)なので、\( P_1(n)+P_3(n)+P_4(n) = 1-P_2(n) \)より、
\( \displaystyle P_2(n+1) = \frac{1}{3}(1-P_2(n)) \)
$P_1(n)$のときと同様に計算すると\( \displaystyle P_2(n+1)-\frac{1}{4} = -\frac{1}{3}\left(P_2(n)-\frac{1}{4}\right) \)
\( \displaystyle Y_n = P_2(n)-\frac{1}{4} \)とおくと、問題文より\( \displaystyle P_2(0) = \frac{1}{2} \)なので、
\( \displaystyle Y_0 = P_2(0)-\frac{1}{4} = \frac{1}{2}-\frac{1}{4} = \frac{1}{4} \)より、
\( \displaystyle Y(n) = \frac{1}{4}・\left(-\frac{1}{3}\right)^n \)となるので、
\( \displaystyle P_2(n)-\frac{1}{4} = \frac{1}{4}・\left(-\frac{1}{3}\right)^n \)
\( \displaystyle P_2(n) = \frac{1}{4}・\left(-\frac{1}{3}\right)^n+\frac{1}{4} = \frac{1}{4}\left\{\left(-\frac{1}{3}\right)^n+1\right\} \)
答え.
(1)
①
セ 3 ソ 4
②
タ 1 チ 3
ツ -1 テ 2
ト 2
(2)
\( \displaystyle P_1(n) = \frac{1}{4} \),\( \displaystyle P_2(n) = \frac{1}{4}\left\{\left(-\frac{1}{3}\right)^n+1\right\} \)