この問題のポイント
aX+bの期待値はaE(x)+b、分散はa2V(X)で求まる!
同時確率分布、二項分布における期待値、分散の考え方もつかもう!
(1)試行の結果によってある値が得られるとして、同時にその値をとる確率も決まるという場合、その値のことを確率変数といいます。その確率変数$X$を使った式$aX+b$の期待値や分散を求めるという問題ですね?$aX+b$の期待値や分散は次の公式で求めることができます。
$aX+b$の期待値
\( E(aX+b) = aE(X)+b \)
$aX+b$の分散
\( V(aX+b) = a^2V(X) \)
この公式を利用して、求めなければならない\( E(2X+3) \)と\( V(2X+3) \)を考えましょう。\( E(2X+3) \)を求めるには$E(X)$を求める必要がありますから、それを求めます。期待値は確率とその確率のときにとる値をかけたものを全部足し合わせたものでした。
1,3,5,……,$2n-1$までの$n$個の値をすべて等しい確率でとるので、それぞれの値をとる確率は\( \displaystyle \frac{1}{n} \)です。よって、期待値は\( \displaystyle 1・\frac{1}{n} \),\( \displaystyle 3・\frac{1}{n} \),\( \displaystyle 5・\frac{1}{n} \),…,\( \displaystyle (2n-1)・\frac{1}{n} \)すべてを足したものということになります。
\begin{eqnarray} &&\small{∴E(X)}\\ &&\small{= \sum_{k=1}^n \left\{(2k-1)・\frac{1}{n}\right\}}\\ &&\small{= \frac{1}{n}\sum_{k=1}^n (2k-1)}\\ &&\small{= \frac{1}{n}\left(2\sum_{k=1}^n k-\sum_{k=1}^n 1\right)}\\ &&\small{= \frac{1}{n}\left\{2・\frac{1}{2}n(n+1)-n\right\}}\\ &&\small{= \frac{1}{n}・n^2}\\ &&\small{= n} \end{eqnarray}
よって、
\( E(2X+3) = 2E(X)+3 = 2n+3 \)
次に、\( V(2X+3) \)を求めるために、$V(X)$を求めます。$V(X)$は\( E(X^2)-\{E(X)\}^2 \)で求めることができます。\( E(X^2) \)を求めると、
\begin{eqnarray} &&\small{E(X^2)}\\ &&\small{= \sum_{k=1}^n \left\{(2k-1)^2・\frac{1}{n}\right\}}\\ &&\small{= \frac{1}{n}\sum_{k=1}^n (4k^2-4k+1)}\\ &&\small{= \frac{1}{n}\left(4\sum_{k=1}^n k^2-4\sum_{k=1}^n k+\sum_{k=1}^n 1\right)}\\ &&\small{= \frac{1}{n}\left\{4・\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)-4・\frac{1}{2}n(n+1)+n\right\}}\\ &&\small{= \frac{2}{3}(n+1)(2n+1)-2(n+1)+1}\\ &&\small{= \frac{4}{3}n^2+2n+\frac{2}{3}-2n-2+1}\\ &&\small{= \frac{4}{3}n^2-\frac{1}{3}} \end{eqnarray}
\begin{eqnarray} &&\small{∴V(X)}\\ &&\small{= E(X^2)-\{E(X)\}^2}\\ &&\small{= \frac{4}{3}n^2-\frac{1}{3}-n^2}\\ &&\small{= \frac{1}{3}n^2-\frac{1}{3}} \end{eqnarray}
なので、$V(2X+3)$は、
\( \displaystyle 2^2・V(X) \)
\( \displaystyle = 4\left(\frac{1}{3}n^2-\frac{1}{3}\right) \)
\( \displaystyle = 4・\frac{n^2-1}{3} = \frac{4(n^2-1)}{3} \)
(2)① 確率変数$X$が$r$という値をとる確率は\( P(X=r) \)と書きます。よって、\( P(X=-1) \)とは、$X$が-1をとる確率のことです。
$X$も$Y$も値は-1か1のどちらかしかとりません。よって、$X$が-1をとる場合とは、「$X$も$Y$もどちらも-1をとる場合」と、「$X$は-1をとるけれども$Y$は1をとる場合」の2つが考えられます。よって、\( P(X=-1) \)は、\( P(X=-1,Y=-1) \)と\( P(X=-1,Y=1) \)を足した値ということになります。
ちなみに、この問題のように、ある試行によって2つ以上の値が同時に決まるとき、それらの値と確率の対応を同時確率分布(同時分布)といい、$X = a$かつ$Y = b$となる確率は$P(X=a,Y=b)$と書きます。
\( ∴P(X=-1) \)
\( = P(X=-1,Y=-1)+P(X=-1,Y=1) \)
\( \displaystyle = a+\frac{1}{2}-a \)
\( \displaystyle = \frac{1}{2} \)
そして、$X$は-1か1のどちらかの値しかとりませんから、
\( P(X=1) \)
\( = 1-P(X=-1) \)
\( \displaystyle = 1-\frac{1}{2} \)
\( \displaystyle = \frac{1}{2} \)
② $X$も$Y$も値は-1か1のどちらかしかとらないのですから、$X+Y$でとりうる値は-2か0か2です。
- $X+Y = -2$となる確率は
\( P(X=-1,Y=-1) = a \) - $X+Y = 2$となる確率は
\( P(X=1,Y=1) = a \) - $X+Y = 0$となる確率はそれら以外の場合なので、その確率は$1-2a$
このようにすべての場合の確率を求めれば、あとはさっきの(1)と同じように考えればよいでしょう。\( E(X+Y) \)は
\( -2・a+0・(1-2a)+2・a = 0 \)
ちなみに、\( E\{(X+Y)^2\} \)は
\( (-2)^2・a+0^2・(1-2a)+2^2・a = 8a \)
\( ∴V(X+Y) = E\{(X+Y)^2\}-\{E(X+Y)\}^2 \)
\( = 8a-0^2 = 8a \)
(別解)
同時確率分布の期待値について、次のような性質があります。
\( E(X+Y) = E(X)+E(Y) \)
\( E(aX+bY) = aE(X)+bE(Y) \)
\( E(X+Y) \)については、これを利用して考えてもよいでしょう。\( P(X=-1) \)も\( P(X=1) \)もどちらも\( \displaystyle \frac{1}{2} \)ですから、
\( \displaystyle E(X) = -1・\frac{1}{2}+1・\frac{1}{2} = 0 \)
\( P(Y=-1) \)も\( P(Y=1) \)も(1)と同じように考えれば両方とも\( \displaystyle \frac{1}{2} \)と求まるので、\( E(Y) = 0 \)
よって、\( E(X+Y) = E(X)+E(Y) = 0 \)
ちなみに、分散については、確率変数$X$と$Y$が互いに独立という条件下であれば次のような性質があります。
\( V(X+Y) = V(X)+V(Y) \)
\( V(aX+bY) = a^2V(X)+b^2V(Y) \)
ただし、この問題の場合では、$X$と$Y$が互いに独立であるかは確かではないため、使うことはできません。
③ $X$と$Y$が互いに独立であるとき、$P(X=a,Y=b)$と$P(X=a)・P(Y=b)$は等しいという関係が成り立ちます。この問題においても、$X$と$Y$のすべての組み合わせにおいて、この関係が成り立てばよいということになります。
さっきの(別解)にも示したとおり、\( P(Y=-1) \)も\( P(Y=1) \)も\( \displaystyle \frac{1}{2} \)でした。そして①より、\( P(X=-1) \)も\( P(X=1) \)も\( \displaystyle \frac{1}{2} \)でした。これも利用して考えると、
- $X = -1$,$Y = -1$となる確率について、
\( \displaystyle a = \frac{1}{2}・\frac{1}{2} \) - $X = -1$,$Y = 1$となる確率について、
\( \displaystyle \frac{1}{2}-a = \frac{1}{2}・\frac{1}{2} \) - $X = 1$,$Y = -1$となる確率について、
\( \displaystyle \frac{1}{2}-a = \frac{1}{2}・\frac{1}{2} \) - $X = 1$,$Y = 1$となる確率について、
\( \displaystyle a = \frac{1}{2}・\frac{1}{2} \)
この4つの場合すべてにおいて、\( \displaystyle a = \frac{1}{4} \)となれば等式が成り立つので、$X$と$Y$が互いに独立となりますね。
(3)1回の試行で袋から赤球を取り出す確率は\( \displaystyle \frac{a}{100} \),赤球を取り出さない確率は\( \displaystyle 1-\frac{a}{100} \)です。
そして、この試行を$n$回やったとして、$n$回中$r$回赤球を取り出す確率は、\( \displaystyle \frac{a}{100} \)となる確率が$r$回,\( \displaystyle 1-\frac{a}{100} \)となる確率が残りの回、つまり$(n-r)$回あることになるので、
\( \displaystyle {}_n \mathrm{C}_r\left(\frac{a}{100}\right)^r\left(1-\frac{a}{100}\right)^{n-r} \)とあらわせます。
このように、ある事象$A$が起こる確率を$p$として、$n$回繰り返されるうち$A$が$X$回起こるとした場合、その$X$の確率分布を\( \displaystyle {}_n \mathrm{C}_Xp^X(1-p)^{n-X} \)であらわすことができ、この確率分布を二項分布といい、$B(n,p)$であらわします。
ちなみに、確率変数$X$の確率分布が二項分布になることを「確率変数$X$は二項分布$B(n,p)$に従う」という言いかたをしますが、二項分布に従っているとき、平均(期待値)や分散については、このような公式が成り立ちます。
確率変数$X$が二項分布$B(n,p)$に従うとき、
平均(期待値)は\( E(X) = np \)
分散は\( V(X) = np(1-p) \)
この問題では、$X$は二項分布\( \displaystyle B\left(n,\frac{a}{100}\right) \)に従います。よって、次の2つの式が成り立ちますね?
\( \displaystyle n・\frac{a}{100} = \frac{16}{5} \)…A
\( \displaystyle n・\frac{a}{100}・\left(1-\frac{a}{100}\right) = \frac{64}{25} \)…B
Aより、\( na = 320 \)…C
Bを変形すると、\( \displaystyle na・\left(1-\frac{a}{100}\right) = 256 \)
これにCを代入すると、\( \displaystyle 320\left(1-\frac{a}{100}\right) = 256 \)
\( \displaystyle 1-\frac{a}{100} = \frac{4}{5} \)
\( \displaystyle \frac{a}{100} = \frac{1}{5} \)
\( a = 20 \)
ここで、もともと赤球を取り出す確率として\( \displaystyle \frac{a}{100} \)とおいていましたので、\( \displaystyle 0≦\frac{a}{100}≦1 \)という条件がありましたから、$a$は\( 0≦a≦100 \)の範囲になければなりませんが、\( a = 20 \)はこの範囲を満たしていますので、題意を満たします。
\( a = 20 \)をCに代入して計算すると\( n = 16 \)です。
答え.
(1)
平均…\( 2n+3 \),分散…\( \displaystyle \frac{4(n^2-1)}{3} \)
(2)
① \( \displaystyle P(X=-1) = \frac{1}{2} \),\( \displaystyle P(X=1) = \frac{1}{2} \)
② \( E(X+Y) = 0 \),\( V(X+Y) = 8a \)
③ \( \displaystyle a = \frac{1}{4} \)
(3)
\( a = 20 \),\( n = 16 \)