この問題のポイント
高次方程式は因数定理を使って解くことを考える!
高次方程式の解に虚数解があったら、それと共役な複素数も方程式の解になる!
(1)3次以上の方程式を解くときに、最も使えそうな定理は因数定理でしょう。因数定理とは、整式$f(x)$が$x-p$で割り切れる条件(因数分解できる条件)は\( f(p) = 0 \)となることだというものです。
これだけの説明だとピンとこないと思いますから、今回の問題で実際に応用してみましょう。$f(x)$の式である\( 2x^3-3(1+a)x^2+6ax \)について、この式に\( x = 0 \)を代入すると、\( f(x) = 0 \)となります。ということは、$f(x)$は、$x-0$つまり$x$で因数分解できることになります。
なので、$f(x)$は、
\( f(x) = x\{2x^2-3(1+a)x+6a\} \)
と因数分解できます。(ただ、$f(x)$のすべての項に$x$があるのですぐにわかったかもしれませんが)
さて、\( f(x) = 0 \)が異なる3つの実数解をもつことについて、因数定理による因数分解で、そのうち1つの解が\( x = 0 \)とわかりました。ということは、\( 2x^2-3(1+a)x+6a \)について、\( 2x^2-3(1+a)x+6a = 0 \)…①の2次方程式が0以外の異なる2つの実数解をもてばいいことになります。
ただ、方程式①は\( x = 0 \)を解にもつことはありえません。方程式①の左辺に\( x = 0 \)を代入すると$6a$となり、もともと問題文で\( 0<a<1 \)という条件がありましたから、これは右辺の0と等しくなりません。よって、二次方程式が異なる2つの実数解をもつ条件、判別式\( D>0 \)が成立するだけでいいということになります。
\begin{eqnarray} &&D = \{-3(1+a)\}^2-4・2・6a\\ &&= 9(1+a)^2-48a\\ &&= 9(1+2a+a^2)-48a\\ &&= 9+18a+9a^2-48a\\ &&= 9a^2-30a+9 \end{eqnarray}
よって、\( 9a^2-30a+9>0 \)が成立すればいいので、両辺を3で割って、
\( 3a^2-10a+3>0 \)
\( (a-3)(3a-1)>0 \)
\( \displaystyle ∴a<\frac{1}{3},3<a \)
\( 0<a<1 \)という条件と重なる範囲を考えると、求める$a$の範囲は\( \displaystyle 0<a<\frac{1}{3} \)です。
(2)因数定理を使って\( f(x) = x\{2x^2-3(1+a)x+6a\} \)と因数分解したので、(1)でもふれましたが、1つの実数解とは\( x = 0 \)のことです。ということは、(1)の方程式①が異なる2つの虚数解をもてばいいことになりますね。
ちなみに、方程式において$a+bi$が解ならば、それと共役な複素数$a-bi$も解となります。問題文で、「2つの虚数解」を$p±qi$としていたのは、これが理由です。
二次方程式①について、解が$p±qi$と与えられています。解が与えられているときは代入して計算すると問題を解く手がかりが得られやすいですが、この問題ではその計算がとても大変になりそうです。そのようなときは解と係数の関係を利用することを考えてみましょう。
\( \displaystyle (p+qi)+(p-qi) = -\frac{-3(1+a)}{2} \)
\( \displaystyle 2p = \frac{3(1+a)}{2} \)
\( \displaystyle p = \frac{3(1+a)}{4} \)…②
\( \displaystyle (p+qi)(p-qi) = \frac{6a}{2} \)
\( p^2-(-q)^2 = 3a \)
\( p^2+q^2 = 3a \)…③
よって、③より\( q^2 = 3a-p^2 \)なので、
\( S = 3p^2-5q^2 \)
\( = 3p^2-5(3a-p^2) \)
\( = 3p^2-15a+5p^2 \)
\( = 8p^2-15a \)
②より、\( \displaystyle 8・\left\{\frac{3(1+a)}{4}\right\}^2-15a \)
\( \displaystyle = 8・\frac{9(1+a)^2}{16}-15a \)
\( \displaystyle = \frac{9(1+2a+a^2)}{2}-15a \)
\( \displaystyle = \frac{9+18a+9a^2}{2}-\frac{30a}{2} \)
\( \displaystyle = \frac{9a^2-12a+9}{2} \)
\( \displaystyle = \frac{9}{2}a^2-6a+\frac{9}{2} \)
これが$S$を$a$の式で表したものです。
さて、方程式①が虚数解をもつということは、判別式\( D<0 \)となるわけですから、\( \{-3(1+a)\}^2-4・2・6a<0 \)
(1)での計算を使って\( 9a^2-30a+9<0 \)となるので、\( \displaystyle \frac{1}{3}<a<3 \)
問題文で\( 0<a<1 \)とありましたから、\( \displaystyle \frac{1}{3}<a<1 \)
$a$がこの範囲のときの$S$の最小値を考えましょう。
\( \displaystyle S = \frac{9}{2}a^2-6a+\frac{9}{2} \)
\( \displaystyle = \frac{9}{2}\left(a^2-\frac{4}{3}a\right)+\frac{9}{2} \)
\( \displaystyle = \frac{9}{2}\left(a^2-\frac{4}{3}a+\frac{4}{9}-\frac{4}{9}\right)+\frac{9}{2} \)
\( \displaystyle = \frac{9}{2}\left(a^2-\frac{4}{3}a+\frac{4}{9}\right)-2+\frac{9}{2} \)
\( \displaystyle = \frac{9}{2}\left(a-\frac{2}{3}\right)^2+\frac{5}{2} \)
これより、\( \displaystyle \frac{1}{3}<a<1 \)の範囲では、\( \displaystyle a = \frac{2}{3} \)のときに最小値をとるとわかり、その値は\( \displaystyle \frac{5}{2} \)とわかりますね?
答え.
(1)
\( \displaystyle 0<a<\frac{1}{3} \)
(2)
\( \displaystyle S = \frac{9}{2}a^2-6a+\frac{9}{2} \)
\( \displaystyle a = \frac{2}{3} \)のとき$S$は最小値\( \displaystyle \frac{5}{2} \)をとる