この問題のポイント
A≧0、B≧0のとき、A>Bを証明したかったら
- A-B>0
- A2>B2が成り立つことになるからA2-B2>0
のどれかを証明するとうまくいくことが多い
\( |x|≦1 \)、\( |y|≦1 \)ならば、\( x^2≦1 \)、\( y^2≦1 \)
つまり、\( 1≧x^2 \)、\( 1≧y^2 \)ですから、\( 1-x^2≧0 \)、\( 1-y^2≧0 \)
これより、\( \sqrt{1-x^2} \)も\( \sqrt{1-y^2} \)もどちらも実数といえます。
さて、この問題では、
\( 0≦x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2} \)
…A
\( x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}≦1 \)
…B
の2つの不等式が組み合わさっている形になっています。
よって、AとBの2つを証明しないといけません。まずはAの不等式が成り立つことを証明しましょう。これはすなわち
\( x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}≧0 \)ですね。
√が使われていますから、2乗して証明したくなりますが、\( x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2} \)のような長い式を2乗すると、とても計算がしにくいです。ですから、ここでは2乗をせずに考えてみましょう。√の中の\( 1-x^2 \)、\( 1-y^2 \)がキーになりそうですから、それを意識して式を変形すると、
\begin{eqnarray} &&\small{x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}}\\ &&\small{= x^2-x^2y^2+y^2-x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}}\\ &&\small{= x^2(1-y^2)+y^2(1-x^2)+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}}\\ &&\small{= x^2(1-y^2)+2・x\sqrt{1-y^2}・y\sqrt{1-x^2}}\\ &&\small{~~~~+y^2(1-x^2)}\\ &&\small{= (x\sqrt{1-y^2}+y\sqrt{1-x^2})^2}\\ \end{eqnarray}
2乗の数は当然0以上ですから
\( (x\sqrt{1-y^2}+y\sqrt{1-x^2})^2≧0 \)
これで
\( x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}≧0 \)
が示されたわけですから、Aの不等式が証明されました。
次に、Bの不等式を証明します。これはつまり、
\( 1≧x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2} \)
です。これも両辺を2乗するとややこしそうですから、ふつうに(左辺)-(右辺)が0以上だということを証明しましょう。さっきのように、\( 1-x^2 \)、\( 1-y^2 \)を意識して式を変形すると、
\begin{eqnarray} &&\small{1-(x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2})}\\ &&\small{= 1-x^2-y^2+2x^2y^2-2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}}\\ &&\small{= 1-x^2-y^2+x^2y^2+x^2y^2-2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}}\\ &&\small{= (1-x^2)(1-y^2)+x^2y^2-2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}}\\ &&\small{= (1-x^2)(1-y^2)-2・xy・\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}}\\ &&\small{~~~~+x^2y^2}\\ &&\small{= (\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}-xy)^2}\\ \end{eqnarray}
2乗の数は当然0以上ですから、
\( (\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}-xy)^2≧0 \)です。
よって、\( \small{1-(x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2})≧0} \)
これで、Bの不等式も証明されました。
AとB両方の不等式が証明されたので、
\( \small{0≦x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}≦1} \)
が成り立ちます。
(別解)
上のような式変形が自分には難しいという場合は、三角関数の知識を使うことで解くこともできます。\( 0≦α≦π \)、\( 0≦β≦π \)として、
\( x = \cosα \)、\( y = \cosβ \)
とおきます。
すると、\( \sin^2A+\cos^2A = 1 \)より、
\( \sqrt{1-x^2} = \sinα \)
\( \sqrt{1-y^2} = \sinβ \)
とおけます。
これを、
\( x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2} \)
に代入すると、
\begin{eqnarray} &&\small{x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}}\\ &&\small{= \cos^2α+\cos^2β-2\cos^2α\cos^2β}\\ &&\small{~~~~+2\cosα\cosβ・\sinα\sinβ}\\ &&\small{= \cos^2α+\cos^2β-\cos^2α\cos^2β-\cos^2α\cos^2β}\\ &&\small{~~~~+2\cosα\cosβ・\sinα\sinβ}\\ &&\small{= \cos^2α-\cos^2α\cos^2β+\cos^2β-\cos^2α\cos^2β}\\ &&\small{~~~~+2\cosα\cosβ・\sinα\sinβ}\\ &&\small{= \cos^2α(1-\cos^2β)+\cos^2β(1-\cos^2α)}\\ &&\small{~~~~+2\cosα\cosβ・\sinα\sinβ}\\ &&\small{= \cos^2α・\sin^2β+\cos^2β・\sin^2α}\\ &&\small{~~~~+2\cosα\cosβ・\sinα\sinβ}\\ &&\small{= \cos^2α・\sin^2β+2\cosα\cosβ・\sinα\sinβ}\\ &&\small{~~~~+\cos^2β・\sin^2α}\\ &&\small{= (\cosα\sinβ+\cosβ\sinα)^2}\\ \end{eqnarray}
これを加法定理を使って変形すると
\( \sin^2(α+β) \)とできます。
\( 0≦α≦π \)、\( 0≦β≦π \)ですから、\( 0≦α+β≦2π \)となりますから、
\( -1≦\sin(α+β)≦1 \)
よって、\( 0≦\sin^2(α+β)≦1 \)
これより、
\( \small{0≦x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}≦1} \)
が成り立つといえます。
解答のチェックポイント
- \( x^2+y^2-2x^2y^2+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2} \)をなんらかの式の2乗の形に変形しているか
- 三角関数を利用していない証明をした場合は、2つの不等式に分けて証明をしているか