この問題のポイント
文字式が使われていても分数式の足し算や引き算は分母の通分から始める!
できるだけ簡単に分母をそろえる方法を考えよう!
(1)分数の足し算は小学校では、まず分母をそろえる通分をやって、それから分子どうしを足して、ということをやりました。このやり方は文字式が入っても同じです。ただし、文字式ですから、あまりにもいろんな式どうしのかけ算をして、ということになると計算ミスなどをしてしまいがちです。できるだけ簡単に通分をしようと考えることも大切です。
たとえば、この問題では、一見すると分母の式はバラバラです。でも、\( (a-c) \)と\( (c-a) \)とか、\( (a-b) \)と\( (b-a) \)のように、( )の中で位置が反対になっているものが多いです。そこで、それぞれの分数をこのように変えてみましょう。
\( \displaystyle \frac{1}{(a-b)(a-c)} = \frac{1}{-(c-a)(a-b)} = \frac{-1}{(c-a)(a-b)} \)
\( \displaystyle \small{\frac{1}{(a-b)(a-c)} = \frac{1}{-(c-a)(a-b)} = \frac{-1}{(c-a)(a-b)}} \)
\( \displaystyle \frac{1}{(b-a)(b-c)} = \frac{1}{-(a-b)(b-c)} = \frac{-1}{(a-b)(b-c)} \)
\( \displaystyle \small{\frac{1}{(b-a)(b-c)} = \frac{1}{-(a-b)(b-c)} = \frac{-1}{(a-b)(b-c)}} \)
\( \displaystyle \frac{1}{(c-a)(c-b)} = \frac{1}{-(b-c)(c-a)} = \frac{-1}{(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle \small{\frac{1}{(c-a)(c-b)} = \frac{1}{-(b-c)(c-a)} = \frac{-1}{(b-c)(c-a)}} \)
こうすると、\( (a-b) \)、\( (b-c) \)、\( (c-a) \)が2個ずつ出てくる形になりますね。このように同じ文字式が出てくるように変形するのです。このようにすると、分母は\( (a-b)(b-c)(c-a) \)で通分するといいということになります。それで通分して、上の3つの分数を足すと、
\( \displaystyle \frac{-1}{(c-a)(a-b)}+\frac{-1}{(a-b)(b-c)}+\frac{-1}{(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{-(b-c)-(c-a)-(a-b)}{(a-b)(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{-b+c-c+a-a+b}{(a-b)(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{0}{(a-b)(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle \small{\frac{-1}{(c-a)(a-b)}+\frac{-1}{(a-b)(b-c)}+\frac{-1}{(b-c)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{-(b-c)-(c-a)-(a-b)}{(a-b)(b-c)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{-b+c-c+a-a+b}{(a-b)(b-c)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{0}{(a-b)(b-c)(c-a)}} \)
つまり、答えは0となります。
(2)分母の形が(1)と同じなので、(1)と同じように通分していきましょう。まず、それぞれの分数は
\( \displaystyle \frac{a^3}{(a-b)(a-c)} = \frac{a^3}{-(c-a)(a-b)} = \frac{-a^3}{(c-a)(a-b)} \)
\( \displaystyle \small{\frac{a^3}{(a-b)(a-c)} = \frac{a^3}{-(c-a)(a-b)} = \frac{-a^3}{(c-a)(a-b)}} \)
\( \displaystyle \frac{b^3}{(b-a)(b-c)} = \frac{b^3}{-(a-b)(b-c)} = \frac{-b^3}{(a-b)(b-c)} \)
\( \displaystyle \small{\frac{b^3}{(b-a)(b-c)} = \frac{b^3}{-(a-b)(b-c)} = \frac{-b^3}{(a-b)(b-c)}} \)
\( \displaystyle \frac{c^3}{(c-a)(c-b)} = \frac{c^3}{-(b-c)(c-a)} = \frac{-c^3}{(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle \small{\frac{c^3}{(c-a)(c-b)} = \frac{c^3}{-(b-c)(c-a)} = \frac{-c^3}{(b-c)(c-a)}} \)
とできます。これらを使って通分すると、
\( \displaystyle \frac{-a^3}{(c-a)(a-b)}+\frac{-b^3}{(a-b)(b-c)}+\frac{-c^3}{(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{-a^3(b-c)-b^3(c-a)-c^3(a-b)}{(a-b)(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle \small{\frac{-a^3}{(c-a)(a-b)}+\frac{-b^3}{(a-b)(b-c)}+\frac{-c^3}{(b-c)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{-a^3(b-c)-b^3(c-a)-c^3(a-b)}{(a-b)(b-c)(c-a)}} \)
あとは、分子を展開して計算するという流れが(1)でしたが、ここで分子を展開するとどうなるでしょう?かなりややこしい数式ができあがるだけになりそうですね。
これは分数です。しかも、分母は( )でくくられた式がかけ算の形になっています。
\( \displaystyle \frac{6}{3×5} = \frac{2}{5} \)
のように、約分できるものは約分してしまわないといけません。これは文字式でも同じです。
さっきの分数も、約分できるものがあるかもしれませんから、分子を因数分解していきましょう。aの文字に着目して整理していくと、
\( \displaystyle \frac{-a^3(b-c)+a(b^3-c^3)-b^3c+bc^3}{(a-b)(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{-a^3(b-c)+a(b-c)(b^2+bc+c^2)-bc(b^2-c^2)}{(a-b)(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{-a^3(b-c)+a(b-c)(b^2+bc+c^2)-bc(b+c)(b-c)}{(a-b)(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{(b-c)\{-a^3+a(b^2+bc+c^2)-bc(b+c)\}}{(a-b)(b-c)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{-a^3+a(b^2+bc+c^2)-bc(b+c)}{(a-b)(c-a)} \)
\( \displaystyle \small{\frac{-a^3(b-c)+a(b^3-c^3)-b^3c+bc^3}{(a-b)(b-c)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{-a^3(b-c)+a(b-c)(b^2+bc+c^2)-bc(b^2-c^2)}{(a-b)(b-c)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{-a^3(b-c)+a(b-c)(b^2+bc+c^2)-bc(b+c)(b-c)}{(a-b)(b-c)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{(b-c)\{-a^3+a(b^2+bc+c^2)-bc(b+c)\}}{(a-b)(b-c)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{-a^3+a(b^2+bc+c^2)-bc(b+c)}{(a-b)(c-a)}} \)
今、次数についてみると、aについては-a3が残っているから3次ですが、bやcについては2次ですね。因数分解は、次数の低い文字について整理していくとやりやすいので、今度はbの文字について整理していきます。まず、分子の式について( )をはずします。
\( \displaystyle \frac{-a^3+ab^2+abc+ac^2-b^2c-bc^2}{(a-b)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{b^2(a-c)+b(ac-c^2)-a^3+ac^2}{(a-b)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{b^2(a-c)+bc(a-c)-a(a^2-c^2)}{(a-b)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{b^2(a-c)+bc(a-c)-a(a+c)(a-c)}{(a-b)(c-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{(a-c)\{b^2+bc-a(a+c)\}}{-(a-b)(a-c)} \)
\( \displaystyle = \frac{b^2+bc-a(a+c)}{(b-a)} \)
\( \displaystyle \small{\frac{-a^3+ab^2+abc+ac^2-b^2c-bc^2}{(a-b)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{b^2(a-c)+b(ac-c^2)-a^3+ac^2}{(a-b)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{b^2(a-c)+bc(a-c)-a(a^2-c^2)}{(a-b)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{b^2(a-c)+bc(a-c)-a(a+c)(a-c)}{(a-b)(c-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{(a-c)\{b^2+bc-a(a+c)\}}{-(a-b)(a-c)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{b^2+bc-a(a+c)}{(b-a)}} \)
今度は、cについて1次となりましたので、分子の( )をはずしてcについて整理していくと、
\( \displaystyle \frac{b^2+bc-a^2-ac}{(b-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{c(b-a)+b^2-a^2}{(b-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{c(b-a)+(b+a)(b-a)}{(b-a)} \)
\( \displaystyle = \frac{(b-a)(c+b+a)}{(b-a)} \)
\( = c+b+a \)
\( \displaystyle \small{\frac{b^2+bc-a^2-ac}{(b-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{c(b-a)+b^2-a^2}{(b-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{c(b-a)+(b+a)(b-a)}{(b-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= \frac{(b-a)(c+b+a)}{(b-a)}} \)
\( \displaystyle \small{= c+b+a} \)
アルファベット順に並べると、\( a+b+c \)となります(実際の試験などでは、\( c+b+a \)と答えても正解となります)。
答え. (1)0 (2)\( a+b+c \)