この問題のポイント
ベクトルの問題で直線の方程式を使って考える必要があるときは、媒介変数を利用して考えよう!
問題にもあるとおり、距離の最小値を考えるには、点の座標を考える必要があります。その座標を考えるには、直線の方程式がどんなのかがわかっていないと考えるのは難しいです。
よって、まず直線$l$,$m$の方程式を考えることから始めましょう。
ただし、座標を見ると数字が3つ並んでいますね。ということは、これは空間での点となるわけなので、いつもどおりの「$y$ = …」と表すことができません。
しかも、直線$m$については方向ベクトルが書いてあるだけです。
よって、今回は、いつもどおりの「$y$ = …」と表さず、方向ベクトルと媒介変数を使って表す方法で考えましょう。
ある点$A$(\( \vec{a} \))を通り、方向ベクトル\( \vec{d} \)と平行な直線があれば、その直線上にある点$P$(\( \vec{p} \))は、
\( \vec{p} = \vec{a}+t・\vec{d} \)
と表され、$t$は任意の数でこの部分を媒介変数といいます。この媒介変数は、別に$t$でなくても何の文字でもかまいません。
上の公式を使えば、直線$l$は、点\( A(1,3,0) \)から考えれば、点\( B(0,4,-1) \)に移動するにはx座標は-1,y座標は1,z座標は-1移動しないといけませんから、方向ベクトルは\( (-1,1,-1) \)となります。よって、直線の方程式は、
\( (1,3,0)+s(-1,1,-1) \)
となります。
つまり、点$P$の座標は、x座標、y座標、z座標でそれぞれ計算すると
\( P(1-s,3+s,-s) \)…①
となります。
直線$m$については、すでに方向ベクトルが与えられていますから、それを利用すると
\( (-1,3,2)+t(-1,2,0) \)
となります。
同じように点$Q$の座標も考えれば、
\( Q(-1-t,3+2t,2) \)…②
ですね。
これで$P$、$Q$の座標がわかりましたので、距離を考えることができますね。距離は公式を使って普通に求めると、根号になってややこしいので、距離は2乗の形で考えたほうがやりやすいです。よって、
\begin{eqnarray} &&PQ^2\\ &&= (1-s+1+t)^2+(3+s-3-2t)^2\\ &&~~~~+(-s-2)^2\\ &&= (2-s+t)^2+(s-2t)^2+(-s-2)^2\\ &&= 4+s^2+t^2-4s-2st+4t\\ &&~~~~+s^2-4st+4t^2+s^2+4s+4\\ &&= 3s^2-6st+5t^2+4t+8\\ &&= 3(s^2-2st+t^2)-3t^2+5t^2+4t+8\\ &&= 3(s-t)^2+2t^2+4t+8\\ &&= 3(s-t)^2+2(t^2+2t+1)-2+8\\ &&= 3(s-t)^2+2(t+1)^2+6 \end{eqnarray}
このようにどちらか一方の文字の二次式とみなせば、最小を求める問題なのですから平方完成をしていくというパターンに持ち込むことができます。
この平方完成をしてみれば、$PQ^2$は、\( s-t = 0 \)かつ\( t+1 = 0 \)、すなわち\( s = t= -1 \)のときに最小になることになります。
よって、①、②に代入して、$P$と$Q$の座標は
\( P(2,2,1) \)、\( Q(0,1,2) \)
となります。
そして、$PQ$の値ですが、さっきの平方完成した式より、$PQ^2$の最小値は、\( s-t = 0 \)かつ\( t+1 = 0 \)のとき、6とわかります。
$PQ$はもちろん正の数ですから、$PQ$ = \(\sqrt{6}\)となりますね。
答え. \( P(2,2,1) \)、\( Q(0,1,2) \)のとき最小値\(\sqrt{6}\)