この問題のポイント
求めるものをxとし問題文の条件を文字式に置き換える!
「~より大きい」か「~以上」かで不等号の種類が違うこと、負の数を両辺にかけるときは不等号の向きが変わることに注意!
(1)問題文で$a$,$b$,$c$という文字が与えられているんで、これを使って問題文に書かれている日本語を方程式や不等式になおしていきましょう。
1人60円ずつグループの全員からお金を集めたとき、グループの人数は$b$人なんですから、集まるお金の金額は$60b$円です。これが目標額(=$a$円)を超える予定とありました。「~を超える」ということは、「~以上」という表現とちがって、「~」の部分にある値は含まないので、
\( 60b>a \)…[1]とおけます。
でも、実際は、グループの2割の人がお金を出さなかったので、お金を出した人は\( \displaystyle \frac{8}{10}b = \frac{4}{5}b \)人ということになりますから、実際に集まったお金の金額は\( \displaystyle 60×\frac{4}{5}b = 48b \)円です。
この金額が目標額には980円だけ不足しているので、\( 48b = a-980 \)…[2]
その不足分を補うために再度お金を集めましたが、最初にお金を出した\( \displaystyle \frac{4}{5}b \)人のうち3人がお金を出さなかったので、次にお金を出した人の人数は\( \displaystyle \left(\frac{4}{5}b-3\right) \)人です。その人たちが15円ずつ出したので、そのとき集まったお金の金額は\( \displaystyle 15\left(\frac{4}{5}b-3\right) \)円です。
この金額でもまだ目標額には届かず、その届かなかった金額は書店がサービスで負担してくれた$c$円です。逆にいえば、最初に発生した不足分980円のうち$c$円を除いた分については、この\( \displaystyle 15\left(\frac{4}{5}b-3\right) \)円でまかなうことができたことになるので、\( \displaystyle 15\left(\frac{4}{5}b-3\right) = 980-c \)…[3]とおけます。
問題文にある条件はこれで式にできましたので、これらを使って考えていきます。
まず、[2]より、\( a = 48b+980 \)…[4]
これを[1]に代入すると、\( 60b>48b+980 \)
\( 12b>980 \)
\( \displaystyle b>\frac{980}{12} = 81.66… \)…[5]
また、[3]より、\( 12b-45 = 980-c \)
\( c = -12b+1025 \)…[6]
一次不等式を応用する文章題では、人数や個数など絶対正の数だとわかるものについて、0より大きいという条件を利用できることがあります。この$c$についても、不足額のことでしたから、負の数になることはありえません。つまり、\( c>0 \)なんですから、
\( -12b+1025>0 \)
\( -12b>-1025 \)
この不等式を解くには不等式の左右両方を-12で割る必要がありますが、不等式の左右両方を負の数でかけたり割ったりするときは不等号の向きが変わります。なので、
\( \displaystyle b<\frac{1025}{12} = 85.41… \)…[7]
$b$はグループの人数ですから自然数、つまり正の整数になるに決まっていますが、[5]と[7]より、$b$は82,83,84,85のどれかになることがわかります。
さらに、不等式をつくるときにグループの中でお金を出した人数を\( \displaystyle \frac{4}{5}b \)と考えましたが、これも自然数になるはずです。ということは、これが整数になるには、$b$は5の倍数である必要があります。よって、\( b = 85 \)
これを[4]に代入して、\( a = 48・85+980 = 5060 \)
そして[6]より、\( c = -12・85+1025 = 5 \)
つまり、目標額は5060円,グループの人数は85人,不足額は5円だったというわけですね。
(2)① この問題では文字が与えられていないんで、自分で考えて文字をおかないといけません。こんなときは求めるものを$x$などの文字にして考えていくとうまくいくことが多いです。この問題なら、改定前の運賃を$x$円とおきます。そうすると、端数を切り捨てたり切り上げたりする前の運賃は\( \displaystyle \frac{108}{105}x \)円となります。
もとの運賃より20円値上げになるということは、たとえば\( \displaystyle \frac{108}{105}x \)円ともとの運賃の差が11円のように、ちょっとでも10円を超えていれば、20円の値上げになります(差が10円ちょうどだと値上げ幅は10円です)。差が12円のときも同じですし、19円のときもそうです。でも、21円など、20円を少しでも超えてしまえば、切り上げられてしまうんで値上げ幅は30円になっちゃいます。
というわけで、\( \displaystyle 10<\frac{108}{105}x-x≦20 \)を満たせばいいということになります。
まず、\( \displaystyle 10<\frac{108}{105}x-x \)を解くと、
\( \displaystyle \frac{3}{105}x>10 \)
\( \displaystyle \frac{1}{35}x>10 \)
\( x>350 \)
\( \displaystyle \frac{108}{105}x-x≦20 \)を解くと、
\( \displaystyle \frac{3}{105}x≦20 \)
\( \displaystyle \frac{1}{35}x≦20 \)
\( x≦700 \)
\( x>350 \)と\( x≦700 \)の両方を満たす範囲を求めればいいことになるわけですが、運賃は10円きざみで設定されているので、360円以上700円以下ということになります。
② 求める改定前の運賃を$x$円とし、\( \displaystyle \frac{108}{105}x \)円と比べて改定後の運賃は
ICカード利用の場合:1円未満の端数を切り捨て→1円以上安くなることはない
切符利用の場合:10円未満の端数を切り上げ→10円以上高くなることはない
よって、ICカードと切符とで運賃の差は11円以上になることはなく、最大でも10円ということになります。
運賃の差が10円になるときは、\( \displaystyle \frac{108}{105}x \)が280.2とか330.6などのように、一の位が0で、その後に小数点以降の値が続いているときです。
この条件は、\( \displaystyle \frac{108}{105}x \)円と改定前の運賃の差である\( \displaystyle \frac{108}{105}x-x = \frac{1}{35}x \)の一の位が0で、その後に小数点以降の値が続くときというのと同じです。まず、この\( \displaystyle \frac{1}{35}x \)が10の倍数となる$x$の値は、
\( x = 350,700 \)の2つです。
このときに、10の倍数ちょうどの値となるので、ここから$x$を10円きざみで増やして、\( \displaystyle \frac{1}{35}x \)が一の位が0で、その後に小数点以降の値が続く値を調べていきます。
\( x = 360 \)のとき、\( \displaystyle \frac{1}{35}×360 \) = 10.28…
\( x = 370 \)のとき、\( \displaystyle \frac{1}{35}×370 \) = 10.57…
\( x = 380 \)のとき、\( \displaystyle \frac{1}{35}×380 \) = 10.85…
\( x = 390 \)のとき、\( \displaystyle \frac{1}{35}×390 \) = 11.14…
となります。また、
\( x = 710 \)のとき、\( \displaystyle \frac{1}{35}×710 \) = 20.28…
\( x = 720 \)のとき、\( \displaystyle \frac{1}{35}×320 \) = 20.57…
\( x = 730 \)のとき、\( \displaystyle \frac{1}{35}×730 \) = 20.85…
\( x = 740 \)のとき、\( \displaystyle \frac{1}{35}×740 \) = 21.14…
です。以上より、ICカードと切符とで運賃の差が10円となる改定前運賃は、360,370,380,710,720,730円とわかり、これが求めるものとなります。
③ 10円未満の端数を四捨五入するという方法になった場合、値上げにならないようにするには、改定前後の運賃の差が5円より少なくなったらいいはずです。これを不等式にあらわすと、
\( \displaystyle \frac{108}{105}x-x<5 \)
この不等式を解くと
\( \displaystyle \frac{1}{35}x<5 \)
\( x<175 \)
つまり、運賃が175円より小さければ四捨五入した場合に値上げにならないということになります。ただ、運賃は130円から10円きざみで設定されているわけなので、それとあわせて正確に考えると、求める運賃は130円以上170円以下ということになります。
答え.
(1)
\( a = 5060 \),\( b = 85 \),\( c = 5 \)
(2)
① 360円以上700円以下
② 360,370,380,710,720,730円
③ 130円以上170円以下