この問題のポイント
複雑な変数でも二次関数の式だと見抜けば平方完成させて最大値などを求めることができる!
ア
少しとっつきにくい形の問題ですが、要するに日給$Y_A$が変化することで、満足度$U_A$もそれに応じて変化していくということは読み取れたと思います。ということは、日給$Y_A$が決まれば満足度$U_A$も決まるということであり、それを求める式が\( \displaystyle U_A = Y_A-\left(\frac{Y_A}{a}\right)^2 \)だというわけです。この式を㋐とします。
ここまでの話は、今まで見てきたような$y$ = …の式で、$x$の値が決まれば$y$の値が決まるというのと同じ理屈ですね?そこで、$U_A$を$y$,$Y_A$を$x$とおいてみると、㋐の式は
\( \displaystyle y = x-\left(\frac{x}{a}\right)^2 \)とおけます。
これを変形すると、
\( \displaystyle y = x-\frac{x^2}{a^2} \)
\( \displaystyle y = -\frac{x^2}{a^2}+x \)
\( \displaystyle y = -\frac{1}{a^2}・x^2+x \)…㋑
こうすると、これはただの二次関数の式だとわかりますね?$Y_A$や$U_A$のように見慣れないものがあったのでわかりにくかったかもしれませんが、これは単なる二次関数の式だったわけです。このように、二次関数の式だと気づくかどうかがこの問題の最大のポイントです。
満足度を最大にする日給を考えるわけですから、満足度の最大値はどれほどか(=$y$の最大値は何か)、そのときの日給はいくらか(=$x$の値は何か)ということを考えることとなります。そのために、㋑を平方完成をすると、
\( \displaystyle y = -\frac{1}{a^2}(x^2-a^2x) \)
\( \displaystyle y = -\frac{1}{a^2}\left(x^2-a^2x+\frac{a^4}{4}-\frac{a^4}{4}\right) \)
\( \displaystyle y = -\frac{1}{a^2}\left(x^2-a^2x+\frac{a^4}{4}\right)+\frac{a^2}{4} \)
\( \displaystyle y = -\frac{1}{a^2}\left(x-\frac{a^2}{2}\right)^2+\frac{a^2}{4} \)
ここで、$x$や$y$をもとに戻すと、\( \displaystyle U_A = -\frac{1}{a^2}\left(Y_A-\frac{a^2}{2}\right)^2+\frac{a^2}{4} \)
$a$は時間給のことですから$a>0$なので、\( \displaystyle -\frac{1}{a^2}<0 \)
よって、これは上に凸の放物線なので、頂点のところで最大値となりますが、その頂点とは\( \displaystyle \left(\frac{a^2}{2},\frac{a^2}{4}\right) \)です。
よって、満足度$U_A$が最大になる日給$Y_A$の値は\( \displaystyle \frac{a^2}{2} \)です。
イ
頂点\( \displaystyle \left(\frac{a^2}{2},\frac{a^2}{4}\right) \)で最大値となるのですから、満足度の最大値は\( \displaystyle \frac{a^2}{4} \)です。
ウ
\( Y_A>\overline{Y} \)のときの式は\( \displaystyle U_A = Y_A-T-\left(\frac{Y_A}{a}\right)^2 \)です。最大値を求める問題なので、この式を〔1〕の問題と同じように平方完成してみます。
$U_A$を$y$,$Y_A$を$x$とおいてみると、
\( \displaystyle y = x-T-\left(\frac{x}{a}\right)^2 \)
\( \displaystyle y = x-T-\frac{x^2}{a^2} \)
\( \displaystyle y = -\frac{1}{a^2}・x^2+x-T \)
\( \displaystyle y = -\frac{1}{a^2}\left(x^2-a^2x\right)-T \)
\( \displaystyle y = -\frac{1}{a^2}\left(x^2-a^2x+\frac{a^4}{4}-\frac{a^4}{4}\right)-T \)
\( \displaystyle y = -\frac{1}{a^2}\left(x^2-a^2x+\frac{a^4}{4}\right)+\frac{a^2}{4}-T \)
\( \displaystyle y = -\frac{1}{a^2}\left(x-\frac{a^2}{2}\right)^2+\frac{a^2}{4}-T \)
$x$や$y$をもとに戻すと、\( \displaystyle U_A = -\frac{1}{a^2}\left(Y_A-\frac{a^2}{2}\right)^2+\frac{a^2}{4}-T \)
さっきの〔1〕の問題と同じように考えると、頂点\( \displaystyle \left(\frac{a^2}{2},\frac{a^2}{4}-T\right) \)で最大値をとるので、最大の満足度は\( \displaystyle \frac{a^2}{4}-T \)です。
(参考)
\( Y_A>\overline{Y} \)のときと\( Y_A≦\overline{Y} \)のときで、式にどんな違いがあるかは気づきましたか?途中の部分が$-T$になっているか$+T$になっているかですね。
つまり、\( Y_A>\overline{Y} \)のときは一定額$T$を税金として徴収される形で減らされ、\( Y_A≦\overline{Y} \)のときは一定額$T$の補助金を受け取る形で増やせるということです。
エ
政府が個人Aから税金を徴収するための2つの条件について、 ア や ウ を解いたので、それを埋めると、
- \( \displaystyle 0<\overline{Y}≦\frac{a^2}{2} \)
- \( \displaystyle \frac{a^2}{4}-T≧\overline{Y}+T-\left(\frac{\overline{Y}}{a}\right)^2 \)
これに\( a = 6 \),\( T = 2 \)を代入します。
\( \displaystyle 0<\overline{Y}≦\frac{a^2}{2} \)のほうは
\( \displaystyle 0<\overline{Y}≦18…\frac{6^2}{2} \)
\( ∴0<\overline{Y}≦18 \)…㋒
\( \displaystyle \frac{a^2}{4}-T≧\overline{Y}+T-\left(\frac{\overline{Y}}{a}\right)^2 \)のほうは
\( \displaystyle \frac{6^2}{4}-2≧\overline{Y}+2-\left(\frac{\overline{Y}}{6}\right)^2 \)
\( \displaystyle 7≧\overline{Y}+2-\left(\frac{\overline{Y}}{6}\right)^2 \)…㋓
㋓の式を変形すると、
\( \displaystyle 7≧\overline{Y}+2-\frac{\overline{Y}^2}{36} \)
\( \displaystyle \frac{\overline{Y}^2}{36}-\overline{Y}+5≧0 \)
\( \overline{Y}^2-36\overline{Y}+180≧0 \)
このような二次不等式となったので、この不等式を解くと、
\( (\overline{Y}-6)(\overline{Y}-30)≧0 \)
\( ∴\overline{Y}≦6,30≦\overline{Y} \)
これと㋒の両方を満たす\( \overline{Y} \)の範囲は\( 0<\overline{Y}≦6 \)です。
(参考)
税金を徴収するための2つの条件が、なぜあのような式になるかについて補足説明をします。まず1つ目の式についてです。
問題文にもあるとおり、満足度が最大となるように個人Aは働きますから、その日給以上に個人Aは働かないことになります。もし、税金を徴収するかどうかの線引きを満足度が最大となる日給を超えた金額で設定してしまうと、政府は税金を徴収することができなくなります。なので、その線引きは満足度が最大となる日給以下に抑えるべきというのが1つ目の式です。
2つ目の式は、税金を払ったときの満足度が補助金を受け取ったときの満足度以上であることを示しています。税金を払うより補助金を受け取るほうが満足だと誰も税金を払わなくなります。そうではなく、たとえ補助金を受けなくても税金を支払ったほうが満足という状態が必要ということを示しているわけです。
オ
個人Bについて満足度を求めていく必要があると考えられますから、まずそれを求めます。それを算出する式は個人Aと同じだと問題文にありますから、\( Y_B>\overline{Y} \)、つまり税金を支払うときの最大の満足度は ウ より\( \displaystyle \frac{b^2}{4}-T \)
この満足度が補助金を受け取るときの満足度を上回ると、政府が税金を徴収するための2つの条件のうち2つ目を満たすことになるので、税金を支払うこととなります。よって、補助金を受け取るのは、それが成り立たないときだというわけなので、
\( \displaystyle \frac{b^2}{4}-T<\overline{Y}+T-\left(\frac{\overline{Y}}{b}\right)^2 \)
エ は6と求めましたから、この式に\( \overline{Y} = 6 \),\( T = 2 \)を代入して、
\( \displaystyle \frac{b^2}{4}-2<6+2-\left(\frac{6}{b}\right)^2 \)
\( \displaystyle \frac{b^2}{4}-2<8-\frac{36}{b^2} \)
\( \displaystyle \frac{b^2}{4}-10+\frac{36}{b^2}<0 \)
\( b^4-40b^2+144<0 \)
$b^2$についての二次不等式とみなすと、\( (b^2-4)(b^2-36)<0 \)
\( 4<b^2<36 \)
$b$は個人Bの時間給のことでしたから、$b>0$なので、\( 2<b<6 \)です。
答え.
ア …\( \displaystyle \frac{a^2}{2} \)
イ …\( \displaystyle \frac{a^2}{4} \)
ウ …\( \displaystyle \frac{a^2}{4}-T \)
エ …6
オ …\( 2<b<6 \)