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この問題のポイント

因数分解を使って式変形できない場合は、不等式に持ちこんで解をしぼりこむことを考えよう!

(1)〈指針〉

「正の整数$a$,$b$が存在しない」ということは、$a>0$と$b>0$の両方が同時に成立しえないということですね。

$c = 1$のとき、等式①は、
\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right)・2 = 2 \)
\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right) = 1 \)
となります。

このような不定方程式を解くときは、(  )(  ) = (整数)の形など、もっと簡単な形に変形して考えることが多いです。この式ももっと簡単な形に変形して、$a>0$かつ$b>0$だと式が成立しないことを示していくといいでしょう。

あるいは、式変形せずに、「$a>0$かつ$b>0$となる整数が存在する」といったん仮定して話を進めて、矛盾を導いていくという背理法を使って証明する方法でもいいでしょう。

〈証明〉

$c = 1$のとき、等式①は、
\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right)・2 = 2 \)
\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right) = 1 \)
\( \displaystyle \frac{a+1}{a}・\frac{b+1}{b} = 1 \)
\( \displaystyle \frac{(a+1)(b+1)}{ab} = 1 \)

\( ab \neq 0 \)より、\( (a+1)(b+1) = ab \)
\( ab+a+b+1 = ab \)
\( a+b+1 = 0 \)
\( a+b = -1 \) …A

ここで、$a>0$の場合、Aの式は$b<0$でなければ成立しない。
同様に、$b>0$の場合、Aの式は$a<0$でなければ成立しない。
これより、$c = 1$のとき、等式①を満たす正の整数$a$,$b$は存在しない。


(別解)

$c = 1$のとき、等式①は、
\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right)・2 = 2 \)
\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right) = 1 \) …A'

ここで、$a>0$かつ$b>0$である整数が存在すると仮定する。
\( \displaystyle 0<\frac{1}{a}<1 \)といえるので、\( \displaystyle 1<1+\frac{1}{a}<2 \)
同様に、\( \displaystyle 0<\frac{1}{b}<1 \)といえるので、\( \displaystyle 1<1+\frac{1}{b}<2 \)

これより、\( \displaystyle 1<\left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right)<4 \)である。
これは、A'の式に矛盾する。
したがって、$c = 1$のとき、等式①を満たす正の整数$a$,$b$は存在しない。


(2)$c = 2$のとき、等式①は、
\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right)・\frac{3}{2} = 2 \)
\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right) = \frac{4}{3} \)

ここで、さっきの(1)と同じように式を変形して(  )(  ) = (整数)の形にしてみましょう。

\( \displaystyle \frac{a+1}{a}・\frac{b+1}{b} = \frac{4}{3} \)
\( \displaystyle \frac{(a+1)(b+1)}{ab} = \frac{4}{3} \)
\( 3(a+1)(b+1) = 4ab \)
\( 3ab+3a+3b+3 = 4ab \)
\( ab-3a-3b-3 = 0 \) …B

この式について、\( ab-3a = a(b-3) \)ですが、\( -3b-3 = -3(b+1) \)です。
\( -3(b-3) = -3b+9 \)であれば$b-3$という因数分解ができますよね?

そこで、Bの式の左辺と右辺両方ともに+9を加えると、
\( ab-3a-3b+9-3 = 0+9 \)
\( ab-3a-3b+9 = 0+9+3 \)
\( a(b-3)-3(b-3) = 12 \)
\( (a-3)(b-3) = 12 \)

$a$,$b$は正の整数で$a≧b$ですから、$a≧b>0$なので、$a-3≧b-3>-3$
この条件を満たすもので、かけ合わせると12になる組み合わせは、
\( (a-3,b-3) \) = (12,1),(6,2),(4,3)

よって、\( (a,b) \) = (15,4),(9,5),(7,6)

(3)この問題では$c$の値が決まっていないので、ここまでのように因数分解して(  )(  ) = (整数)の形にして考えることができません。このような場合は、与えられた条件から不等式に持ちこんで解をしぼりこむことを考えてみましょう

この問題では、$a≧b≧c$という条件が与えられています。この条件より、\( \displaystyle \frac{1}{a}≦\frac{1}{b}≦\frac{1}{c} \)
大小関係が設定されている問題では、このように最大数または最小数と比べた不等式をつくって解をしぼりこむことができることがあります

この問題の場合、\( \displaystyle 1+\frac{1}{a}≦1+\frac{1}{b}≦1+\frac{1}{c} \)となるので、
\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right)\left(1+\frac{1}{c}\right)≦\left(1+\frac{1}{c}\right)^3 \)
等式①で\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right)\left(1+\frac{1}{c}\right) = 2 \)とあったので、\( \displaystyle 2≦\left(1+\frac{1}{c}\right)^3 \) …C

$c = 3$のとき、\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{3}\right)^3 = \left(\frac{4}{3}\right)^3 = \frac{64}{27} \)であり、これは2より大きいのでCの式を満たします。
$c = 4$のとき、\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{4}\right)^3 = \left(\frac{5}{4}\right)^3 = \frac{125}{64} \)であり、これは2より小さいのでCの式を満たしません。

$c$の値が大きくなればなるほど\( \displaystyle \frac{1}{c} \)の値は小さくなっていきますから、$c$の値がこれ以上大きくなればCの式は成り立たなくなります。
よって、考えられる$c$の値は1,2,3しかありません。

ただ、(1)より、$c = 1$のとき、$a$,$b$となる正の整数は存在しませんでした。
$c = 2$のときは(2)より、\( (a,b,c) \) = (15,4,2),(9,5,2),(7,6,2)です。
あとは$c = 3$のときの$a$と$b$の値を考えればよいので、(2)と同じように考えてみましょう。

$c = 3$のとき、等式①は、
\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right)・\frac{4}{3} = 2 \)
\( \displaystyle \left(1+\frac{1}{a}\right)\left(1+\frac{1}{b}\right) = \frac{3}{2} \)
\( \displaystyle \frac{(a+1)(b+1)}{ab} = \frac{3}{2} \)
\( 2(a+1)(b+1) = 3ab \)
\( 2ab+2a+2b+2 = 3ab \)
\( ab-2a-2b-2 = 0 \)

\( ab-2a = a(b-2) \)なので、\( -2(b-2) = -2b+4 \)が必要になるため、この式の左辺と右辺両方ともに+4を加えると、
\( ab-2a-2b+4-2 = 0+4 \)
\( ab-2a-2b+4 = 0+4+2 \)
\( a(b-2)-2(b-2) = 6 \)
\( (a-2)(b-2) = 6 \)

$a$,$b$は正の整数で$a≧b$ですから、$a≧b>0$なので、$a-2≧b-2>-2$
この条件を満たすもので、かけ合わせると12になる組み合わせは、
\( (a-2,b-2) \) = (6,1),(3,2)

よって、$c = 3$のとき、\( (a,b) \) = (8,3),(5,4)です。
以上より、求める\( (a,b,c) \)はすべてで(15,4,2),(9,5,2),(7,6,2),(8,3,3),(5,4,3)です。

答え.
(1)(上の〈証明〉や(別解)参照)
(2)\( (a,b) \) = (15,4),(9,5),(7,6)
(3)\( (a,b,c) \) = (15,4,2),(9,5,2),(7,6,2),(8,3,3),(5,4,3)