この問題のポイント
条件付き確率は、AとB両方が起こる確率をAが起こる確率で割るか、乗法定理を利用することで求まる!
条件付き確率とは、ある事象Aが起きたとわかったもとで別の事象Bが起こる確率のことを言います。あることが起こったという前提がついた状況のうえで別のことが起こる確率を求めることになるという点がふつうの確率とちがうわけです。
この問題ならば、1個取り出した製品について、工場Aで生産されたという事象を$A$、工場Bで生産されたという事象を$B$、工場Cで生産されたという事象を$C$、不良品だという事象を$E$と考えてみます。すると、
\( \displaystyle P(A) = \frac{2000}{10000} = \frac{1}{5} \)
\( \displaystyle P(B) = \frac{3000}{10000} = \frac{3}{10} \)
\( \displaystyle P(C) = \frac{5000}{10000} = \frac{1}{2} \)
そして、たとえば工場Aの不良品の比率は20%ということですが、これは工場Aで生産されたものだとわかっているもとでの不良品の割合ですね?同じことが工場B,Cでもあてはまります。つまり、不良品の比率は、それぞれの工場で生産されたとわかった前提での不良品を取り出す条件付き確率と同じことになります。
事象Aが起きたうえで事象Bが起きる条件付き確率は$P_A(B)$と書きます。よって、それぞれの工場について不良品を取り出す条件付き確率は、
\( \displaystyle P_A(E) = \frac{20}{100} = \frac{1}{5} \)
\( \displaystyle P_B(E) = \frac{10}{100} = \frac{1}{10} \)
\( \displaystyle P_C(E) = \frac{5}{100} = \frac{1}{20} \)
ここまで求めたものを使って、それぞれの確率を考えましょう。
カ
工場Cで生産された製品ではないとわかっているうえで工場Aで生産された製品を取り出す条件付き確率ですから、\( P_{\overline{C}}(A) \)を求めることになります。ここで、条件付き確率を求める公式を確認しましょう。
条件付き確率$P_A(B)$を求める公式は、
\( \displaystyle P_A(B) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)} \)
(つまり、\( \displaystyle \frac{AもBも起こる確率}{Aが起こる確率} \)をあらわす)
これより、\( P_{\overline{C}}(A) \)を求めるには、\( \displaystyle \frac{P(\overline{C} \cap A)}{P(\overline{C})} \)を求めればよいということになります。工場Cで生産されたものではない製品を取り出すとは、要するに工場Aか工場Bで生産された製品を取り出すということです。そして、工場Cで生産された製品ではなく、かつ工場Aで生産された製品というのは、それは単に工場Aで生産された製品ということです。
\( \displaystyle P(\overline{C}) = P(A)+P(B) = \frac{1}{5}+\frac{3}{10} \)
\( \displaystyle P(\overline{C} \cap A) = P(A) = \frac{1}{5} \)
\( \displaystyle ∴P_{\overline{C}}(A) = \frac{P(\overline{C} \cap A)}{P(\overline{C})} \)
\( \displaystyle = \frac{P(A)}{P(A)+P(B)} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{1}{5}}{\frac{1}{5}+\frac{3}{10}} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{2}{10}}{\frac{5}{10}} = \frac{2}{5} \)
キ
工場Cで生産された製品ではないとわかっているうえで不良品を取り出す条件付き確率ですから、\( P_{\overline{C}}(E) \)を求めることになるので、\( \displaystyle \frac{P(\overline{C} \cap E)}{P(\overline{C})} \)を考えることになります。\( P(\overline{C}) \)はさっき考えたとおりなので、ここでは問題ないでしょう。
\( P(\overline{C} \cap E) \)とは工場Cで生産された製品ではなく、かつ不良品を取り出す確率ですが、これは言い換えれば、取り出したものが工場Aで生産された製品で不良品、または工場Bで生産された製品で不良品となる確率ということになります。
そして要注意なのが、製品を取り出すときはどの工場で生産されたのかわからない状態で取り出すわけなので、取り出したものが工場Aで生産された製品で不良品である確率は\( P(A \cap E) \)であるということです(さっきの$P_A(E)$は工場Aで生産されたとわかって製品を取り出したときの確率です)。取り出したものが工場Bで生産された製品で不良品である確率も同様の理由で\( P(B \cap E) \)です。
このような\( P(● \cap ▲) \)を求めるときは乗法定理を使うことができます。
\( \displaystyle P_A(B) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)} \)の式の両辺に$P(A)$をかけると
\( P(A \cap B) = P(A)・P_A(B) \)
この赤文字で示した式が確率の乗法定理である
\( \displaystyle P_A(E) = \frac{P(A \cap E)}{P(A)} \)が成り立つわけですから、\( P(A \cap E) = P(A)・P_A(E) \)を求めればいいことになります。同様に、\( P(B \cap E) \)も\( P(B)・P_B(E) \)を考えればいいですね。
\( \displaystyle ∴P_{\overline{C}}(E) = \frac{P(\overline{C} \cap E)}{P(\overline{C})} \)
\( \displaystyle = \frac{P(A \cap E)+P(B \cap E)}{P(\overline{C})} \)
\( \displaystyle = \frac{P(A)・P_A(E)+P(B)・P_B(E)}{P(\overline{C})} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{1}{5}・\frac{1}{5}+\frac{3}{10}・\frac{1}{10}}{\frac{5}{10}} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{1}{25}+\frac{3}{100}}{\frac{5}{10}} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{7}{100}}{\frac{50}{100}} = \frac{7}{50} \)
ク
取り出された不良品は工場Aで生産されたものかもしれませんし、工場Bで生産されたかもしれませんし、工場Cで生産された可能性もあります。よって、この3つの場合それぞれの確率をすべてたさなければいけませんね。
そしてどの工場で生産されたのかわからない状態で取り出すわけなので、工場Aで生産された不良品を取り出す確率は\( P(A \cap E) \)と表せます。同様に、工場B,工場Cで生産された不良品を取り出す確率は\( P(B \cap E) \),\( P(C \cap E) \)です。
さっきの キ を求める過程で、\( \displaystyle P(A \cap E) = P(A)・P_A(E) = \frac{1}{5}・\frac{1}{5} \),\( \displaystyle P(B \cap E) = P(B)・P_B(E) = \frac{3}{10}・\frac{1}{10} \)と求まりました。同様に考えて、
\( \displaystyle P(C \cap E) = P(C)・P_C(E) = \frac{1}{2}・\frac{1}{20} \)
\( ∴P(E) \)
\( = P(A \cap E)+P(B \cap E)+P(C \cap E) \)
\( \displaystyle = \frac{1}{5}・\frac{1}{5}+\frac{3}{10}・\frac{1}{10}+\frac{1}{2}・\frac{1}{20} \)
\( \displaystyle = \frac{1}{25}+\frac{3}{100}+\frac{1}{40} = \frac{19}{200} \)
ケ
取り出された製品が不良品だとわかっているうえで工場Aで生産された製品である確率を考えるわけなので、これは条件付き確率$P_E(A)$を考えればいいということになります。条件付き確率の公式より、\( \displaystyle P_E(A) = \frac{P(E \cap A)}{P(E)} \)ですね。
さっきの ク より、\( \displaystyle P(E) = \frac{19}{200} \)です。
そして、\( P(E \cap A) \)とは\( P(A \cap E) \)と同じですから、この値はこれまで何回か出ていたとおり\( \displaystyle \frac{1}{5}・\frac{1}{5} \)ですね。
\( \displaystyle ∴P_E(A) = \frac{P(E \cap A)}{P(E)} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{1}{5}・\frac{1}{5}}{\frac{19}{200}} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{1}{25}}{\frac{19}{200}} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{8}{200}}{\frac{19}{200}} = \frac{8}{19} \)
コ
取り出された製品が不良品だとわかっているうえで工場Bで生産された製品である確率を考えるわけなので、$P_E(B)$を考えることになります。 ケ と同じように考えれば、
\( \displaystyle P_E(B) = \frac{P(E \cap B)}{P(E)} \)
\( \displaystyle = \frac{P(B \cap E)}{P(E)} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{3}{10}・\frac{1}{10}}{\frac{19}{200}} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{3}{100}}{\frac{19}{200}} \)
\( \displaystyle = \frac{\frac{6}{200}}{\frac{19}{200}} = \frac{6}{19} \)
答え.
カ …\( \displaystyle \frac{2}{5} \)
キ …\( \displaystyle \frac{7}{50} \)
ク …\( \displaystyle \frac{19}{200} \)
ケ …\( \displaystyle \frac{8}{19} \)
コ …\( \displaystyle \frac{6}{19} \)