この問題のポイント
複雑な式の展開は一部を置き換えしたり、計算する順序や組合せを工夫したりしよう!
(1)この式を見ると、( )の中に3つの文字があり、しかもそれらがいろいろ足したり引いたりされていて少し複雑そうですね。このような式を展開するには
- 同じ数式となっている部分をいったん別の文字に置き換えて展開する
- 前から順番に展開していくのではなく、簡単に計算できるように順序や組合せを変える
というような方法をとって計算するといいでしょう。たとえば、この問題の式であれば、\( (a+b+c)^2+(a-b-c)^2 \)の部分では、\( a-b-c = a-(b+c) \)と考えれば、$b+c$の部分が同じとなりますね。この部分を$X$とおいてみましょう。
\( -(-a+b-c)^2-(-a-b+c)^2 \)の部分も、\( -a-b+c = -a-(b-c) \)とすれば、$b-c$の部分が同じになります。この部分を$Y$とおきます。そうすると、この問題の式はこのようにすることができます。
\begin{eqnarray} &&(a+b+c)^2+(a-b-c)^2\\ &&~~~~-(-a+b-c)^2-(-a-b+c)^2\\ &&= (a+b+c)^2+\{a-(b+c)\}^2\\ &&~~~~-(-a+b-c)^2-\{-a-(b-c)\}^2\\ &&= (a+X)^2+(a-X)^2\\ &&~~~~-(-a+Y)^2-(-a-Y)^2\\ &&= (a+X)^2+(a-X)^2\\ &&~~~~-\{-(a-Y)\}^2-\{-(a+Y)\}^2\\ &&= (a+X)^2+(a-X)^2\\ &&~~~~-(a-Y)^2-(a+Y)^2\\ &&= a^2+2aX+X^2+a^2-2aX+X^2\\ &&~~~~-(a^2-2aY+Y^2)-(a^2+2aY+Y^2)\\ &&= a^2+2aX+X^2+a^2-2aX+X^2\\ &&~~~~-a^2+2aY-Y^2-a^2-2aY-Y^2\\ &&= 2X^2-2Y^2\\ \end{eqnarray}
ここで、$X$と$Y$をもとの式にもどすと、
\begin{eqnarray} &&2(b+c)^2-2(b-c)^2\\ &&= 2(b^2+2bc+c^2)-2(b^2-2bc+c^2)\\ &&= 2b^2+4bc+2c^2-2b^2+4bc-2c^2\\ &&= 8bc\\ \end{eqnarray}
ということで、$b^2$が入っている項はありませんから、この係数は0、$bc$の係数は8となります。
(2)$A$と$B$それぞれにいきなり代入して計算すると、とても大変なことになりそうなので、$A$と$B$で同じ部分を置き換えて計算することを考えましょう。よく見ると、$A$と$B$の式にて、$x^3$と$x$はどちらもプラスになっていて、それ以外は符号が逆になっています。ということで、このように式を変形します。
\( A = x^3+x+x^2+1 \)
\( B = x^3+x-x^2-1 = x^3+x-(x^2+1) \)
そして、\( x^3+x = X \)、\( x^2+1 = Y \)とおくと、\( A = X+Y \)、\( B = X-Y \)とおけますね。これを\( A^3-B^3 \)に代入するほうがラクですね。それで計算していくと、
\begin{eqnarray} &&(X+Y)^3-(X-Y)^3\\ &&= X^3+3X^2Y+3XY^2+Y^3\\ &&~~~~-(X^3-3X^2Y+3XY^2-Y^3)\\ &&= X^3+3X^2Y+3XY^2+Y^3\\ &&~~~~-X^3+3X^2Y-3XY^2+Y^3\\ &&= 6X^2Y+2Y^3\\ \end{eqnarray}
$X$と$Y$をもとの式にもどして、
\begin{eqnarray} &&6(x^3+x)^2(x^2+1)+2(x^2+1)^3\\ &&= 6(x^6+2x^4+x^2)(x^2+1)\\ &&~~~~+2(x^6+3x^4+3x^2+1)\\ &&= 6(x^8\underline{+x^6}\underline{+2x^6}+2x^4+x^4+x^2)\\ &&~~~~+2(\underline{x^6}+3x^4+3x^2+1)\\ \end{eqnarray}
ここで、$x^6$が関係しているのは、上の式で下線がひいてあるところになりますね。3か所ありますが、左から下線部A、下線部B、下線部Cとおきます。( )をはずしたときのそれぞれの係数は、
下線部A…6
下線部B…6×2 = 12
下線部C…2
よって、係数は、6+12+2 = 20です。
(別解)
(1)は、因数分解の知識を使うと、もっと簡単に解くことができます。後ろに引き算になっているのが固まっていますが、( )の前の引き算は計算ミスしやすいですから、後ろで固めないように、順序を入れ替えてみます。
\begin{eqnarray} &&(a+b+c)^2+(a-b-c)^2\\ &&~~~~-(-a+b-c)^2-(-a-b+c)^2\\ &&= (a+b+c)^2-(-a+b-c)^2\\ &&~~~~+(a-b-c)^2-(-a-b+c)^2\\ \end{eqnarray}
ここで、\( A^2-B^2 = (A+B)(A-B) \)という因数分解の公式を利用すると、上の式はこのように変形できます。
\begin{eqnarray} &&\{a+b+c+(-a+b-c)\}\{a+b+c-(-a+b-c)\}\\ &&~~~~+\{a-b-c+(-a-b+c)\}\{a-b-c-(-a-b+c)\}\\ &&= 2b(2a+2c)-2b(2a-2c)\\ &&= 4ab+4bc-4ab+4bc\\ &&= 8bc\\ \end{eqnarray}
\begin{eqnarray} &&\tiny{\{a+b+c+(-a+b-c)\}\{a+b+c-(-a+b-c)\}}\\ &&\tiny{~~~~+\{a-b-c+(-a-b+c)\}\{a-b-c-(-a-b+c)\}}\\ &&\tiny{= 2b(2a+2c)-2b(2a-2c)}\\ &&\tiny{= 4ab+4bc-4ab+4bc}\\ &&\tiny{= 8bc}\\ \end{eqnarray}
展開した結果はさっきと同じになっています。
答え.
(1)$b^2$の係数…0 $bc$の係数…8
(2)20