この問題でおさえておきたいこと
電熱線が発する熱量は電力量の求め方と同じ!
水が得た熱量は4.2×水の質量×温度変化でも求まる!
解答
(1)8400J (2)2A (3)160g
(4)6Ω (5)26V (6)20V
(7)1A (8)a>b>c (9)イ
重要事項のまとめ
・電力と電力量
1秒あたりにどれぐらいのエネルギーを出すことができるかを示した値を電力という。
電力(W) = 電流(A)×電圧(V)で求められる。
電力に時間をかけた値を電力量という。
つまり、電力量(Wh) = 電力(W)×時間(時間)である。
例:60Wの電熱線に2時間電流を流したときの電力量は60×2 = 120Wh
・熱量と水温上昇
電熱線から発せられる熱エネルギーの量を熱量という。
熱量の単位はJ(ジュール)であり、次の公式で求まる。
熱量(J) = 電力(W)×時間(秒)
1gの水を1℃上げるのに4.2Jの熱量が必要である。
↓
$x$gの水を1℃上げるのに4.2×$x$(J)の熱量が必要である。
↓
$x$gの水を$y$℃上げるのに4.2×$xy$(J)の熱量が必要である。
よって、水の温度を上昇させるのに必要となった熱量は、
熱量(J) = 4.2×水の質量(g)×上がった温度(℃)
でも求まる。
※この式は覚える必要はありませんが、考え方については慣れておくようにしましょう。
解説
(1)問題文にもあるとおり、水1gの温度を1℃上昇させるには、4.2Jの熱量が必要です。電熱線aが入っているビーカーA内の水の質量は200gで、グラフを見ると、ビーカーAの水の温度は10℃上がっています。
よって、「重要事項のまとめ」に示した考え方を利用すると、求める熱量は
4.2×200×10 = 8400J
(2)3つの電熱線は直列で接続されていますから、回路のどの部分でも電流の大きさは同じです。なので、(1)で考えた電熱線aに流れる電流を考えてみることにしましょう。
電熱線aが発する熱量は8400Jと求まりましたが、これは(電熱線aの電力)×(通電時間)で計算しても求まるはずです。通電時間は7分=420秒ですから、(電熱線aの電力)×420 = 8400Jとなるはずですね。
電熱線aにかかる電圧を$E$,電熱線aに流れる電流を$I$とすると、電力は電圧と電流をかけて求まるので、
$I×E$×420 = 8400
しかし、電圧がいくらかがわかりません。そこで、オームの法則より、$E = I×R$ですから、
$I×I×R$×420 = 8400
電熱線aの抵抗は5Ωですから、
5×$I^2$×420 = 8400
5×$I^2$ = 20
$I^2$ = 4
2乗して4になる正の数は2なので、電熱線aに流れる電流は2Aです。
よって、電流計が示す値も2Aです。
(3)ビーカーB内の水の温度変化もグラフに描かれていますから、ビーカーB内にある電熱線bが発する熱量を手がかりに考えてみましょう。
グラフより、ビーカーB内の水は5℃上がっているので、ビーカーB内の水の質量を$x$gとして、(1)の考え方で熱量を求めると、
4.2×$x$×5 = $21x$Jとおけます。
一方、電熱線bに流れる電流は2Aで、抵抗は2Ωですから、(2)と同じ考え方で熱量を求めると、
2×2×2×420 = 3360Jと求まります。
よって、$21x = 3360$という方程式が成り立ちますから、これを解くと、
$x = 160$
(4)さっきの(3)と同じやり方で考えます。ビーカーC内の水は150gで、グラフより、ビーカーB内の水は16℃上がっているので、
4.2×150×16 = 10080Jと求まります。
また、電熱線cに流れる電流は2Aなので、抵抗を$y$Ωとすると、
$y$×2×2×420 = $1680y$Jとおけます。
よって、$1680y = 10080$という方程式が成り立ちますから、これを解くと、
$y = 6$
(5)電源装置の電圧ということは、回路全体の電圧を考えることになりますので、回路全体の電流と抵抗がどれほどかを考えましょう。まず、回路全体の電流は、2Aです。
そして、直列で接続されているときの回路全体の抵抗は、それぞれの抵抗の値を足した値となります。電熱線aの抵抗は5Ω、電熱線bの抵抗は2Ωで、(4)より電熱線cの抵抗は6Ωなので、回路全体の抵抗は、
5+2+6 = 13Ω
よって、オームの法則より$E = I×R$なので、求める電圧は
2×13 = 26V
(6)電熱線bと電熱線cだけは並列になっています(この部分を回路①とします)が、回路①と電熱線aは直列で接続されています。それならば、回路全体の電流と電熱線aを流れる電流は等しいので、回路全体の電流を考えます。そのために、回路全体の抵抗を求めましょう。
回路①の部分は並列になっているので、回路①全体の抵抗を$X$とすると、\( \displaystyle \frac{1}{X} = \frac{1}{2}+\frac{1}{6} \)が成り立ちます。
これを解くと、\( \displaystyle \frac{1}{X} = \frac{2}{3} \)より、
\( \displaystyle X = \frac{3}{2} \) = 1.5Ω
よって、回路全体の抵抗は1.5+5 = 6.5Ωです。電源装置は図1と同じなので、電圧は(5)より26Vです。ということは、回路全体の電流は、オームの法則より、$I = E÷R$なので、
26÷6.5 = 4A
電熱線aに流れる電流も4Aということになり、この抵抗は5Ωですから、電熱線aにかかる電圧は
4×5 = 20V
(7)直列で接続されているときは、それぞれの電圧の値を足せば回路全体の電圧になります。電熱線aにかかる電圧は(6)で20Vと求まったので、回路①の部分にかかる電圧は26-20 = 6Vです。
そして、回路①の部分だけは並列になっていますが、並列回路では電圧はどの部分でも同じですから、電熱線cにかかる電圧は6Vです。電熱線cの抵抗は6Ωなので、オームの法則より、電熱線cを流れる電流は
6÷6 = 1A
(8)「重要事項のまとめ」にあるとおり、電力は電流と電圧をかければ求まります。さっきの(6)のとおり、電熱線aにおける電流は4A,電圧は20Vですから、電熱線aの消費電力は、4×20 = 80Wです。電熱線cについては、さっきの(7)より、電流は1A,電圧は6Vですから、消費電力は、1×6 = 6Wです。
そして、電熱線bについては、電圧は電熱線cと同じはずですから6Vです。回路①を流れる電流は電熱線aと同じ4A(回路①と電熱線aは直列なので)ですが、並列回路ではそれぞれの部分の電流を足せば回路全体の電流になりますから、電熱線cを流れる電流が1Aのため、電熱線bを流れる電流は4-1 = 3Aです。
これより、電熱線bの消費電力は、3×6 = 18Wです。
よって、消費電力が大きい順に並べると、a>b>cとなります。
(9)「重要事項のまとめ」にあるとおり、熱量は電力と秒をかければ求まりますから、電流を流す時間が同じならば、熱量は電力に比例します。
一方、熱量は4.2×(水の質量)×(上がった温度)でも求まります。ということは、熱量が同じならば、水の質量が多ければ多いほど温度は上昇しにくいので、熱量は水の質量に反比例します。
よって、それぞれのビーカーの水温がどれだけ上がったかを比にすると、
A:B:C
\( \displaystyle = \frac{80}{200}:\frac{18}{300}:\frac{6}{100} \)
= 240:36:36
つまり、A>B=Cという関係になります。