この問題でおさえておきたいこと
金属の種類によりイオンへのなりやすさは異なる!
イオンになりやすい金属が電池のマイナス極になる!
解答
(1)電池(化学電池でもOK)
(2)ア
(3)(なりやすい)$\ce{Zn}$>$\ce{Fe}$>$\ce{Sn}$>$\ce{Ag}$(なりにくい)
(4)(例)鉄より亜鉛のほうが陽イオンになりやすいから。(22字)
重要事項のまとめ
・イオンへの分離
塩化ナトリウム($\ce{NaCl}$)はナトリウムイオン($\ce{Na+}$)と塩化物イオン($\ce{Cl-}$)が結びついてできているが、これを水に溶かすと2つのイオンに分かれる。
このように、水に溶かすと陽イオンと陰イオンに分かれることを電離という。
そして、水に溶かすと陽イオンと陰イオンに分かれる物質(=電離する物質)を電解質、水に溶かしてもイオンに分かれない物質(砂糖、エタノールなど)を非電解質という。
・イオンへのなりやすさ
金属は電子を放出して陽イオンになる性質があるが、陽イオンへのなりやすさはそれぞれちがう。陽イオンへのなりやすさをイオン化傾向という。
代表的な金属では、次の順に陽イオンになりやすい(左にあるものほど陽イオンになりやすい)。
$\ce{Mg}$>$\ce{Al}$>$\ce{Zn}$>$\ce{Fe}$>$\ce{Cu}$>$\ce{Ag}$
・イオン化傾向がわかる実験例
硫酸銅水溶液(銅イオンと硫酸イオンに電離している水溶液)にマグネシウムを入れる。
マグネシウムのほうが銅よりイオン化傾向が大きいので、次の反応が起こる。
- $\ce{Mg -> Mg^2+ + 2e-}$
つまり、マグネシウムは電子を放出してマグネシウムイオンになって水溶液に溶けていく。よって、マグネシウムはどんどん小さくなっていく。 - $\ce{Cu^2+ + 2e- -> Cu}$
つまり、水溶液中の銅イオンは電子を受け取って銅になり、マグネシウムの表面に付着する。
銅イオンがどんどん少なくなるので、硫酸銅水溶液の青色がどんどんうすくなっていく。
解説
(1)化学エネルギーを電気エネルギーとしてとり出す装置を電池(化学電池)といいます。今回の問題のように、銅板と亜鉛板を使った電池で電流が流れるしくみについては、過去の「イオンと電気」の問題についての解説を読んでください。
(2)「重要事項のまとめ」にも示されていたとおり、亜鉛と銅では亜鉛のほうが陽イオンになりやすいです(問題文でも②の反応として亜鉛が陽イオンになることが示されています)。
亜鉛が陽イオンになることで放出した電子は電極Aの銅板のほうに流れるので、電子はイの向きに移動します。電流は電子の向きと逆に流れるので、電流はアの向きに流れることとなります。
(3)さっきの(2)で考えたことをふまえると、電流が流れこむほうの金属が陽イオンになりやすいということになります。表にあることをその観点で見てみると、こうなります。
- 亜鉛と銀では亜鉛のほうに電流が流れこむ
=イオン化傾向は$\ce{Zn}$>$\ce{Ag}$ - 銀とスズではスズのほうに電流が流れこむ
=イオン化傾向は$\ce{Sn}$>$\ce{Ag}$ - 亜鉛と鉄では亜鉛のほうに電流が流れこむ
=イオン化傾向は$\ce{Zn}$>$\ce{Fe}$ - スズと鉄では鉄のほうに電流が流れこむ
=イオン化傾向は$\ce{Fe}$>$\ce{Sn}$
以上より、陽イオンになりやすい順に並べると$\ce{Zn}$>$\ce{Fe}$>$\ce{Sn}$>$\ce{Ag}$となります。
(4)さっきの(3)の解説にもあるとおり、亜鉛のほうが鉄より陽イオンになりやすいです。そのため、弱酸性の雨水が付着したとき、亜鉛が先に雨水の$\ce{H+}$に電子をわたしてイオンになります。これにより、亜鉛のほうが先に腐食していくこととなるので、鉄の腐食が防ぐことができるわけです。
解答としては、25字以内という制限があるので、それほど多くを述べることはできません。亜鉛と鉄のイオン化傾向の差について述べればじゅうぶんでしょう。