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この問題でおさえておきたいこと

中世ヨーロッパの文化はキリスト教が関係している内容が最大の特徴!
イスラーム文化とのかかわりも重要事項!

解答
設問1
(1)…アリストテレス   (2)…シチリア
(3)…ローランの歌   (4)…吟遊詩人
設問2

設問3
フランチェスコ(修道)会
設問4
法学…お   医学…う
設問5
アンセルムス
設問6
実在論
設問7
『神学大全』
設問8
ウィリアム=オブ=オッカム
設問9
トレド

解説

設問1

(1) アリストテレスの哲学はアラビア語に翻訳されイスラーム世界で発展しました。イブン=ルシュド(ラテン名はアヴェロエス)は、『政治学』以外のアリストテレスの著作に注釈をつけ、これがラテン語に翻訳されてスコラ学の大成に影響を与えました。

なお、イブン=ルシュドは『医学大全』という著作も残しました。難関大学入試で世界史を受験するという人は、このこともおさえておくとよいでしょう。

(2) アラビア語の文献などをラテン語に翻訳した中心的拠点は、シチリア島と、イベリア半島にあるトレドでした。

(3) 「ポイントのまとめ」を参照してください。

(4) 吟遊詩人はフランスではトゥルバドゥール、ドイツではミンネジンガーと称されていました。

設問2

広い窓やステンドグラスはゴシック様式の特徴です。ロマネスク様式の特徴は小さい窓と厚い壁なので、い.の選択肢が誤りです。

設問3

托鉢修道会としてフランチェスコ修道会とドミニコ修道会はセットでおさえましょう。どちらも設立は教皇がインノケンティウス3世のときですが、正式認可されたのは次の教皇ホノリウス3世のときでした(フランチェスコ修道会はインノケンティウス3世の認可を受けましたが、正式認可はホノリウス3世のときです)。

設問4

中世の大学とおもな学問は必ずセットでおさえましょう。法学で有名なボローニャ大学は最古の大学です。医学で有名なサレルノ大学はイスラーム医学の影響を受けていて、イブン=シーナー『医学典範』などを教科書としていました。

設問5

「ポイントのまとめ」にもあるとおり、アンセルムスは実在論を主張していた人物です。

設問6

実在論と唯名論については、「ポイントのまとめ」でも説明していますが、いまいちわかりにくいと思うので、わかりやすく例を挙げて説明するとしましょう。

Aさん、Bさん、Cさん、…という個別の人間が世の中にいますが、では個別のものを取りはらった「人間そのもの」という普遍的なものは存在するのかと考えるとどうでしょうか。この問いの答えにYesという立場をとっているのが実在論、Noという立場をとっているのが唯名論です。

設問7

トマス=アクィナスは、実在論・唯名論の両方の立場を尊重しつつスコラ学を大成し、「天使的博士」といわれました。

設問8

ウィリアム=オブ=オッカムはフランチェスコ修道会に属していて、唯名論を主張しました。
ちなみに、難関大学入試で世界史を受験する人は、問題文にあったドゥンス=スコトゥスについてもおさえておきましょう。

設問9

さっきの設問1での解説にもあったとおり、ラテン語への翻訳の拠点となったのはシチリア島とトレドでした。このうち、司教座があったのはトレドのほうです。ちなみに、トレドは西ゴート王国の都でもありましたので、難関大学入試で世界史を受験する場合はそのこともおさえるべきでしょう。

ポイントのまとめ

・教会と修道院

1)中世ヨーロッパの教会と修道院

中世の西ヨーロッパでは、ローマ=カトリック教会の権威が非常に強く、日常生活にも大きな影響を与えていた(教会からの破門は最も重い罰とみなされていた)。

キリスト教の教会における信仰の厳しい修行や労働にはげむ人たちが共同で生活をする場所として修道院があり、教会とともに大きな文化的役割を果たした。

2)修道院について

6世紀にベネディクトゥスがイタリアのモンテ=カシノベネディクト修道会を設立した。
清貧・純潔・服従の生活を送ることが求められ、労働は奴隷の仕事というこれまでの労働観を大きく変えた。

修道院によりさまざまな活動が展開された。

・学問と大学

1)学問の発展

8~9世紀 カール大帝の宮廷でアルクィンなど学者を集め、文芸を奨励した。
カロリング=ルネサンスとよばれる文芸復興がおこる。

11世紀以降 十字軍の遠征でイスラーム世界と接触する。
イスラーム世界に伝わっていたギリシアの古典などがヨーロッパに伝えられる。

学問の発展(12世紀ルネサンス
ギリシアの古典やアラビア語文献がラテン語に翻訳され、哲学や神学、医学が発展した。
アリストテレス哲学が体系化され、神学に取り入れられた。

13世紀、イスラーム科学の影響を受け、ロジャー=ベーコンは自然科学で観察と実験を重視する方法論を説いた。

2)神学について

中世の西ヨーロッパでは、キリスト教の教理や倫理などを研究する神学が最高の学問とされた。
また、聖職者は当時の知識人であり、学問にはラテン語が使われていた。

9世紀ごろ、キリスト教神学を論理的に体系化するスコラ学という学問が始まった。その中心的議論となったのは、普遍論争であった。

12世紀ルネサンスにより、アリストテレス哲学がスコラ学に影響
トマス=アクィナス『神学大全』を著してスコラ学を大成した。
14世紀には、ウィリアム=オブ=オッカムが神学と哲学の分離を説き、近代的合理思想の基礎を築いた。

3)中世の大学

12世紀ごろに西ヨーロッパで大学がつくられ始め、13~14世紀に発展した。 中世ヨーロッパのおもな大学としてこのようなものがある。

・美術と文学

1)建築美術

中世ヨーロッパでは教会建築が発達した。
中世初期では、ビザンツ様式の建築が多かった。

11世紀ごろには、厚い壁と小さな窓、半円状のアーチを特徴とするロマネスク様式が生み出された。
例としてピサ大聖堂などがある。

12~13世紀ごろ、ステンドグラスやとがったアーチを特徴とするゴシック様式が生み出された。
例としてノートルダム大聖堂シャルトル大聖堂ケルン大聖堂などがある。

2)文学

騎士は中世の西ヨーロッパで理想的人物であったため、その騎士を題材にした騎士道物語が誕生した。
各地の市場や宮廷をめぐり歩いて、騎士の活躍や恋愛を題材にした詩を吟じた吟遊詩人が活躍した。

代表的な作品としてこのようなものがある。