この問題でおさえておきたいこと
リプレッサーがオペレーターに結合するとラクトース分解酵素遺伝子が停止して転写OFF!
リプレッサーがラクトースに結合するとラクトース分解酵素遺伝子が発現して転写ON!
解答
問1.
〔 ア 〕…オペロン 〔 イ 〕…RNAポリメラーゼ
〔 ウ 〕…プロモーター 〔 エ 〕…リプレッサー
〔 オ 〕…オペレーター
問2.
〔 エ 〕
問3.
〔 カ 〕…+ 〔 キ 〕…+
問4.
〔 オ 〕
問5.
〔 ク 〕…- 〔 ケ 〕…+
重要事項のまとめ
・真核生物の遺伝子発現調節
どのような遺伝子がどれぐらい発現されるかを調節するしくみを遺伝子発現調節という。真核生物では、次のようなしくみで調節している。
RNAポリメラーゼが基本転写因子というタンパク質のおかげで、プロモーターというDNA上の領域に結合することで転写がされていく。
↓
調節遺伝子からアクチベーターやリプレッサーなどの転写調節因子というタンパク質がつくられ、プロモーターの周辺にある転写調節領域と結合して、転写領域の転写量が調節される。
※アクチベーターは転写を促進し、リプレッサーは転写を抑制するはたらきをします。
・原核生物の遺伝子発現調節
互いの機能が深く関連していて、まとめて転写される遺伝子群のことをオペロンという。
調節タンパク質がオペレーター(原核生物の転写調節領域)に結合してこのオペロンの発現を調節する。
この考えをオペロン説といい、ジャコブとモノーが提唱した。
・ラクトースオペロン
大腸菌はグルコースがある環境ではグルコースを優先して摂取する。
=グルコースがある環境下では、ラクトースを分解する必要はないので、ラクトース分解酵素遺伝子の発現は停止する必要がある。
↓
調節遺伝子がリプレッサーを合成し、そのリプレッサーはオペレーターに結合する。
↓
RNAポリメラーゼはプロモーターと結合し、遺伝子の転写をしようとするが、オペレーターと結合したリプレッサーにじゃまをされているため、転写することができない。
これにより、ラクトース分解酵素遺伝子の発現が停止される。
グルコースがなく、ラクトースを摂取しないといけない環境下では、調節遺伝子から合成されたリプレッサーはラクトースに結合する。
↓
リプレッサーはオペレーターと結合しないので、プロモーターと結合したRNAポリメラーゼはラクトース分解酵素遺伝子の転写ができる。
これにより、ラクトース分解酵素遺伝子が発現し、ラクトース分解酵素がつくられる。
このようにして、ラクトースオペロンは、ラクトース分解酵素遺伝子を状況に応じて発現させている。
解説
問1.「重要事項のまとめ」を参照してください。
問2.実験1にて、野生株にXを添加すると、β-ガラクトシダーゼの活性が検出されたということは、Xを添加したことで、結合していたリプレッサーとオペレーターが離れてRNAポリメラーゼが転写を始めることができたことになります。
しかし、変異株AとBでは、Xを添加する前からβ-ガラクトシダーゼの活性が検出されたということなので、最初からリプレッサーとオペレーターが結合していないとわかります。ただし、ゲノム中の一ヶ所だけしか変異していないので、リプレッサーかオペレーターのどちらかだけの機能が失われていることになります。
そして、実験2でリプレッサーを発現するプラスミドを導入すると、変異株AではXを添加してはじめてβ-ガラクトシダーゼ活性がみられました。ということは、変異株Aでは、正常なリプレッサーがあれば通常どおりオペレーターと結合し、Xを添加するとリプレッサーとオペレーターが離れたことになりますね。
よって、変異株Aではリプレッサーの機能が失われていたとわかりますから、〔 エ 〕が正解ということになります。
問3.実験3の結果を見ると、野生株ではXを添加してはじめて緑色蛍光が観察されたので、Xを添加しないとリプレッサーとオペレーターが結合しているけれども、Xを添加するとリプレッサーがXと結合し、緑色蛍光タンパク質遺伝子の転写がされていくということがいえます。
変異株Aでは、問2で考えたとおり、リプレッサーの機能が失われていたんですから、リプレッサーがプラスミドのオペレーターと結合することはありませんし、Xを添加してもXと結合することもありません。ということは、リプレッサーにより転写がじゃまされることは考えにくいです。
よって、Xを添加しても添加しなくても、緑色蛍光タンパク質遺伝子の転写がされていくことになるので、〔 カ 〕も〔 キ 〕も両方とも+が入ります。
問4.さっきの問2の解説にもあったとおり、ゲノム中の一ヶ所だけしか変異していないという条件があるので、変異株Bでは変異株Aと同様、リプレッサーかオペレーターのどちらかだけの機能が失われています。
ただ、変異株Bでは、実験2でリプレッサーを発現するプラスミドを導入しても、Xの有り無し関係なくβ-ガラクトシダーゼ活性がみられました。ということは、変異株Bでは、正常なリプレッサーがあってもオペレーターと結合しないといえることとなります。
よって、変異株Bでは、リプレッサーではなくオペレーターのほうの機能が失われていたことになりますから、〔 オ 〕が正解ということになります。
問5.さっきの問4でも見たとおり、変異株Bではリプレッサーの機能には問題ありません。ということは、実験3で投入されたプラスミドのオペレーターには結合することができます。よって、リプレッサーにより緑色蛍光タンパク質遺伝子の転写が妨害されるので、〔 ク 〕には-が入ります。
しかし、Xを添加するとリプレッサーとオペレーターは離れますから、リプレッサーによる妨害はなくなり、緑色蛍光タンパク質遺伝子の転写がされていくこととなります。よって、〔 ケ 〕には+が入ることになります。