この問題でおさえておきたいこと
空腹時と満腹時それぞれ何のホルモンがどこからどこに分泌されて何のはたらきをするかをおさえる!
とくに空腹時は多くのホルモンが関係するので注意!
解答
問1
排出管を持たない。(9字)
問2
(1)(例)
副交感神経経由ですい臓のランゲルハンス島のB細胞にインスリンの分泌が指示される。インスリンは、筋肉など全身の細胞がグルコースを取り込むこと、肝臓がグリコーゲンを生成することを促し、血糖量を減少させる。(100字)
(2)(例)
交感神経経由ですい臓のランゲルハンス島のA細胞にグルカゴン、副腎髄質にアドレナリンの分泌が指示される。この2つのホルモンは、肝臓中のグリコーゲンをグルコースに分解することを促し、血糖量を増加させる。(99字)
問3
(1)A (2)B (3)C
重要事項のまとめ
・血糖量とは
血液中に含まれるグルコースの量を血糖量という
ヒトの正常な血糖量は100ml中100mg程度である
・低血糖のときの血糖量の調節
1)アドレナリン
間脳の視床下部が体内の低血糖を認識
↓
視床下部からの情報が交感神経を通って、副腎髄質(副腎の内側の層)に流れる
↓
副腎髄質からアドレナリンが分泌される
↓
肝臓に作用し、貯蔵してあるグリコーゲンをグルコースに分解していくのを促進する
分解してできたグルコースは血中に放出される
2)グルカゴン
間脳の視床下部が体内の低血糖を認識
↓
視床下部からの情報が交感神経を通って、すい臓の中にあるランゲルハンス島のA細胞に流れる
↓
A細胞からグルカゴンが分泌される
↓
肝臓に作用し、貯蔵してあるグリコーゲンをグルコースに分解していくのを促進する(つまり、アドレナリンと同じ)
分解してできたグルコースは血中に放出される
3)糖質コルチコイド
間脳の視床下部が体内の低血糖を認識
↓
視床下部から脳下垂体前葉に副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンが分泌される
↓
脳下垂体前葉がはたらくようになる
これにより、副腎皮質(副腎の外側の層)に副腎皮質刺激ホルモンが分泌される
↓
副腎皮質がはたらくようになる
これにより、副腎皮質から糖質コルチコイドが分泌される
↓
筋肉に作用し、筋肉中にあるタンパク質を分解してグルコースにする
4)その他
視床下部から脳下垂体前葉に成長ホルモン放出ホルモンが分泌→脳下垂体前葉から成長ホルモンが分泌され、肝臓にあるグリコーゲンがグルコースに分解される
視床下部から脳下垂体前葉に甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌→脳下垂体前葉から甲状腺に甲状腺刺激ホルモンが分泌→甲状腺からチロキシンが分泌され、肝臓にあるグリコーゲンがグルコースに分解される
↓
・高血糖のときの血糖量の調節
間脳の視床下部が体内の高血糖を認識
↓
視床下部からの情報が副交感神経を通って、すい臓の中にあるランゲルハンス島のB細胞に流れる
↓
B細胞からインスリンが分泌される
↓
全身の細胞に作用し、血液中のグルコースを細胞内に取り込むよう促す
肝臓のグリコーゲンの生成を促す
・糖尿病
血糖量が正常値より高く、尿にグルコースが含まれたまま排出されてしまう病気であり、2種類ある
1)Ⅰ型糖尿病
すい臓のランゲルハンス島のB細胞が破壊されていることでインスリンが分泌されないことが理由で引き起こされる
2)Ⅱ型糖尿病
インスリンは正常に分泌されるが、インスリンと細胞の受容体の結合がうまくいかない、シグナル伝達経路に異常があるなどインスリンの感受性が不足していることが理由で引き起こされる
解説
問1
問題文にあるとおり、ホルモンを分泌する器官を内分泌腺といいます。内分泌腺は血液中にホルモンを分泌し、そのホルモンが特定の器官(標的器官)の受容体に受け取られることで何らかの作用が起こります。よって、血液中に分泌するわけなので、排出管を必要としません。
一方、体外や消化器官内に汗や胃液などを分泌する器官を外分泌腺といいます。こちらは、汗や胃液などを直接流すものなので、排出管が必ず備わっています。
問2
「重要事項のまとめ」に書かれている内容を簡潔にまとめればじゅうぶんな解答が書けます。ちなみに、糖質コルチコイドの分泌は24時間の周期性があり、空腹時に分泌が促されるものではありません。問題文で与えられた語句の中になかったのは、おそらくそのためでしょう。
よって、空腹時に血糖量を一定に保つホルモンとしては、グルカゴンとアドレナリンについてだけにとどめるほうがよいでしょう。
解答のチェックポイント
- (1)の説明でインスリン、(2)の説明でグルカゴンとアドレナリンが分泌されることを述べているか
- 交感神経か副交感神経かどちらの神経がかかわっているかを示しているか(とくに(2)は指定語句にあったものを使うので絶対に必要)
- インスリン、グルカゴン、アドレナリンはどこから分泌されるかを解答に含めているか
- インスリンやグルカゴン、アドレナリンが分泌されることでどのようなことが促進されるかを述べているか
- インスリンやグルカゴン、アドレナリンが分泌されることで血糖量が増加するのか減少するのかを(1),(2)それぞれで示しているか
問3
(1)食事摂取後は血糖量が上がりますが、それによりインスリンが分泌されていること、インスリンが分泌されたことで血糖量が下がり、インスリンの濃度も下がっていること、そして100ml中100mgほどの血糖量に落ち着いていることが読み取れるので、Aが健常人のグラフです。
(2)問題文や「重要事項のまとめ」にもあるとおり、糖尿病には2種類のものがあります。問題文で問われているのはⅡ型糖尿病のことです。この糖尿病はインスリンは問題なく分泌されているわけですから、インスリンの濃度が高いBのグラフが示しているといえます。
(3)Ⅱ型糖尿病ではインスリンの分泌に問題はありませんから、その患者にインスリンを投与しても意味がありません。インスリンの投与に意味があるのは、そもそもの分泌量が少ないⅠ型糖尿病の患者です。インスリンの濃度が一貫して低いCのグラフの患者がⅠ型糖尿病の患者とわかります。