この問題でおさえておきたいこと
性別によって異なる表現型となっていたら、性染色体がからんだ遺伝!
性染色体とその染色体上にある遺伝子についてどれを母親から、どれを父親から受け継いだか注意して考える!
解答
問1
雄…黄体色
雌…茶体色
問2
$a$と$d$
問3
雄…$X^aYBb$
雌…$X^AX^aBb$
問4
3:2:3
問5
雄…赤眼・茶体色,赤眼・黄体色,白眼・茶体色,白眼・黄体色
雌…赤眼・茶体色,白眼・茶体色
重要事項のまとめ
・性染色体上の遺伝子の遺伝
性別が$XY$型であれば$X$染色体、$ZW$型であれば$Z$染色体には、性決定とは関係ない遺伝子もある。その遺伝子は性と深い関わりをもって遺伝するので伴性遺伝という。
・伴性遺伝における遺伝子
$X$染色体のところに遺伝子を書いていくことで考える
例:
雌は$X^AX^A$や$X^AX^a$なら顕性、$X^aX^a$なら潜性
雄は$X^AY$なら顕性、$X^aX^a$なら潜性
このように、雄は$Y$染色体を必ず父親から遺伝されるので、顕性か潜性になる遺伝子は母親から遺伝される染色体で決まる!
解説
問1 $c$が黒たん体色,$d$が黄体色とさせる遺伝子になるわけなので、$C$や$D$の遺伝子があればその体色にはならないことになります。交雑実験(4)より、性別によって体色がちがうので、体色は伴性遺伝によるものとわかります。よって、遺伝子$C$($c$)と$D$($d$)の遺伝のしかたは次の3通りのうちのどれかといえます。
① $C$($c$)と$D$($d$)はともに$X$染色体上にある
② $C$($c$)は$X$染色体上にあり、$D$($d$)は常染色体上にある
③ $D$($d$)は$X$染色体上にあり、$C$($c$)は常染色体上にある
「雑種第一世代($F_1$)を除いてすべて純系」と問題文にありますから、遺伝子型についてもそれにしたがって考えましょう。
まず①のパターンだと仮定すると、交雑実験(3)では茶体色の雄は$X^{CD}Y$、黒たん体色の雌は$X^{cD}X^{cD}$とおけるので、$F_1$の雄は$X^{cD}Y$となるので黒たん体色となり、「茶体色」という記述と矛盾しますから、このパターンとはいえません。
そして②のパターンだと仮定すると、交雑実験(4)の黒たん体色の雄は$X^cYDD$、黄体色の雌は$X^CX^Cdd$とおけます。そうすると、$F_1$の雄は$X^CYDd$、$F_1$の雌は$X^CX^cDd$となるのでどちらも茶体色となって結果とくいちがいますから、このパターンの遺伝ではありえません。
よって、③のパターンしかないということになります(実際、このパターンならば交雑実験(3)や交雑実験(4)の結果にも矛盾しません)。③のパターンならば、問1にある野生型(茶体色)の雄の遺伝子型は$X^DYCC$、黄体色の雌の遺伝子型は$X^dX^dCC$です。
なので、$F_1$の雄については$X^dYCC$という遺伝子型なので黄体色、雌については$X^DX^dCC$という遺伝子型なので茶体色ということになります。
問2 体色については問1で考えました。眼色も性別によって異なるという実験結果があるので伴性遺伝によるとわかりますので、同じように考えてみましょう。
まず、$A$($a$)と$B$($b$)がともに$X$染色体上にあるパターンを仮定すると、交雑実験(1)で白眼の雄は$X^{aB}Y$、褐色眼の雌は$X^{Ab}X^{Ab}$とおけるので、$F_1$の雄は$X^{Ab}Y$となるので褐色眼となり、「すべて赤眼」という記述と矛盾します。
次に「$B$($b$)は$X$染色体上にあり、$A$($a$)は常染色体上にある」というパターンだと仮定すると、交雑実験(1)の白眼の雄は$X^BYaa$、褐色眼の雌は$X^bX^bAA$とおけます。すると、$F_1$の雄は$X^bYAa$となるので褐色眼、$F_1$の雌は$X^BX^bAa$となるので赤眼となり、やはり「すべて赤眼」という記述と矛盾します。
よって、「$A$($a$)は$X$染色体上にあり、$B$($b$)は常染色体上にある」パターンだと考えられますから、$a$と$d$は$X$染色体という同じ染色体上にあることがわかります。そして$b$と$c$は常染色体上にあるとわかりましたが、その2つが同じ常染色体上に存在するかもしれませんから、それを調べましょう。
交雑実験(3)より、褐色眼・茶体色の雄は$bbCC$、赤眼・黒たん体色の雌は$BBcc$という遺伝子型なので、交雑実験(3)で生まれた$F_1$の雌の遺伝子型は$BbCc$という遺伝子型で、それと交雑させる褐色眼・黒たん体色の雄の遺伝子型は$bbcc$です。
その交雑をさせた結果が$〔BC〕$:$〔Bc〕$:$〔bC〕$:$〔bc〕$ = 1:1:1:1となっていて独立の法則が成立しています。以上より、$b$と$c$は同じ染色体上にはありませんから、$a$と$d$だけが同じ染色体上にあります。
問3 問2の解説より、交雑実験(2)の褐色眼の雄の遺伝子型は$X^AYbb$、白眼の雌の遺伝子型は$X^aX^aBB$です。$F_1$の雄は父親側から$Y$と$b$、母親側から$X^a$と$B$を受け継ぐので$X^aYBb$という遺伝子型になります。$F_1$の雌は父親側から$X^A$と$b$、母親側から$X^a$と$B$を受け継ぐので$X^AX^aBb$という遺伝子型になります。
問4 問3で求めたとおり、交雑実験(2)の$F_1$の雌(赤眼)の遺伝子型は$X^AX^aBb$です。そして褐色眼の雄の遺伝子型は$X^AYbb$です。よって、父親側と母親側から受け継ぐ遺伝子は次のような組み合わせとなります(横軸に母親側からの遺伝子、縦軸に父親側からの遺伝子を示しています)。
$X^AB$ |
$X^Ab$ |
$X^aB$ |
$X^ab$ |
|
$X^Ab$ |
$X^AX^ABb$ |
$X^AX^Abb$ |
$X^AX^aBb$ |
$X^AX^abb$ |
$Yb$ |
$X^AYBb$ |
$X^AYbb$ |
$X^aYBb$ |
$X^aYbb$ |
よって、赤眼:白眼:褐色眼 = 3:2:3です。
問5 まず眼色について問4と同じやりかたで考えます。交雑実験(5)の雄の遺伝子型は$X^AYbb$,雌の遺伝子型は$X^aX^aBB$ですから、$F_1$の雌の遺伝子型は$X^AX^aBb$です。それと白眼の雄、つまり遺伝子型が$X^aYBB$と交雑させるわけですから、
$X^AB$ |
$X^Ab$ |
$X^aB$ |
$X^ab$ |
|
$X^aB$ |
$X^AX^aBB$ |
$X^AX^aBb$ |
$X^aX^aBB$ |
$X^aX^aBb$ |
$YB$ |
$X^AYBB$ |
$X^AYBb$ |
$X^aYBB$ |
$X^aYBb$ |
雄と雌両方で赤眼・白眼の2通りが考えられます。体色についてはどうでしょう?交雑実験(5)の雄の遺伝子型は$X^DYcc$,雌の遺伝子型は$X^dX^dCC$ですから、$F_1$の雌の遺伝子型は$X^DX^dCc$です。それと茶体色の雄、つまり遺伝子型が$X^DYCC$と交雑させるわけなので、
$X^DC$ |
$X^Dc$ |
$X^dC$ |
$X^dc$ |
|
$X^DC$ |
$X^DX^DCC$ |
$X^DX^DCc$ |
$X^DX^dCC$ |
$X^DX^dCc$ |
$YC$ |
$X^DYCC$ |
$X^DYCc$ |
$X^dYCC$ |
$X^dYCc$ |
この表より、雌は茶体色のみとわかりますが、雄は茶体色と黄体色の2通りとわかります。よって、雄は「赤眼・白眼」と「茶体色・黄体色」を組み合わせた2×2 = 4通りが生まれると考えられます。そして、雌については「赤眼・茶体色」か「白眼・茶体色」の2通りが生まれるといえます。