この問題でおさえておきたいこと
自然浄化によって、水中にふくまれる物質や生物の数がどう変化するかがポイント!
解答
問1
(A) ③ (B) ⑤
問2
(C) ② (D) ③ (E) ① (F) ④
問3(例)
上流では、汚水が流入したことで水中に届く光の量が減るため、Eは減少する。下流では、アンモニウムイオンが硝化作用で硝酸イオンとなることで窒素同化に利用され、さらに水の透明度が回復して光が届くようになるため光合成が活発になるので、Eは増加する。(120字)
問4
(1)生物濃縮
(2)(例)生体から排出されにくいこと。(14字)・環境中で分解されにくいこと。(14字)
重要事項のまとめ
・水質汚染と自然浄化
汚水が川や海などに流れこんでいくと富栄養化が起こり、赤潮やアオコが起こるなど、水質汚染がすすむ。
しかし、その汚水にふくまれる有機物は水中の生物によって分解され、もとの状態にまで浄化されていく。このはたらきを自然浄化という。
・自然浄化による個体数の変化
上流に汚水が流れこむと、汚水中の有機物を分解する細菌が増える
↓
その細菌を捕食する原生動物が増える
↓
下流に行くにつれて、分解されていない有機物は減る
細菌は減り、清水性生物(水質がよくないと生息しにくい生物)の数は多くなる
・自然浄化による物質量の変化
上流に汚水が流れこむと、細菌の有機物分解が起こる
=有機物が分解されてアンモニウムイオン、そして硝酸イオンなどが増える、細菌が酸素を消費するため酸素量は減る
↓
硝酸イオンを吸収する藻類が増える
↓
藻類の光合成によって溶存酸素が増える
※水中の有機物を分解する時に必要な酸素の量をBOD(生物学的酸素要求量)といい、汚水が流れこんで有機物が多くなっている上流ではその数値が高く、分解がどんどんされた後の下流ではその数値は低くなっているということもおさえておきましょう。
解説
問1
(A)は汚水が流入した直後に増えたものですから、汚水中の有機物にあたると考えることができます。そのような有機物には有機窒素化合物も含まれていて、(A)に遅れて$\ce{NO3-}$が増えていることから、$\ce{NH4+}$→$\ce{NO2-}$→$\ce{NO3-}$という硝化作用の流れを考えて、(A)は$\ce{NH4+}$と考えることができます。
(B)については上流から下流にいくにつれて増えています。一方、水中の有機物を分解する時に必要な酸素の量であるBODは減っています。つまり、下流にいくにつれて有機物が分解されて水が浄化され、藻類の光合成により酸素量が増えていることを示していると考えられますから、(B)は酸素にあたります。
問2
(C)は汚水が流入した直後に増えていますから、汚水中の有機物を分解しながら増殖する細菌類と考えることができます。(D)も(C)にやや遅れて増えていますから、水が汚れているうちに増えることができる生物だといえます。イトミミズは、非常に汚れている水の指標生物ですので、(D)はそのイトミミズとわかります。
(E)は細菌類などが増えたのちに増えた生物ですので、「重要事項のまとめ」にあるとおり、硝化によって生じた硝酸イオンを利用して増殖した藻類とわかります。そして、水が浄化されて細菌類が減っていくのと反比例して増えている(F)が清水性動物です。
問3
(E)は藻類のことですから、藻類がなぜいったん減少したのかということ、そしてなぜ下流にいくにつれて増加するのかということの2点を述べる必要があります。
汚水が流入するということは水が汚れるということですから、それによって水中に光が届きにくくなります。そうなると藻類は光合成ができなくなり、生育できなくなってしまいますから、水の汚れがひどい上流では個体数が減ってしまうわけです。
しかし、自然浄化がすすんだ下流では、硝酸イオンが多くあるので藻類にとって窒素同化がしやすい環境になっています。さらに光が水中に入りやすくなっているので、光合成も活発になります。藻類が増えやすくなるこれらの条件があるから、下流にいくと増加しているわけです。
解答のチェックポイント
- いったん減少する理由として、水中に入る光の量が減ったことを述べているか
- その後、増加に転じる理由として、窒素同化がしやすい環境ができあがっていることを述べているか
- 窒素同化がしやすいのは、硝化作用によって硝酸イオンが多く生じたことが理由であることにふれているか
- 増加に転じる別の理由として、自然浄化が進んだことで水中に入る光の量が増えたことを述べているか
問4
(1)外界から取り込んだ物質が生体内に取り込まれ、環境中のときよりも高い濃度で蓄積される現象を生物濃縮といいます。生物濃縮を起こす物質としては、水俣病の原因物質である有機水銀、イタイイタイ病の原因物質であるカドミウム、DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)やPCB(ポリ塩化ビフェニル)などがあります。
(2)まず、生体から排出されやすい物質であれば、なんらかの形で体外に出ることになり、生体内で濃縮されていくことはありません。よって、生体外への出にくさが大きな特徴のひとつといえるでしょう。ちなみに、生体内の脂質に蓄積される傾向があるので、脂質性であることを特徴としてもよいでしょう。
そして、すぐに分解される物質であれば、消化などをされて生体内に蓄積されることにはならないはずです。つまり、すぐに分解されずに安定した物質であることも特徴のひとつといえます。「環境中で安定している」「生体内で代謝されにくい」などのように答えるとよいでしょう。