この問題でおさえておきたいこと
ゲノムとは何か、ゲノムと遺伝子の関係はどのようなものかをおさえよう!
遺伝子の発現についても理解しよう!
解答
問1 カ…③ キ…⑦
問2 ⑤
問3 ①
重要事項のまとめ
・ゲノムとは?
生物に含まれる、その生物になるために必要なすべてのDNAのセットをゲノムという。
DNAは染色体に含まれていて、ヒトの場合だと染色体は46本存在する。
ヒトのゲノムは塩基対の数でいうと約30億塩基対であるが、そのうち遺伝子の数は約2万2千ほどで、ゲノム全体のうち約1.5%ほどしかない。
・遺伝子の発現
受精卵がもっている遺伝情報は体細胞分裂時に複製・分配されるので、基本的にすべての細胞は受精卵と同じ遺伝情報をもっている。ただし、すべての細胞において、すべての遺伝子がはたらいているわけではなく、それぞれの組織や器官ではたらく遺伝子が決まっている。
DNAの遺伝子情報にもとづいてタンパク質が合成されることを遺伝子の発現といい、その結果、細胞が特定の機能をもつようになることを細胞の分化という。
例:赤血球をつくる細胞では、ヘモグロビン遺伝子の情報にもとづいてヘモグロビンというタンパク質が合成され(発現)、それによって赤血球ができあがる(分化)
これらを示す例
1.ショウジョウバエなどのだ腺染色体
だ腺染色体を染色したときにみられる横縞は遺伝子の位置と対応していて、パフとみられるふくらみでは遺伝子の転写がされている
=その位置にある遺伝子がはたらいている
また、成長によってパフの位置は変化する
=どの時期にどの遺伝子がはたらくかが変化する
2.アフリカツメガエルの核移植
ガードンによる実験で、カエル(黒色)の未受精卵の核を破壊し、別のオタマジャクシ(白色)の核を移植した
↓
その卵は黒色ではなく、移植した核の情報(白色)を引き継ぎ、白色のカエルとして成長した
=分化の進んだ体細胞の核にも、体をつくるのに必要なすべての遺伝情報が入っている
※この原理を応用して、まったく同じ遺伝子情報をもった別の個体(クローン)をつくることが可能になるわけです。
解説
問1 「重要事項のまとめ」にあるとおり、特定の遺伝子が発現することでタンパク質が合成され、組織ごとの細胞ができあがっていきます。また、だ液に含まれる、澱粉を分解する酵素はアミラーゼです。
問2 ①:個々人の間では、ゲノムの約1000塩基に1つの割合で違いがあり、それが個々人の多様性になっているわけです。よって、どの個々人の間でもゲノムの塩基配列は同一というわけではありません。
②:「重要事項のまとめ」にあるとおり、基本的にすべての細胞は受精卵と同じ遺伝情報をもっていますので、「塩基配列が著しく異なる」というのは誤りです。
③:ゲノムの遺伝情報(DNA)は間期に複製されて2倍になりますので、前期で2倍になるわけではありません。
④:「重要事項のまとめ」にあるとおり、パフではその位置にある遺伝子を転写しているわけなので、全遺伝子を転写してはいません。
⑤:「重要事項のまとめ」にあるとおり、それぞれの組織や器官ではたらく遺伝子が決まっていて、その遺伝子が発現してタンパク質がつくられるわけなので、この文の内容は正しいです。
問3 翻訳領域はゲノム全体のうちの1.5%ですから、塩基対の数は30億×0.015 = 4500万です。これが遺伝子の部分にあたるわけですが、「重要事項のまとめ」にあるとおり、ヒトの遺伝子の数は約22,000ですから、遺伝子1つあたりの塩基対の数は4500万÷22,000 ≒ 2045です。よって、 チ に入るのは2千です。
そして、ゲノム全体の30億塩基対の中に、22,000個の遺伝子があるわけですから、1個の遺伝子は平均すると30億÷22,000 ≒ 13万6千塩基対の中に存在することになります。 ツ には、これに近い数字を入れたらいいと考えられるので、選択肢の中では15万がよいということになります。