この問題でおさえておきたいこと
律令体制における中央と地方の組織、地方区分、貴族の特権を理解しよう!
とくに律令体制における八省は重要な事項!
解答
1.ロ 2.ハ 3.イ
4.ロ 5.ニ 6.イ
7.ハ 8.ニ
解説
1.イ:皇極天皇ではなく孝徳天皇をたてて中大兄皇子は国政を刷新したので、この文は誤りです。
ロ:下線部aは大化の改新後のことを指しており、その時期にこの文に書かれたことがなされたので、この文は正しいです。
ハ:「臣・連・伴造・国造・村首の~」という書き出しから、示された史料は改新の詔と判断できますが、改新の詔に書かれた記述は「臣・連・伴造・国造・村首の所有る部曲の民、処所の田荘を罷めよ」です。つまり、臣や連など豪族が所有する私有民は子代ではなく部曲なので、これは誤りです。
基本史料を扱った問題では、空欄をうめるという形で出されても対応できるように、反復して確認しておくとよいでしょう。そのようにすれば、このような問題でも対応することができます。
2.下線部bに「天武・持統朝にかけて」とあるので、この時期とちがう出来事が関連しないものとみなせます。ハは冠位十二階の内容で推古朝のことなので、これだけが時期がちがいます。
3.養老律令を制定したのは、「ポイントのまとめ」にあるとおり藤原不比等ですが、施行したのは757年に藤原仲麻呂によってでした。
4.「ポイントのまとめ」にて八省が示されていますが、教部省だけがありませんね?教部省は明治初期に宗教行政を担当していた機関です。
5.「ポイントのまとめ」にもあるとおり、公卿など身分が高い人物であっても、八虐については特権がありませんでした。一般的な刑罰については位階のはく奪か罰金で減免されることはありましたが、八虐についてはそれは許されませんでした。
6.問題文にある「官吏を監察する」をキーワードに考えれば、「ポイントのまとめ」にあるとおり、弾正台が答えとわかります。
7.「ポイントのまとめ」に示された「畿内」には近江だけがありませんね?近江は東山道の国です。
現在の都道府県のどこからどこまでが何に属しているかは、資料集などで確認するようにしておきましょう。
8.里長は農民の代表が任命されるもので裁判権はありませんでした。「ポイントのまとめ」のとおり、裁判権は郡司以上の官職に段階的に認められていました。
ポイントのまとめ
・律令とは
律は刑法、令は行政法・民法にあたる。
701年(文武天皇の時代)に藤原不比等・刑部親王らが大宝律令を、718年(元正天皇の時代)に藤原不比等らが養老律令を作成した。
・律令の官制
1)中央
二官八省一台五衛府からなる。
二官とは、祭祀(儀式など)をつかさどる神祇官と一般政務をつかさどる太政官のことである。
太政官の中で、トップの役職が太政大臣で、その次に位が高いのが左大臣、その次が右大臣、…となっている。
その太政官の下に八省とよばれる8つの役所が置かれた。
- 中務省…
詔勅の起草(天皇の命令作りの原案作成)を担当
=最も権力が強い - 式部省…
役人の人事や教育を担当 - 治部省…
仏教や外交、大仏などを担当 - 民部省…
戸籍や税金の徴収などを担当 - 兵部省…
軍事を担当 - 刑部省…
裁判や刑の執行などを担当 - 大蔵省…
財政を担当 - 宮内省…
宮中に関する事務を担当
一台とは、役人の監察をする弾正台のことである。
五衛府とは、都の警備をする組織のことで、衛門府・左衛士府・右衛士府・左兵衛府・右兵衛府があった。
2)地方
全国を多くの国に分け、さらにそれを郡、里、戸と細かく分けて支配した。
それぞれの国には国司が中央から派遣され、役所である国衙を拠点に統治した。
それぞれの郡においては、地元の有力豪族から郡司を任命し、役所である郡家を拠点に郡内を統治させた。
また、それぞれの里において、有力農民から里長を任命し、租税の取り立てなどをおこなわせた。
ただし、京都では京職、摂津では摂津職、北九州では大宰府という特別な役職を置いて統治した。
3)地域区分
- 畿内…
大和・山城(背)・摂津・河内・和泉 - 七道…
東海道・東山道・北陸道・山陰道・山陽道・南海道・西海道
4)官職
役人は位階を与えられ、その位階に応じて官職が与えられた。これを官位相当制という。
(例:一位の位階ならば太政大臣、二位の位階ならば左大臣か右大臣など)
また、すべての役所の幹部は長官・次官・判官・主典の4階級に分けるという四等官制もしかれた。
・刑罰
刑罰の種類として、笞(細い棒でたたく)・杖(太い棒でたたく)・徒(懲役刑)・流(島流し)・死(死刑)の五刑があった。
地方では郡司が笞罪までの裁判権をもち、それより上の官職が段階的に裁判権を与えられていた。
これとは別に、天皇・国家・尊属などに対する罪は八虐として、重罪とされた。
・身分制度
1)身分
大きく分けると良民と賤民の2つの身分があった。
良民には官人、一般農民である公民、特殊な技術者集団である品部や雑戸に所属する人々(雑色人と総称される)が分類された。
賤民には5種類の分類(五色の賤)があった。
その5種類とは陵戸(大王家の墓を警備)、官戸・公奴婢(朝廷の官有民)、家人・私奴婢(豪族の私有民)である。
2)貴族の特権
- 親の位階が高ければ子も一定の位階が与えられる蔭位の制がしかれていた。
- 庸・調・雑徭などの税負担が免除された。
- 犯罪をおかしても、位階のはく奪か罰金によって実刑を免れることができる。
(ただし、八虐については減免されない)