この問題でおさえておきたいこと
惣領制や分割相続、武芸の鍛錬がポイント!
土地支配では領主と地頭の間の問題をどう解決していったかをおさえる!
解答
問1 ⑥ 問2 ① 問3 ②
問4 ② 問5 ② 問6 ①
解説
問1 直営地の種類を選べばいいということになります。佃・正作・用作は荘園内で下人に耕作させた直接経営の土地で、門田は武士が家族や下人に耕作させた居住地付近の土地をいいます。
問2 「ポイントのまとめ」の説明を参照してください。
問3 Xの内容は「ポイントのまとめ」にあるとおり正しいです。鎌倉時代では女性の地位は低かったわけではなく、女性の御家人や地頭も存在していました。
Yの内容は「ポイントのまとめ」にあるとおり誤りです。鎌倉時代の末期には単独相続に切り替わっていくようになり、室町時代では完全に単独相続が主流になっていきました。よって、「中世を通じて」主流であったということはありません。
問4 馬に乗った人が的にしているのが笠であること、その的にしているのが一定間隔に置かれた複数の笠ではなく、一つだけの笠であることを根拠に、笠懸をしている絵だと判断できます。ちなみに、「伝馬」は鎌倉時代以後、宿駅で公用にした馬のことをいいますので、武芸の名前ではありません。
問5 訴状の前半に「カクノコトクノ人フヲ、チトウノカタエせメツカワレ候ヘハ」とあります。おおざっぱな現代語訳にすると「地頭が様々な仕事を私たち農民にさせようとするので」という内容ですので、Xの内容は正しいです。
また、訴状の後半では「メコトモヲヲイコメ、ミヽヲキリ、ハナヲソキ」とありますが、これは地頭が農民に向かって「おまえらの妻や子どもたちを捕らえて、耳を切り、鼻を削ぐぞ」と脅してくるという告発です。よって、妻子の処罰を求めているわけではありませんので、Yの内容は誤りです。
この紀伊国阿弖河荘百姓訴状は地頭の横暴を農民が告発するというもので、重要史料です。資料集でだいたいの内容を確認しておくとよいでしょう。
問6 荘園領主が地頭に納入をするのではなく、地頭が荘園領主に年貢の納入をするのが地頭請です。荘園領主と地頭の関係が逆になっている①が不適切な文です。
ポイントのまとめ
・武士の生活
1.住居や土地
開発領主の系譜をひいているので、先祖伝来の土地に館を建てて生活
(周囲には堀・塀などをめぐらせる)
館の周辺に年貢のかからない直営地をもうけ、下人とよばれる下層農民に耕作させる
武士は地頭として荒野の開発・農民からの年貢の徴収をし、国衙や荘園領主に納め、取り分として加徴米などを得た
=これが武士の収入
2.血縁
血縁集団の統率者を中心とする体制(惣領制)で結束
- 宗家(本家)と分家の集団(一門・一家)で構成
分家は宗家(本家)の命令に従う - 宗家(本家)の長を惣領(家督)という(一族の首長となる)
惣領以外の子弟は庶子という
所領などの財産は庶子も含む一族の子弟たちに相続される分割相続が主流(女性も相続の対象)
→分割相続のくり返しで所領の細分化が問題になり、鎌倉時代の末期には単独相続に
嫁入婚が一般的な結婚形態
3.武芸の重視
騎射三物がさかんに行われる
- 犬追物…放された犬を馬上から射る
- 笠懸…馬上から的の代わりにした笠を射る
- 流鏑馬…走っている馬から、一定間隔に置いた複数の的を射る
巻狩(広い野原に獣を追い出し、弓矢で射殺する大規模な狩猟)も行われる
武士の道徳は、「武家のならい」「兵の道」「弓馬の道」などとよばれ、これが後世の武士道へとつながる
・武士の土地支配
幕府権力の拡大にともない、地頭の勢力も強力に
↓
武士は耕地と支配権の拡大を求めて活動
承久の乱後は、畿内や西国地方にも東国出身の武士たちが地頭に任命
→荘園領主や近隣の他の武士との紛争が多発・拡大
↓
紛争への対処
- 地頭請
…荘園領主が荘園の経営を地頭にすべて任せる代わりに、地頭に一定の年貢納入を請け負わせる
(=荘園領主は一定の年貢さえ払ってもらえるのなら問題にしないという姿勢) - 下地中分
…土地自体を地頭と荘園領主で折半し、それぞれで自分の土地・住民を支配し、互いに干渉しない
(=半分あげるかわりに残りの半分を自分のものとして守るという姿勢)