この問題でおさえておきたいこと
地方分権一括法の改革の内容、地方自治における収入の種類などの重要項目は対比でおさえよう!
解答
問1 ⑦ 問2 ③ 問3 ②
問4 ② 問5 ①
解説
問1 aについて、図の(ア)事務は「都市計画の決定」や「飲食店営業の許可」があるので自治事務です。自治事務は地方公共団体が主体的に行える事務ですが、これは法律で規定されたものであり、憲法に列挙されているわけではありません。つまり、aの文は誤りというわけです。
bについて、(イ)事務は「戸籍事務」や「旅券の交付」があるので法定受託事務です。法定受託事務は「ポイントのまとめ」にあるとおり、本来は国が行う事務を地方公共団体に委託したものです。よって、bの文も誤りです。
cについて、自治事務は地方公共団体が主体的に行うものなので、本来さほど国が関与するべきものではありません。そのため、法定受託事務に比べて国が関与する手段は限定的となるため、cの文は正しいです。よって、cの文のみが正しく、aとbの文は誤りとしている⑦が正解です。
問2 2000年に施行された地方分権一括法は、国と地方の関係について「上下・主従」だった関係から「対等・協力」の関係へと変えていくことを目的としていました。
また、「ポイントのまとめ」のとおり、都市計画の決定は自治事務の一つであり、国の関与について不服があるときに地方自治体が申し立てをする機関は国地方係争処理委員会です。ちなみに、国地方係争処理委員会による審査の結果に不服があるとき、地方公共団体は高等裁判所に訴訟を提起することができます。
問3 まず、L市は依存財源の構成比が最も低いわけではないとあります。「ポイントのまとめ」のとおり、依存財源は地方交付税交付金や国庫支出金などのことなので、その合計が最も小さい③ではないことがわかります。
次に、「依存財源のうち一般財源よりも特定財源の構成比が高くなって」いるとありました。「ポイントのまとめ」の説明より、依存財源のうち一般財源とは地方交付税交付金、特定財源は国庫負担金のこととわかります。国庫負担金のほうの割合が小さい④はこれで不適といえます。
最後に、文章の末尾で「自主財源の構成比は50パーセント以上」とありました。「ポイントのまとめ」のとおり、自主財源とは地方税のことなので、残った選択肢のうちそれが50パーセント以上となっている②が正解です。
問4 「ポイントのまとめ」にある「三位一体の改革」の説明には②だけがふれられていませんので、これが適当でないものということとなります。
問5 ア については、「ポイントのまとめ」にもあるとおり「コンパクトシティ」が入ります。日本では札幌市や富山市が政策としてコンパクトシティを導入しています。ちなみに、ミニマム・アクセスは、ウルグアイ・ラウンドで義務づけられた米の最低輸入量のことです。
イ については「ポイントのまとめ」の説明より、ふるさと納税のことを述べていることがわかります。ちなみに、独自課税は、地方が条例によって定めた税のことで、東京都の宿泊税などが例としてあげられます。
ポイントのまとめ
・地方分権改革
1)事務面での改革
かつては地方自治体の仕事のほとんどが、国から依頼されて国の命令にしたがって行うという機関委任事務であった
↓
2000年に地方分権一括法が制定され、機関委任事務は完全に廃止
地方自治体が行う仕事は次のような分類となる
- 自治事務…
地方自治体が自主的に行う仕事
(例:都市計画、飲食店・病院などの開業許可など) - 法定受託事務…
国が地方に依頼し、地方の判断のもと行う仕事(国からの委託ではあるが、国からの監督権もない)
(例:国道の管理、パスポートの発行、戸籍事務など)
また、地方分権一括法の制定により、国から地方自治体への関与をめぐって対立が起きたときは、地方自治体は国地方係争処理委員会に不服申し立てができるようになった
2)財政面での改革
地方自治体の収入としては主に次のようなものがある
- 地方税…
住民から税金として集めて、自由に使うことのできるお金 - 地方交付税交付金…
地方公共団体どうしの格差解消のために、国の税金から地方に配られるお金で、使いみちは地方公共団体の自由に決めることができる - 国庫支出金…
国から地方に配られるお金で、使いみちは国から指定される - 地方債…
地方公共団体の借金であり、都道府県が借金するときは総務省、市町村が借金をするときは都道府県との事前協議が必要である
地方税は地方公共団体が自主的に調達するものなので自主財源といい、それに対して地方交付税交付金や国庫支出金などは国の交付に依存したものなので依存財源という
かつては歳入の中で依存財源の割合が多く、地方税は30%ほどの割合しかなかったので三割自治と言われていた
↓
三位一体の改革の実施
国の税金の一部を地方税へと移行、地方交付税交付金の見直し、国庫補助金の削減
↓
2022年現在、歳入の中で地方税の割合は45%ほどに上昇
※上に列挙した地方自治体の収入(財源)のうち、地方税や地方交付税交付金などは使いみちを独自に決めることができるものなので一般財源、それに対して国庫支出金などは国から使いみちを決められるものなので特定財源といいます。
・地域社会の再生
1)行政的な変化
地方交付税交付金を減らすため市町村合併特例法が制定、全国にあった3232ほどの市町村がおよそ1718にまで減少(平成の大合併)
さらに、いくつかの都道府県が合併して政治をさせるという道州制も議論されている
2002年には構造改革特別区域法が制定され、国に申請して構造改革特区に指定されれば、国からの規制を実験的に特別にゆるくしてもらって自由に事業をおこすことができるようになった
(その規制緩和がうまくいけば全国に適用させることができ、日本全体の活性化につながる)
2)その他の変化
少子高齢化による人口減少が進み、地方都市の商店街は閉まったままの店が多く並んでいるシャッター街となっているなど、かつての活況が維持できなくなっている
↓
地方都市の中心部に、商業や医療、住まいなどの生活機能を集めたコンパクトシティの必要性が議論されている
出身地でなくても自分の好きな地方公共団体に寄付することで、金額に応じて所得税や住民税が軽減され、その地方公共団体の特産品などを返礼品としてもらうことができるふるさと納税というしくみもつくられている