この問題でおさえておきたいこと
イスラム教の思想をユダヤ教・キリスト教と比べて理解しよう!
イスラム教徒の規範が何かと六信五行もおさえる!
解答
問1 アラビア語 問2 エ
問3 (例)預言者であるムハンマドがアッラーから受けた啓示がまとめられた唯一完全な啓典であり、日常生活まで規定しているもの。(56字)
問4 (例)原罪が許されていなかったり、イエスのみが原罪を背負わされたという解釈をせず、イスラム教では人間に背負った原罪はなく、アッラーへの絶対服従をすれば、その慈悲深さにより幸福に生きられることが示されている。(100字)
問5 天命、預言者、来世
問6 貧者に対する喜捨、メッカへの巡礼
解説
問1 イスラム教は中東地域で成立したことから考えると、容易に答えられる問題でしょう。
問2 涅槃や解脱は仏教用語です。また、イデアはプラトンの思想についての用語なので、旧約聖書とは関係がありません。エロースもイデア同様、プラトンの思想についての用語です。
問3 「ポイントのまとめ」にあるとおり、コーランは啓典であり、イスラム教徒にとっては唯一完全な啓典です。ムハンマドとの関係を中心に論じないといけませんから、コーランがなぜそれほど重要視されているのかの理由を説明すべきと判断できますね。もちろん、ムハンマドがアッラーから受けた言葉が書かれているからです。
そして、コーランはイスラム教徒の行動の規範にもなっています。唯一完全な啓典であることとその理由だけでは60字よりかなり少ない字数になると思いますから、このことについても触れるといいでしょう。
解答のチェックポイント
- イスラム教徒にとって重要な啓典であることにふれているか
- コーランが重要な啓典である理由として、ムハンマドがアッラーから受けた啓示が書かれていることを説明しているか
- コーランがイスラム教徒の生活の規範となっていることにふれているか
(シャリーアの根拠となっていることでも可)
問4 原罪のことについて説明しないといけませんが、キリスト教とちがい、イスラム教では原罪はないとされていますから、このことについてふれないといけません。文章から読み取れる内容を書かないといけませんから、ほかに読み取れる内容を探しましょう。
原罪のことについてキリスト教と対比して考えましたから、同じようにキリスト教と対比できる内容だと都合がいいですね。その観点から探すと、アッラーに服従すれば痛い目には遭わない、すなわち幸福に生きることができることがあります。このことについても論述するといいでしょう。
解答のチェックポイント
- ほかの宗教との対比を使って説明しているか
- キリスト教と違って、イスラム教には原罪がないことにふれているか
- アッラーへの絶対服従を示せば、幸福に生きられることにふれているか
ポイントのまとめ
・イスラム教の基本事項
預言者…ムハンマド(神の啓示(神が真理を人間に示すこと)を受けることで)
聖地…メッカ
聖典…コーラン(クルアーン)
・イスラム教の特徴
1.神はアッラー
(特徴)
唯一神:生まず、生まれず、一人として並ぶ者なし(他に神がいるはずがない)
超越神:形として表せない→偶像製作・崇拝の禁止
人格神:人間と同じように意思や感情がある
2.アッラーへは絶対服従、ただし神の前ではみな平等
原罪なし
↓
ユダヤ教の選民思想を否定
キリスト教の「イエスは神の子」という思想を否定(神の前ではみな平等という思想に反する)
3.信奉する神やコーランの中身は、もとは旧約聖書
最後の審判にて、これまでの死者も含めて、誰が天国に行くか地獄に行くかが決定されるという思想も同じ
↕
モーセもイエスも正しく民を導くことができなかったから、神が最後の預言者としてムハンマドを選んだ
(ユダヤ教徒やキリスト教徒は「啓典の民」(=兄弟思想の信者))
・イスラム教徒の規範
1.コーラン
ムハンマドがアッラーから受けた啓示が記された唯一完全な啓典であり、聖俗一致の考えにもとづいている
=生活のことについて規定がされている
聖職者も存在しない(神の前ではみな平等に、規定にしたがって生活すればよいため)
2.シャリーア(イスラム法)
コーランやハディース(ムハンマドの言行録)などを基準に作成された規範・ルール
イスラム教徒はコーランとシャリーアをよりどころにし、ウンマ(イスラム教徒の信仰共同体)としての自覚をもって生活
3.六信五行(シャリーアで規定)
六信(6つの信ずるべき対象)
- 神(=アッラー)
- 天使(神の啓示をもたらしたガブリエルが最高位の天使)
- 啓典
- 預言者(ムハンマドだけでなくモーセやイエスも含む)
- 来世(最後の審判を受けた後の世界)
- 天命(この世のことはすべて神が決めていると考えること)
五行(5つの実践すべきこと)
- 信仰告白…「アッラーのほかに神なし、ムハンマドはアッラーの使徒である」と唱える
- 礼拝…1日5回、メッカに向かって祈りをささげる
- 喜捨…困窮者のために財産を施す。
- 断食…ラマダーンの月は日の出から日の入りまで飲食しない
- 巡礼…メッカのカーバ神殿を訪れる
・イスラム教の展開
ムハンマドの死後、預言者の後継者(カリフ)の指揮のもと、勢力を拡大
↓
カリフの解釈・考え方の違いから、スンニー派(スンナ派)とシーア派に分裂
※スンニー派(スンナ派)のほうが多数派で預言者の家系にこだわらない一方、シーア派は少数派で預言者の家系を重視しています。