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この問題のポイント

教科書に載っている法則で発見者も書かれている場合は発見者も要チェック!
原子や分子の質量を文字であらわし、問題文に書かれた方法をたどろう!

問1 化学における重要な法則については、おもに化学基礎の教科書を中心に取り上げられています。化学基礎の教科書で、発見者とともに紹介されている法則については、どんな法則かという内容だけでなく、発見者が誰かということも確認するようにしましょう。

ちなみに、それぞれの法則について説明すると、

問2 この問題では「物質の質量」に焦点が当たっています。問1の空所で「質量保存の法則」を埋めたということも考えあわせて、この法則がキーワードになるのではないかと考えたいところです。この法則より、水素の質量を△g,酸素の質量を□g,水の質量を◆gとすると、△+□=◆という式が成り立ちます。

なので、もし水の質量だけわからないなら、△+□を計算すればいいですし、水素の質量がわからないなら、◆から□を引けば求まります。酸素の質量についても、◆から△を引けばいいので、すべての場合において、残った1種類については計算で求めることができるわけです。

解答のチェックポイント

問3 〈指針〉

「カニッツァーロの方法で」とあるので、問題文の後半ぐらいから説明されていた方法にしたがって考えていけばいいことになります。

$D$を計算するために密度が使われたわけですが、密度は質量を体積で割れば求まる値です。質量百分率も表で与えられていますから、質量を使って水素分子は水素原子2個が結合したことを示していくといいですね。ということは、水素原子の質量と水素分子の質量を比べていくこととなります。

ただし、実際に何gという具体的な数値は求められそうにありません。よって、水素分子の質量を$x$などなんらかの文字で置いて、塩化水素,硫化水素,アンモニアそれぞれの分子に含まれる水素原子の質量が、その文字を使ってあらわすとどうなるかを考えていくことが必要になります。

アボガドロの仮説の(2)より、同じ体積ならば分子の個数は等しいので、質量÷体積で求まる密度の比は、体積が同じならばそのまま質量の比になります。この性質を使えば、塩化水素や硫化水素などの質量を考えることができ、それを算出すれば、質量百分率を使ってそれぞれの分子中の水素原子の質量が求まります。

〈証明〉

アボガドロの仮説の(2)より、同じ体積に含まれる気体の分子の個数は等しいので、密度の比は、同体積の気体の質量の比と同じである。
そこで、塩化水素,硫化水素,アンモニアそれぞれの分子に含まれる水素原子の質量が、水素分子の質量の何倍であるかを考える。

水素分子の質量を$x$とおくと、$D$の値が18.23なので、塩化水素分子の密度は水素分子の密度の18.23倍であるため、質量も18.23倍である。つまり、塩化水素分子の質量は$18.23x$であるため、その中に含まれる水素原子の質量は、
\( \displaystyle 18.23x×\frac{2.74}{100} \)
\( = 0.499502x ≒ 0.5x \)

同様に考えて、硫化水素分子に含まれる水素原子の質量は、
\( \displaystyle 17.12x×\frac{5.87}{100} \)
\( = 1.004944x ≒ 1.0x \)

アンモニア分子に含まれる水素原子の質量は、
\( \displaystyle 8.560x×\frac{17.60}{100} \)
\( = 1.50656x ≒ 1.5x \)

ここで、塩化水素,硫化水素,アンモニアそれぞれの分子に含まれる水素原子の質量を比べると、$0.5x$ずつ増えていることがわかる。ドルトンの原子説より、これが水素原子の質量ということになる。$0.5x$とは、水素分子の半分ということなので、水素分子は水素原子2個で成立している。

問4 同温・同圧の塩素ガスの密度を水素ガスの密度で割った値(問3では$D$としていた値)を$m$とおきます。すると、このようにまとめることができます。

   

塩素

水素

塩化水素

$D$

$m$

1

18.23

塩素原子を●,水素原子を〇とおくと、塩素は●●,水素は〇〇,塩化水素は〇●とおけるわけですが、この関係より、●●:〇〇:〇● = $m$:1:18.23という質量比が成り立ちます。よって、
●:〇:〇●
\( \displaystyle = \frac{1}{2}m:\frac{1}{2}:18.23 \)
= $m$:1:36.46
が成り立ちます。

一方で、塩化水素の分子は●と〇1個ずつが結合しているわけですから、●:〇:〇●の質量比について、\( m:1:(m+1) \)という関係も成り立ちます。

よって、\( m+1 = 36.46 \)となるので、
\( m = 35.46 \)
有効数字3桁では35.5となりますから、同温・同圧の塩素ガスの密度は水素ガスの35.5倍です。問3と同じく、これが質量にもあてはまるわけなので、塩素原子は水素原子の35.5倍の質量ということになります。

答え.
問1
   (a)   …質量保存の法則
   (b)   …定比例の法則
   (c)   …気体反応の法則(気体体積の法則)
問2(例)
質量保存の法則により、反応前の水素と酸素の質量の合計と、反応によってできた水の質量は等しいため、2つの質量が測定されているのなら、残り1つの質量は計算で求められるため。
問3
(上の〈証明〉参照)
問4
35.5倍