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この問題のポイント

タンパク質の検出反応は、反応名だけでなく反応の意味や原理も理解する!
ペプチドの構造についても確認しよう!

この実験ではいろいろな反応が見られます。タンパク質の検出反応について、いろいろな反応がありますから、まずはそれを整理しましょう。

タンパク質の検出反応

  • ビウレット反応
    ペプチド結合が2個以上あるペプチド(トリペプチド以上)を検出する。
    水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性にした後、硫酸銅水溶液を加えると赤紫色を示す。
    ペプチド結合と$\ce{Cu^{2+}}$が結合することにより赤紫色に変化する)

  • キサントプロテイン反応
    ベンゼン環をもつアミノ酸を検出する。
    濃硝酸を加えて加熱すると黄色になり、それを冷却後に塩基性にすると橙黄色になる。
    ベンゼン環のニトロ化により黄色に変化する)

  • ニンヒドリン反応
    アミノ基を検出する。
    ニンヒドリン水溶液を加えて加熱すると紫色になる。

  • 硫黄($\ce{S}$)の検出反応
    水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱し、酢酸鉛(Ⅱ)水溶液を加えると、黒色の沈殿が生じる。
    硫化鉛(Ⅱ)が生じる)

  • 窒素($\ce{N}$)の検出反応
    水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱し、赤色リトマス紙を近づけると、青色に変化する。
    (タンパク質が分解してアンモニアが生じる)

問1 水酸化ナトリウム水溶液と硫酸銅水溶液を使っているので、赤枠で囲われた「タンパク質の検出反応」にあるとおり、ビウレット反応です。この反応で呈色反応があればそのペプチドがトリペプチド以上なのかがわかるということも、赤枠で囲われた「タンパク質の検出反応」にありました。

ペプチドB,C,Dは呈色反応がなかったということは、トリペプチド以上ではなかった、つまりジペプチドだったということになります。

この解説でトリペプチドやジペプチドなどペプチドについての用語が出ていますが、ここでペプチドについて確認しましょう。

2つのアミノ酸があり、一方のアミノ酸のアミノ基にある$\ce{H}$と、もう一方のアミノ酸のカルボキシ基にある$\ce{OH}$が水となることで結びつく(脱水縮合)。

その結果、アミド結合($\ce{CO-NH}$)ができる。
アミノ酸どうしによるアミド結合をペプチド結合といい、ペプチド結合をもつ物質のことをペプチドという。

  • ジペプチド
    2分子のアミノ酸が結合してできたペプチド

  • トリペプチド
    3分子のアミノ酸が結合してできたペプチド

  • ポリペプチド
    多くの分子のアミノ酸が結合してできたペプチド

問2 濃硝酸を使っていることと橙黄色という色名から、赤枠で囲われた「タンパク質の検出反応」にあるキサントプロテイン反応とわかります。キサントプロテイン反応はベンゼン環をもつアミノ酸を検出しますが、表にある$α$-アミノ酸のうち、ベンゼン環をもつのはフェニルアラニンだけです。

問3 水酸化ナトリウム水溶液を使っていることと黒色沈殿が生じていることから、赤枠で囲われた「タンパク質の検出反応」にあるとおり、この反応で硫黄($\ce{S}$)をもつアミノ酸が検出できます。表にある$α$-アミノ酸のうち、$\ce{S}$原子を含んでいるのはシステインだけです。

また、黒色沈殿が何なのかについても赤枠で囲われた「タンパク質の検出反応」にありますが、これは硫化鉛(Ⅱ)、つまり$\ce{PbS}$です。

問4 pH = 7.4というほぼ中性の環境下で陰極側へ移動するということは、その状況で陽イオンの状態で存在できるということがわかります。アミノ酸は、pHが等電点より小さくなる、つまり$\ce{H+}$が増えると陽イオンの割合が増えていきます

ということは、7.4より大きい値の等電点をもつアミノ酸がペプチドAに含まれていたということになります。表にある$α$-アミノ酸のうち、等電点が7.4より大きいのは塩基性アミノ酸であるリシンしかありません。

なぜリシンが陰極側に移動するのかの説明ですが、陰極側に移動する直接的な原因は陽イオンの存在にあるわけですから、「塩基性アミノ酸だから」という記述だけでなく、それと関連づけて説明をするべきです。リシンがカルボキシ基よりアミノ基のほうが多いから塩基性であることにもふれると、さらによいですね。

問5 実験f)の結果から何かわかることはないかを考察しましょう。メタノールに濃硫酸を加えて加熱すると、下の図のようにエステル化します。

高校 化学 問題演習 メタノールのエステル化

生成物($\ce{H2O}$でないほう)について、側鎖$R$以外の部分は$\ce{C}$が3つ、$\ce{H}$が6つ、$\ce{O}$が2つ、$\ce{N}$が1つあるので、その部分の式量は12×3+1×6+16×2+14 = 88です。

実際にできた化合物の分子量は103なので、側鎖$R$の式量は103-88 = 15
ということは、側鎖$R$とは$\ce{CH3}$と考えられるので、実験f)で使ったペプチドDにはアラニンが含まれるとわかります。

ここで、これまでの実験からわかることをまとめてみましょう。

よって、ペプチドB,C,Dの構造は、このように推定できます。
ペプチドB…フェニルアラニン―(  )
ペプチドC…フェニルアラニン―システイン
ペプチドD…システイン―アラニン

そして、ペプチドAは4つの$α$-アミノ酸が縮合したものでリシンが含まれることから、ペプチドBの(  )に入るのはリシンだと推定できます。よって、4つの$α$-アミノ酸の構造は次の2通りだと考えられます。
リシン―フェニルアラニン―システイン―アラニン
アラニン―システイン―フェニルアラニン―リシン

この順になっているのは(ク)しかありませんから、これが正解となります。

答え.
問1
反応名…ビウレット反応
わかること…ペプチドB,C,Dはジペプチドであること。
問2
反応名…キサントプロテイン反応
アミノ酸名…フェニルアラニン
問3
アミノ酸名…システイン
化学式…$\ce{PbS}$
問4
アミノ酸名…リシン
理由…(例)リシンはカルボキシ基よりアミノ基のほうが多いので塩基性アミノ酸であり、それゆえpH = 7.4では陽イオンの割合が多くなるため。
問5
(ク)