この問題のポイント
酸化還元反応では、酸化剤が受け取った電子の物質量と還元剤が放出した電子の物質量は等しい!
また、必要な物質量の比は反応式の係数の比と同じ!
問1 この反応ではイオンがからんでおり、硫酸鉄(Ⅱ)アンモニウムの$\ce{Fe^{2+}}$は$\ce{Fe^{3+}}$となって+の電気をより強くしているので電子を失った、つまり酸化されていることになります。
ということは、二クロム酸カリウムは酸化剤としてはたらいており、自身は還元されていることになります。よって、二クロム酸カリウムからできる二クロム酸イオンは還元されるので電子を受け取る反応をすることになります。
このような酸化還元反応が起こるわけですが、これを化学反応式にあらわすには、次のような手順で考えるようにしましょう。
1.酸化剤・還元剤それぞれについて半反応式をたてる。
2.2つの半反応式にある電子の数が等しくなるようにする
3.2つの半反応式を組み合わせる
これだけではイメージがわかりませんから、具体的に見てみましょう。まず、酸化剤としてはたらく二クロム酸イオンについて、$\ce{Cr2O7^{2-}}$は$\ce{2Cr^{3+}}$へと変化します。この反応の前後で$\ce{O}$原子、$\ce{H}$原子、電子の数が合うように式をたてると、
\( \small{\ce{Cr2O7^{2-} -> 2Cr^{3+} + 7H2O}} \)
\( \small{\ce{Cr2O7^{2-} + 14H+ -> 2Cr^{3+} + 7H2O}} \)
\( \small{\ce{Cr2O7^{2-} + 14H+ + 6e- -> 2Cr^{3+} + 7H2O}} \) …①
還元剤のほう、つまり硫酸鉄(Ⅱ)アンモニウムからできるイオンについては、$\ce{Fe^{2+}}$から$\ce{Fe^{3+}}$へと電子を失っただけの変化になっているので、
\( \small{\ce{Fe^{2+} -> Fe^{3+} + e-}} \) …②
これでそれぞれの半反応式ができました。酸化剤の半反応式(①)では、電子が6個ある形になっていますが、還元剤の半反応式(②)は電子が1個しかない形になっています。そこで、電子の数を合わせるために、②の式の両辺を6倍すると、
\( \small{\ce{6Fe^{2+} -> 6Fe^{3+} + 6e-}} \) …③
電子の数も等しくなりましたので、2つの半反応式を組み合わせます。①と③を組み合わせて、
\( \small{\ce{Cr2O7^{2-} + 14H+ + 6e- + 6Fe^{2+} -> 2Cr^{3+} + 7H2O + 6Fe^{3+} + 6e-}} \)
\( \small{\ce{Cr2O7^{2-} + 14H+ + 6e- + 6Fe^{2+} \\ -> 2Cr^{3+} + 7H2O + 6Fe^{3+} + 6e-}} \)
組み合わせれば電子は打ち消されるので、
\( \small{\ce{Cr2O7^{2-} + 6Fe^{2+} + 14H+ -> 2Cr^{3+} + 6Fe^{3+} + 7H2O}} \)
\( \small{\ce{Cr2O7^{2-} + 6Fe^{2+} + 14H+ \\ -> 2Cr^{3+} + 6Fe^{3+} + 7H2O}} \)
問2 問1の解説で完成した反応式を見ると、$\ce{Fe^{2+}}$や$\ce{Fe^{3+}}$の係数は6です。
問3 問題文の(1)の反応式に示された化学反応、つまりB液をC液で滴定した反応は、$\ce{Fe^{2+}}$と$\ce{MnO4-}$の反応になります。そして、反応式を見ると$\ce{Fe^{2+}}$は酸化されていて、逆に$\ce{MnO4-}$は還元されていることがわかります。酸化還元反応では、酸化された物質が放出した電子の量と還元された物質が受け取った電子の量は等しいので、この2つのイオンが放出したり受け取ったりした電子の量から、モル濃度を考えましょう。
電子の量を考えるために、問1のように半反応式を立てます。まず、$\ce{MnO4-}$については$\ce{Mn2+}$になるので、それをもとに問1と同じように半反応式をつくると、
\( \small{\ce{MnO4- -> Mn2+ + 4H2O}} \)
\( \small{\ce{MnO4- + 8H+ -> Mn2+ + 4H2O}} \)
\( \small{\ce{MnO4- + 8H+ + 5e- -> Mn2+ + 4H2O}} \)
これより、1molの$\ce{MnO4-}$が還元されるには5molの電子が必要とわかります。
そして$\ce{Fe^{2+}}$については問1で考えたとおり、\( \small{\ce{Fe^{2+} -> Fe^{3+} + e-}} \)という半反応式なので1molの$\ce{Fe^{2+}}$の酸化には1molの電子が必要といえます。
つまり、同じモル数でも$\ce{MnO4-}$については5倍の電子が必要ということになります。$\ce{MnO4-}$は$c$〔mol/L〕の溶液に$a$mL(=\( \displaystyle \frac{a}{1000} \)L)分ありました。$\ce{Fe^{2+}}$についてはB液の濃度がわからないので$x$〔mol/L〕とし、これを10mL(=\( \displaystyle \frac{10}{1000} \)L)とっていました。よって、次の方程式ができます。
\( \displaystyle c×\frac{a}{1000}×5 = x×\frac{10}{1000} \)
これを$x$について解くと、\( 5ac = 10x \)
\( \displaystyle x = \frac{ac}{2} \)
問4 A液にB液を加えたうえ、それでできた液体にC液を加えたので、問3と同じように考えるのは少し難しそうです。そこで、与えられた化学反応式の係数に目をつけてみて、それの比を利用して考えてみましょう。
(1)の反応式より、$\ce{Fe^{2+}}$と$\ce{MnO4-}$の係数の比は5:1なので$\ce{Fe^{2+}}$が反応するには$\ce{MnO4-}$の5倍が必要とわかります。そして、(2)の反応式と問2の答えより、$\ce{Cr2O7^{2-}}$と$\ce{Fe^{2+}}$の係数の比は1:6なので$\ce{Fe^{2+}}$は$\ce{Cr2O7^{2-}}$の6倍必要とわかります。
つまり、問題文の実験における$\ce{Fe^{2+}}$のモル量は$\ce{MnO4-}$のモル量の5倍と$\ce{Cr2O7^{2-}}$のモル量の6倍の合計に等しいということになります。$\ce{Cr2O7^{2-}}$のモル濃度を$y$〔mol/L〕とし、$\ce{Fe^{2+}}$のモル濃度を問3と同じく$x$〔mol/L〕とすると、
\( \displaystyle y×\frac{10}{1000}×6+c×\frac{b}{1000}×5 = x×\frac{20}{1000} \)
\( 60y+5bc = 20x \)
ここで、問3にて\( \displaystyle x = \frac{ac}{2} \)と求めていましたから、
\( \displaystyle 60y+5bc = 20×\frac{ac}{2} \)
\( 60y+5bc = 10ac \)
\( 60y = 10ac-5bc \)
\( \displaystyle y = \frac{10ac-5bc}{60} = \frac{2ac-bc}{12} \)
答え.
問1 ア $\ce{Cr2O7^{2-}}$ イ $\ce{2Cr^{3+}}$
問2 6
問3 \( \displaystyle \frac{ac}{2} \)〔mol/L〕
問4 \( \displaystyle \frac{2ac-bc}{12} \)〔mol/L〕