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この問題のポイント

反応速度を求める式には、反応速度定数と平均濃度をかけるものと、濃度の変化を反応時間で割るものの2つがある!

〔1〕酢酸エチルは$\ce{CH3COOC2H5}$とあらわせます。これに水を加えて加熱すると、酢酸、つまり$\ce{CH3COOH}$とエタノール、つまり$\ce{C2H5OH}$に分解されます。この反応が加水分解です。

〔2〕酢酸エチルの密度が0.902g/cm3で、溶液C中には酢酸エチルが2.00ml、つまり2.00cm3ある状態ですから、酢酸エチルは(0.902×2)gあることになります。

そして、酢酸エチル($\ce{CH3COOC2H5}$)は1molあたり
12+1×3+12+16+16+12×2+1×5 = 88gあるので、
実際に酢酸エチルは\( \displaystyle \frac{0.902×2}{88} \)gあることになります。

溶液Cは溶液Bと酢酸エチルを混合してできたので、100ml、つまり\( \displaystyle \frac{1}{10} \)Lあるので、モル濃度は
\( \displaystyle \frac{0.902×2}{88}÷\frac{1}{10} \)
\( \displaystyle = \frac{0.902×2}{88}×10 \)
= 0.205mol/l ≒ \( 2.1×10^{-1} \)mol/l

〔3〕溶液Cを5.00mlとり出し、その溶液に0.100mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和させたわけですが、その中和に必要な水酸化ナトリウム水溶液は、表より25.0mlでした。

中和したときの$\ce{H+}$のモル量と$\ce{OH-}$のモル量は等しいです。そして、塩酸と水酸化ナトリウムは価数はともに1価ですから、求めるモル濃度を$C_a$とすると、

\( \displaystyle C_a×\frac{5}{1000}×1 = 0.100×\frac{25}{1000}×1 \)
\( 5×C_a = 2.5 \)
\( C_a = 0.5 = 5.0×10^{-1} \)mol/l

〔4〕この実験では塩酸は触媒であり、消費されません。なので、塩酸との反応に常に25.0mlの水酸化ナトリウム水溶液が消費されてしまいます。つまり、これを超える分の水酸化ナトリウム水溶液が、加水分解反応でできた酢酸との反応に使われます。

酢酸エチルも水酸化ナトリウムと同様、価数は1価なので、反応開始後30分ではかりとった5.00mlの酢酸のモル濃度を$C_b$とすると、

\( \displaystyle C_b×\frac{5}{1000}×1 = 0.100×\frac{26.2-25.0}{1000}×1 \)
\( \displaystyle C_b×\frac{5}{1000}×1 = 0.100×\frac{1.2}{1000}×1 \)
\( 5×C_b = 0.12 \)
\( C_b = 0.024 \)mol/l

加水分解反応した酢酸エチルのモル濃度と、これによって生成した酢酸のモル濃度は等しいです。反応開始前の酢酸エチルのモル濃度からこの濃度をひけば、反応開始後30分の酢酸エチルのモル濃度が求まるので、
0.205-0.024 = 0.181 ≒ \( 1.8×10^{-1} \)mol/l

〔5〕加水分解反応の反応速度を求める問題です。化学反応の反応速度を求めるには、次のような公式があります。

$\ce{A -> B + C}$という化学反応があったとして、時間$t_1$のとき反応物$A$の濃度が$[A]_1$,その後、時間$t_2$のとき反応物$A$の濃度が$[A]_2$になった場合、反応速度\( \overline{V} \)は次のようになる。

\( \displaystyle \overline{V} = \left|\frac{[A]_2-[A]_1}{t_2-t_1}\right| \)

つまり、濃度がどれだけ変化したかの差を、経過した時間で割ったものということです。絶対値にしているのは、$A$の濃度は減少しているので分数の分子はマイナスになりますが、速度がマイナスになるのはおかしいからです。実験結果をもとに濃度が算出できる場合の反応速度はこの公式を使うことができます

酢酸エチルのモル濃度について、〔2〕より反応開始前は0.205mol/l、〔4〕より反応開始後30分では0.181mol/lですから、公式を利用して、

\( \displaystyle \left|\frac{0.181-0.205}{30-0}\right| \)
\( \displaystyle = \left|\frac{-0.024}{30}\right| \)
= 0.0008 = \( 8.0×10^{-4} \)mol/l・min

〔6〕まず、反応開始0分から30分までの平均酢酸エチル濃度は、
\( \displaystyle \frac{0.205+0.181}{2} \) = 0.193mol/l

そして、平均加水分解速度は〔5〕で求めたとおり\( 8.0×10^{-4} \)mol/l・minなので、$v = k'[酢酸エチル]$の式より、

\( 8.0×10^{-4} = k'×0.193 \)
\( \displaystyle k' = \frac{8.0×10^{-4}}{0.193} \)
つまり、\( k' ≒ 4.1×10^{-3} \)


(重要)

$\ce{A -> B + C}$という化学反応があったときの反応速度を求める公式として、もう1つこのようなものがあります。

\( \overline{V} = k・\overline{[A]} \)
($k$は反応速度定数)

つまり、反応前と反応後の$A$の濃度の平均と反応速度定数がわかれば、反応速度を求めることができるというわけです。〔6〕で$v = k'[酢酸エチル]$が成り立つのはこの公式があるからであり、反応開始0分から30分までの平均酢酸エチル濃度を求める必要があったのもこのためです。


〔7〕化学反応における反応速度が大きくなるか小さくなるかには、温度・濃度・触媒の3つが関係しています

さっきの〔6〕にあった$v = k'[酢酸エチル]$という式は濃度と反応速度の関係をまとめた式です。そのため、濃度を変化させたとしてもそれに比例するように反応速度が変わるだけで$k'$の値は変わることはありません。

しかし、温度を変化させれば、式に表現されている以外の条件が変えられたことになるので、その影響で$k'$の値は変わります。温度が上がれば反応は活発となるので、化学反応の反応速度は速くなります。よって、$k'$の値は大きくなるといえます。

答え.
〔1〕\( \small{\ce{CH3COOC2H5 + H2O -> CH3COOH + C2H5OH}} \)
〔2〕\( 2.1×10^{-1} \)mol/l
〔3〕\( 5.0×10^{-1} \)mol/l
〔4〕\( 1.8×10^{-1} \)mol/l
〔5〕\( 8.0×10^{-4} \)mol/l・min
〔6〕\( k' ≒ 4.1×10^{-3} \)/min
〔7〕(a)(3)   (b)(2)