Processing math: 100%

問題ページにもどる

この問題のポイント

接触法がどのような流れを経て硫酸をつくるのか理解する!
濃硫酸は不揮発性、脱水性、酸化作用があり、希硫酸は強い酸性をもつ!

問1 硫酸は次のような製法でつくることができます。流れを確認しましょう。

1.硫黄を燃焼させて二酸化硫黄を得る。
S+O2SO2

2.二酸化硫黄を空気中の酸素によって酸化させ、三酸化硫黄を得る。(反応の進行が遅いので、酸化バナジウム(Ⅴ)(化学式V2O5)を触媒として反応を起こりやすくする)
2SO2+O22SO3 …Ⅰ

3.三酸化硫黄を濃硫酸に溶かして発煙硫酸にし、そこに希硫酸を加える。希硫酸中のH2Oと反応させることで濃硫酸を得る。(硫酸に水を直接加えると、激しい発熱が生じて危険なのでこのようにする)
SO3+H2OH2SO4 …Ⅱ

この1.~3.までの流れの製法を接触法という。

この説明より、   ア   には「発煙」、   イ   には「接触」が入ることがわかります。

問2 硫酸、とくに濃硫酸には次のような性質があります。

1.不揮発性の酸(蒸発しにくい酸)である。→この性質を利用して揮発性の酸を取り出す反応に利用される。
例:NaCl+H2SO4NaHSO4+HCl
(揮発性の酸であるHClを遊離させる)

2.酸化剤としてはたらくこともある
例:Cu+2H2SO4CuSO4+2H2O+SO2
Cuを酸化させた反応となっている)

3.脱水作用がある。
例:エタノール(C2H5OH)と濃硫酸を反応させるとH2Oが引き抜かれ、エチレン(C2H4)が生成される

4.吸湿性があり、空気中の水分を吸収する。

5.溶解熱が大きい。

i) エタノールと反応させるわけですから、濃硫酸の脱水性(3.の性質)を示した反応といえます。濃硫酸は反応式中に書かなくてよいので、C2H5OHからC2H4H2Oが生成される化学反応式を書くとよいでしょう。ここで発生した気体は「エチレン」のことになりますね。

ii) 塩化ナトリウムはNaClですから、これと濃硫酸を反応させるわけなので、濃硫酸の不揮発性(1.の性質)を利用した化学反応ということになりますね。化学反応式も1.に示されていますから、この反応式を書けばよいということになります。ここで発生した気体とは「塩化水素(HCl)」ですね。

ちなみに、希硫酸にはこのような性質はなく、強酸性のみの性質があります。

問3 濃硫酸に水を加えると、濃硫酸より密度の小さい水が濃硫酸の表面に浮きます。そして問2の解説で示した濃硫酸の性質にあるとおり、濃硫酸は溶解熱が大きいですから、その溶解熱で表面に浮いた水が沸騰してしまいます。すると、硫酸とともに飛び散る危険があります。

こういう理由で水をかき混ぜながら濃硫酸を少しずつ加える方法が適切なわけです。

解答のチェックポイント

問4 黄鉄鉱から二酸化硫黄が生成される反応式は問題にあります。その後硫酸をつくる過程は問1の解説にあるⅠ・Ⅱの反応になるわけです。黄鉄鉱により、8SO2が生成されるので、Ⅰの反応式の両辺を4倍して
8SO2+4O28SO3 …Ⅲ

そして、Ⅱの反応式の両辺を8倍して
8SO3+8H2O8H2SO4 …Ⅳ
よって、問題にあった反応式とⅢ・Ⅳの反応式より、このような化学反応式ができます。

4FeS2+15O2+8H2O2Fe2O3+8H2SO4

この化学反応式より、もともとの黄鉄鉱と生成される硫酸のモル比は4:8 = 1:2とわかりますね。
黄鉄鉱(FeS2)1molは56+32×2 = 120gより、黄鉄鉱60.0kgとは60000÷120 = 500molです。

よって、硫酸は500×2 = 1000mol生成されたということになります。硫酸(H2SO4)1molは1×2+32+16×4 = 98gなので、生成された濃硫酸(98.0%)をxL、すなわち1000xmLとすると、
1.84×1000x×0.9898=1000

この方程式を解くと、18.4x=1000となるので、x54.3Lです。

答え.
問1
   ア   …発煙
   イ   …接触
問2
i) C2H5OHC2H4+H2O
ii) NaCl+H2SO4NaHSO4+HCl
問3
(例)濃硫酸に水を加えると、水が急騰し、それにより硫酸が飛び散る可能性があり危険である。この理由により、水をかき混ぜながら濃硫酸を少しずつ加える方法のほうが適切である。
問4
54.3L