この問題のポイント
強酸か弱酸か、強塩基か弱塩基かで、滴定曲線の中和点の位置や曲線の端が示すpH値が変わる!
問1 中和滴定をおこなった食用酢中の酢酸のモル濃度を$x$mol/lとします。中和したときの$\ce{H+}$の物質量(モル数)と$\ce{OH-}$の物質量(モル数)は等しいので、それを考えます。
食用酢中の$\ce{H+}$の物質量(モル数)については、$x$mol/lの水溶液が10.0ml、つまり\( \displaystyle \frac{10}{1000} \)Lで中和したので、\( \displaystyle \frac{10}{1000}x \)mol
そして、$\ce{NaOH}$溶液中の$\ce{OH-}$の物質量(モル数)については、0.100mol/lの水溶液14.00ml、つまり\( \displaystyle \frac{14}{1000} \)Lで中和したので、\( \displaystyle \left(0.1×\frac{14}{1000}\right) \)mol
よって、\( \displaystyle \frac{10}{1000}x = 0.1×\frac{14}{1000} \)
\( 10x = 0.1×14 \)
\( x = 0.14 \)mol/l
そして中和滴定をおこなった食用酢は5倍に希釈したものなので、希釈前の食用酢中の酢酸のモル濃度は
0.14×5 = 0.70mol/l
問2 問1より、希釈前の食用酢中の酢酸は0.70mol/lとわかりました。これは言い換えれば「食用酢1L中に0.70molの酢酸が含まれている」ということになります。質量パーセント濃度を求めるために、これを食用酢が何gあり、その中に酢酸が何g含まれているかに換算します。
食用酢の密度は1.00g/cm3ですから、食用酢1L = 1000ml、つまり1000cm3の質量は1000×1.00 = 1000gです。
そして、酢酸($\ce{CH3COOH}$)の分子量は
1.00×4+12.0×2+16.0×2 = 60より、酢酸0.70molとは60×0.7 = 42gです。
よって、質量パーセント濃度は
\( \displaystyle \frac{42}{1000}×100 = 4.2 \)%
問3 酸に塩基をどんどん滴下していくと溶液のpHがどのように変化していくのかを示したグラフを滴定曲線といいます。この滴定曲線は酸が弱酸なのか強酸なのか、そして塩基が弱塩基なのか強塩基なのかで形が変わります。この問題で使用した酸は酢酸なのであまり$\ce{H+}$に電離しないので弱酸、塩基は$\ce{NaOH}$なので$\ce{OH-}$にほぼ電離するので強塩基です。弱酸と強塩基の組合せによる滴定曲線を考えます。
まず弱酸であまり$\ce{H+}$に電離しないわけですから、pHはそこまで低くはなりません。よって、滴定曲線のはじめの位置は若干高いところとなるはずです。そこに塩基を加えていくわけですが、中和するぐらいのときに一気にpHが変化して塩基性に変わります。滴定曲線を描くと一気にはね上がるような形になるのでこの部分をpHジャンプといいますが、そのpHジャンプの中点が中和点となります。
弱酸に加えているのは強塩基なので、pHジャンプや中和点は塩基性側にひっぱられる形になります。そして、強塩基なのでpHはかなり高くなりますから、滴定曲線の終わりの位置は高いところとなります。この滴定曲線のはじめと終わりの位置、そしてpHジャンプや中和点の位置すべてが合っているのは(ウ)ですね。
ちなみに、ほかの滴定曲線は次のような酸と塩基の組合せと考えることができます。
- (ア)…
滴定曲線のはじめの位置は若干高いが、終わりの位置が若干低い
中和点の位置も7あたりで中性のところ
→弱酸と弱塩基の組合せ - (イ)…
滴定曲線のはじめの位置が低く、終わりの位置も若干低い
pHジャンプや中和点が酸性側にひっぱられている
→強酸と弱塩基の組合せ - (エ)…
滴定曲線のはじめの位置が低く、終わりの位置が高い
中和点の位置も7あたりで中性のところ
→強酸と強塩基の組合せ
問4 フェノールフタレインはpH8.3~pH10(塩基性寄りの範囲)で、メチルオレンジはpH3.1~pH4.4(酸性寄りの範囲)で色が変わります。その色が変わるpHの範囲の中にpHジャンプが含まれていれば、その指示薬を使って中和点を確認することができます。
問3で滴定曲線は(ウ)とわかりましたが、その滴定曲線のpHジャンプはフェノールフタレインの変色域のみに入っていますから、指示薬としてはフェノールフタレインのみが適切ということになります。この問題では滴定曲線に変色域が示されていますが、かりに示されていなかったとしても答えることができます。
問3の解説にもあるとおり、この実験は弱酸と強塩基の中和ですから、pHジャンプは塩基性寄りの範囲で起こるはずです。だから、塩基性寄りの範囲で色が変わるフェノールフタレインが適切なのです。フェノールフタレインを用いるべき理由としては、このことを説明したほうがよいでしょう。
ちなみに、同じように考えて、強酸と弱塩基の中和ならpHジャンプは酸性寄りの範囲で起こるので指示薬はメチルオレンジが適切といえます。そして、強酸と強塩基の中和なら、フェノールフタレイン、メチルオレンジ両方とも指示薬として使えます(色が変わるpHの範囲2つともpHジャンプが含まれているから)。
解答のチェックポイント
- この実験が弱酸と強塩基の中和反応であることにふれているか
- 弱酸と強塩基の中和反応ではpHジャンプや中和点は塩基性寄りになることにふれているか
- フェノールフタレインは塩基性寄りのpHの範囲で色が変わることにふれているか
答え.
問1
0.70mol/l
問2
4.2%
問3
(ウ)
問4
記号…(a)
理由…(例)この実験は弱酸と強塩基の中和反応であり、pHジャンプが塩基性寄りになるが、フェノールフタレインも塩基性寄りの範囲で色が変わるため。