この問題のポイント
浸透圧はファントホッフの法則を利用すると求まる!
水銀柱がからんだ問題では水銀柱に置き換えて計算する!
問1 溶液中の大きい粒子を通さないで小さい粒子だけを通す膜のことを半透膜といいます。濃度の異なる2つの溶液を半透膜で仕切ると、濃度差をなくそうとするように、濃度の低いほうから高いほうに流れ込みます。これが浸透です。
この浸透が進むと2つの溶液の液面で高さに差ができていきます。このときの半透膜を通って浸透しようとする圧力は、液面の高さに差が出ないように高くなった液面をおさえる圧力と等しいです。この圧力を浸透圧といいます。
浸透圧は次の公式を使って求めることができます。この公式をファントホッフの法則といいます。
浸透圧を$π$,気体定数を$R$,溶液のモル濃度を$C$,溶液の絶対温度を$T$とすると、
\( π = CRT \)
また、モル濃度は溶液の体積($V$)と溶けている溶質の物質量($n$)で求まるので(\( \displaystyle C = \frac{n}{V} \))、この関係式も成り立つ。
\( \displaystyle π = \frac{n}{V}RT \)
\( πV = nRT \)
この問題では、温度は27℃、つまり絶対温度は273+27 = 300Tとわかっているので、あとはモル濃度さえ求まればファントホッフの法則が使えそうですね?そこでモル濃度を考えていくことにしましょう。
質量パーセント濃度が0.9%ですから、100g中0.9gが塩化ナトリウムの水溶液ということです。$\ce{NaCl}$1molは23+35.5 = 58.5gより、塩化ナトリウム0.9gは\( \displaystyle \frac{0.9}{58.5} \)molです。そして、塩化ナトリウム水溶液の密度は1.00g/cm3なので、この水溶液100gは100×1.00 = 100mL = 0.1Lあることになります。
塩化ナトリウムは水溶液になると$\ce{Na+}$と$\ce{Cl-}$に電離することに注意すると、溶液中のイオンのモル濃度は
\( \displaystyle \frac{0.9}{58.5}÷0.1×2 = \frac{18}{58.5} ≒ 0.3077 \)mol/L
よって、求める浸透圧は、
\( 0.3077×8.31×10^3×300 \)
\( = 0.3077×8.31×10^3×3×10^2 \)
\( ≒ 7.67×10^5 \)Pa
問2 浸透圧が同じになるためには、ブドウ糖水溶液のモル濃度が約0.3077mol/Lとなればいいはずです。$\ce{C6H12O6}$は1molあたり12×6+1×12+16×6 = 180gですから、1L(1000mL)の水溶液におよそ180×0.3077 = 55.386gのブドウ糖を溶かす必要があるということになります。
実際に調製したい水溶液は100mLですから、必要なブドウ糖は、
\( \displaystyle 55.386×\frac{100}{1000} = 5.5386 \)gです。
有効数字3桁の解答でよいので、5.54gとすればいいですね。
問3 この実験では、水分子や$\ce{Na+}$と$\ce{Cl-}$であれば膜を通って行き来しても問題ありません。しかし、この実験は問題のリード文にあるとおり、血液中のタンパク質濃度低下による浸透圧の影響を調べるためのものなので、タンパク質が膜を通って自由に行き来しては不都合だということになります。
この区別をまとめて解答にしましょう。解答では単に「大きな分子を通さない」とするのではなく、リード文にも簡単にふれられているので、「分子量1万以上の大きな分子」と分子量にもふれて答えるか、「タンパク質を通さない」など物質名にふれて答えるほうがよいでしょう。
問4 この問題では水銀柱の条件が与えられていますが、そのような問題では水銀柱に置き換えて計算して求めることができます。この問題の場合なら液面の差が40.0cmとのことですが、これが水銀柱であれば何cmの高さになるのかを算出するわけです。ここで、水銀柱に置き換えたら$x$cmの高さになるとおきましょう。
水銀柱は\( 1.01×10^5 \)Paのときの高さは76.0cmですが、圧力=高さ×密度と表せますから、次の式が成り立つはずです。
\( 40.0×1.02 = x×13.6 \)
これを解くと\( x = 3 \)
水銀柱に置き換えると3cmということですから、
\( \displaystyle 1.01×10^5×\frac{3.0}{76.0} \)
\( ≒ 0.03986×10^5 = 3.986×10^3 \)
有効数字3桁ですから、\( 3.99×10^3 \)Paという解答にします。
答え.
問1 \( 7.67×10^5 \)Pa
問2 5.54g
問3 (例)分子量1万以上の分子を通さない膜。
問4 \( 3.99×10^3 \)Pa