この問題のポイント
検出反応とアミノ基の反応、ベンゼンからどのような経路でできるかを理解する!
アゾ化合物の合成については反応と反応名をおさえる!
設問(1): A に入る語句を考えるために、アニリンがベンゼンからどのようにして生成できるかを確認しましょう。
①はベンゼンで、濃硝酸と濃硫酸の混酸を加える((ア)の過程)
↓
②のニトロベンゼンができる。そこに塩酸を加え、還元剤であるスズを加える((イ)の過程)
↓
③のアニリンができるが、その塩酸により別の物質に変化してしまう((ウ)の過程)ため、④のアニリン塩酸塩ができる
↓
アニリン塩酸塩は弱塩基と強酸の塩なので、強塩基を加えると、弱塩基の遊離が起きるから、水酸化ナトリウム水溶液を加え((エ)の過程)、⑤のアニリンを得る
この内容から、 A に入る語句はニトロベンゼンとわかります。 B ・ C については、アニリンの検出反応を知っているかどうかがカギになります。
- さらし粉を加えると赤紫色を呈する
- ニクロム酸カリウム水溶液を加えると黒色の沈殿(アニリンブラック)が生じる
よって、 B はさらし粉、 C はアニリンブラックとわかります。
そして、 D についてですが、アニリンは無水酢酸($\ce{(CH3CO)2O}$)と反応させると、アミノ基($\ce{-NH2}$)が反応することにより、アミド結合をもつアセトアニリドが生成されます。反応を図示すると下の図のようになります。
①がアニリン、②が無水酢酸です。この2つの反応によるアセチル化で③のアセトアニリドができます。四角で囲った部分がアミド結合です。ちなみに、アミノ基の一部と無水酢酸の一部によってできた④は酢酸です。
設問(2):設問(1)の解説にあったとおり、ニトロベンゼンに塩酸とスズを加えるとアニリンができますが、その塩酸によってアニリン塩酸塩になってしまいます。そういう過程のため、ニトロベンゼンに塩酸とスズを加えると、最初はニトロベンゼンとスズの層と塩酸の層という2層に分かれます。
しかし、時間が経過するにつれ、ニトロベンゼンはアニリン塩酸塩へと変わります。このアニリン塩酸塩は水溶性でどんどん溶けていくことになり、やがて均一になっていくというわけです。
よって、解答としては、均一溶液になる理由として水溶性の物質があることを述べ、その物質としてアニリン塩酸塩にふれた文章にするとよいでしょう。
解答のチェックポイント
- 反応によりアニリン塩酸塩ができることを述べているか
- そのアニリン塩酸塩は水溶性であることを述べているか
設問(3):設問(1)の解説にて、最後のほうでアニリンと無水酢酸の反応について説明してあります。これを参考に化学反応式にあらわすとよいでしょう。
設問(4):アセトアニリドと希硫酸が反応すると、アミド結合をもつアセトアニリドの加水分解が進み、アニリン硫酸塩と酢酸ができます。「刺激臭をもつ物質」とはこの酢酸のことです。
設問(5):アニリンから塩化ベンゼンジアゾニウムを生成することができますが、この反応をジアゾ化といいます。ジアゾ化の流れをここで確認しましょう。
①のベンゼンに希塩酸($\ce{HCl}$)と亜硝酸ナトリウム($\ce{NaNO2}$)を加えて5℃以下に保つ。すると、ジアゾ基($\ce{N+#N}$)の部分をもつ②の塩化ベンゼンジアゾニウムが生成する。このようにジアゾ基をもつ塩ができる反応がジアゾ化である(「ジ」は「2」、「アゾ」は「窒素」のことである)。
塩化ベンゼンジアゾニウムは5℃以下に保たないと分解してしまい、窒素を発生させながら③のフェノールを生成する。
ちなみに、塩化ベンゼンジアゾニウムができるときに、塩化ナトリウム($\ce{NaCl}$)と水($\ce{H2O}$)もできますので、化学反応式を書くときはそれも忘れずに書くようにしましょう。また、「分解反応で生成する有機化合物」とは、上の説明で示したとおりフェノールのことです。
設問(6):塩化ベンゼンジアゾニウムにナトリウムフェノキシド水溶液を加えて起こる反応はジアゾカップリングといいます。下のような反応になります。
まずジアゾ化をおこなう。その後、ナトリウムフェノキシド水溶液(上の図で色がついている構造式のもの)を加えると、p-ヒドロキシアゾベンゼン(p-フェニルアゾフェノール)が生成する。これがジアゾカップリングである(ベンゼン環がカップルのようになっているので)。
p-ヒドロキシアゾベンゼンには、アゾ基($\ce{N=N}$)をもつのでアゾ化合物とよばれる。橙赤色に着色していて、染料として利用される。
よって、化合物Eとはp-ヒドロキシアゾベンゼン(p-フェニルアゾフェノール)のことなので、さっきの説明にあった構造式を書けばいいということになります。
答え.
設問(1):
A …ニトロベンゼン
B …さらし粉
C …アニリンブラック
D …アセトアニリド
設問(2):
(例)反応により、水溶性が高いアニリン塩酸塩ができるから。(26字)
設問(3):
設問(4):
$\ce{CH3COOH}$
設問(5):
設問(6):