この問題のポイント
鉄は酸と反応しやすく、濃硝酸と反応して不動態を形成!
Fe2+やFe3+の色や物質と反応させたときの沈殿物の色、鉄の製法も重要事項!
問1.鉄の工業的製法はこのような過程となっています。
鉄鉱石(Fe2O3)・コークス(C)・石灰石(CaCO3)を溶鉱炉に入れ、熱風を吹き込む
↓
一酸化炭素が発生し、その一酸化炭素によりFe2O3が還元され、銑鉄になる
反応式:Fe2O3+3CO⟶2Fe+3CO2
銑鉄は炭素を多く含み、硬くてもろい
↓
転炉で、融解した銑鉄に酸素(O2)を吹き込み、鋼にする
鋼は炭素をほとんど含んでおらず、弾力性があってかたい
これを参考にすると、 (ア) ~ (ウ) に入る語句を答えることができるでしょう。
次に、鉄(Ⅱ)イオンFe2+と鉄(Ⅲ)イオンFe3+についてですが、この2つのイオンは、イオン自体の色やいろいろな物質と反応させたときの沈殿物の色に特徴があります。
Fe2+ |
Fe3+ |
|
色 | 淡緑色 |
黄褐色 |
OH−を加える | Fe(OH)2の緑白色の沈殿 |
Fe(OH)3の赤褐色の沈殿 |
チオシアン酸カリウムKSCNを加える | 変化なし |
血赤色の溶液に |
ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸カリウムK4[Fe(CN)6]を加える | 青白色の沈殿 |
濃青色の沈殿 |
ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸カリウムK3[Fe(CN)6]を加える | 濃青色の沈殿 |
赤褐色の沈殿 |
(エ) ・ (オ) に入る語句はこの表からわかると思います。
問2.Fe2+にOH−を加えて反応させるということになるので、問1.の解説にある表を参考にすると、Fe(OH)2の緑白色の沈殿ができるとわかります。このFe(OH)2が化合物Ⓐというわけです。
問3.Feのみ水素よりイオン化傾向が大きいので、希硫酸を加えると水素を発生して溶解することになります。
ちなみに、鉄(Fe)にはこのような性質がありますので、まとめてチェックしましょう。
- 水素よりイオン化傾向が大きいので、塩酸や希硫酸などの希酸と反応して水素を発生させる
- 濃硝酸(NHO3)と反応すると不動態を形成して溶けない
問4.鉄鉱石のうち、赤鉄鉱はFe2O3、磁鉄鉱はFe3O4という化学式で表されます。この問題では赤鉄鉱の反応式を書けばよいので、問1.の解説に出てきた化学反応式(コークスなどから出る一酸化炭素に還元されて鉄ができる)を書けば解答となります。
ちなみに、Fe2O3、つまり酸化鉄(Ⅱ)がいきなり鉄に変化するというわけではなく、このような段階的な還元がされて最終的に鉄へと変化します。
3Fe2O3+CO⟶2Fe3O4+CO2(酸化鉄(Ⅲ)に還元)
↓
Fe3O4+CO⟶3FeO+CO2(酸化鉄に還元)
↓
FeO+CO⟶Fe+CO2(鉄に還元)
問5.鉄(Ⅱ)イオンを鉄(Ⅲ)イオンに酸化させるうえで二クロム酸イオンとの反応が必要と考えられますが、鉄(Ⅱ)イオンと二クロム酸イオンの半反応式は次のようになります。
Fe2+⟶Fe3++e−
Cr2O2−7+14H++6e−⟶2Cr3++7H2O
よって、イオン反応式は次のようになります。
Cr2O2−7+6Fe2++14H+⟶6Fe3++2Cr3++7H2O
Cr2O2−7+6Fe2++14H+⟶6Fe3++2Cr3++7H2O
これより、二クロム酸イオンのモル数に対し、鉄(Ⅱ)イオンのモル数はその6倍が必要になることがわかります。
二クロム酸カリウムを含む水溶液は0.20mol/Lのモル濃度で20mL、つまり0.02Lを要したので、二クロム酸イオンは
0.20×0.02 = 0.004molあったことになります。
よって、鉄(Ⅱ)イオンのモル数は0.004×6 = 0.024mol必要ということになるので、Fe2+のモル濃度をx〔mol/L〕とすると、採取したのは100mL = 0.1Lなので、
x×0.1=0.024
x=0.024÷0.1=0.24〔mol/L〕
答え.
問1.
(ア) …コークス
(イ) …銑鉄
(ウ) …鋼
(エ) …濃青
(オ) …血赤
問2.
Fe(OH)2
問3.
Fe+H2SO4⟶FeSO4+H2
問4.
Fe2O3+3CO⟶2Fe+3CO2
問5.
0.24〔mol/L〕