この問題のポイント
塩の水溶液は酸性塩と正塩で分けて考える!
弱酸や弱塩基の遊離反応は化学反応式を作れるようにする!
問1 これを考える前に、塩には種類がありますから、その分類があることをおさえましょう。
酸性塩…
酸由来の$\ce{H+}$が残っている塩(要するに化学式中に$\ce{H}$が残っている塩)
例:$\ce{NaHSO4}$、$\ce{NaHCO3}$
塩基性塩…
塩基由来の$\ce{OH-}$が残っている塩(要するに化学式中に$\ce{OH}$が残っている塩)
例:$\ce{CuCl(OH)}$、$\ce{MgCl(OH)}$
正塩…
よぶんな$\ce{H+}$や$\ce{OH-}$が存在しない塩(要するに酸性塩や塩基性塩以外のすべての塩)
例:$\ce{NaCl}$、$\ce{CaCl2}$、$\ce{CH3COONa}$
そして、この塩が水溶液になったときに酸性になるか塩基性になるかについてですが、上で分類した酸性塩と正塩とでは考え方がちがいます。
まず、酸性塩については$\ce{NaHSO4}$は酸性、$\ce{NaHCO3}$は塩基性になります。この2つだけを覚えておけばほぼ対応ができます。
次に正塩ですが、
- 強酸と弱塩基からできた塩
→水溶液は酸性 - 弱酸と強塩基とからできた塩
→水溶液は塩基性 - 強酸と強塩基からできた塩
→水溶液は中性
このようになる性質があります。選択肢にある塩はすべて正塩なので、くわしくは実際に選択肢ひとつひとつを確認していきながら見ていきましょう。
①:$\ce{Ca(OH)2}$と$\ce{HCl}$からできた塩です。強酸と強塩基からできた塩ですので、水溶液は中性になります。
②:$\ce{NaOH}$と$\ce{H2SO4}$からできた塩です。強酸と強塩基からできた塩ですので、水溶液は中性になります。
③:$\ce{NaOH}$と$\ce{H2CO3}$からできた塩です。弱酸と強塩基からできた塩ですので、水溶液は塩基性になります。
④:$\ce{NH3}$と$\ce{HCl}$からできた塩です。強酸と弱塩基からできた塩ですので、水溶液は酸性になります。
⑤:$\ce{KOH}$と$\ce{HNO3}$からできた塩です。強酸と強塩基からできた塩ですので、水溶液は中性になります。
問題文に、青色リトマス紙が赤色に変色したとあることから、酸性の水溶液を選ばないといけないことになりますから、正解は④とわかります。
問2 炭酸カルシウムは$\ce{CaCO3}$で、これは弱酸(炭酸($\ce{H2CO3}$)が弱酸なので)からできた塩です。そして、塩酸($\ce{HCl}$)は強酸ですが、弱酸からできた塩と強酸を混ぜ合わせると弱酸ができます。この反応を弱酸の遊離反応といいます。
この遊離反応が起こったとき、塩としては強酸を含む塩ができます。この問題の場合だったら、塩酸が由来となった塩ができるわけです。よって、炭酸カルシウムと塩酸を反応させると、弱酸である炭酸ができ、あわせて塩化カルシウムができることになります。
化学反応式であらわすと、
$\ce{CaCO3 + 2HCl -> H2CO3 + CaCl2}$
ただし、炭酸はすぐに水と二酸化炭素に分解してしまいますので、結局、最終的な化学反応式は、
$\ce{CaCO3 + 2HCl -> H2O + CO2 + CaCl2}$
二酸化炭素が生じるわけですから、石灰水は白濁しますし、捕集は下方置換法(ウ)ということになります。そして、希塩酸はくびれのない方に入れます。そちらのほうが希塩酸を入れる量を調節しやすくするためです。つまり、イで使うのが正しいというわけです。以上より、⑦が正解です。
問3 塩化アンモニウムは$\ce{NH4Cl}$で、これは弱塩基(アンモニア($\ce{NH3}$)が弱塩基なので)からできた塩です。そして、水酸化カルシウム($\ce{Ca(OH)2}$)は強塩基ですが、弱塩基からできた塩と強塩基を混ぜ合わせると弱塩基ができます。この反応を弱塩基の遊離反応といいます。
この遊離反応が起こったとき、塩としては強塩基を含む塩ができます。この問題の場合だったら、水酸化カルシウムが由来となった塩ができるわけです。よって、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを反応させると、弱塩基であるアンモニアができ、あわせて塩化カルシウムができることになります。
化学反応式であらわすと、
$\ce{NH4Cl + Ca(OH)2 -> 2NH3 + CaCl2 + 2H2O}$
(アンモニアや塩化カルシウムのほかに水もできます)
①:アンモニアは塩基性なので、赤色リトマス紙は青色になります。よって、この文は正しいです。
②:アンモニアは塩酸と反応すると、$\ce{NH3 + HCl -> NH4Cl}$となり、白煙を生じます。よって、この文も正しいです。
③:硫酸カルシウムは強塩基ではないので、これと反応させても遊離反応は起こりません。よって、アンモニアが発生することはありませんので、この文は誤りです。
④:アンモニアは塩基性の気体で、ソーダ石灰は塩基性の乾燥剤として発生した水分を除去してくれます。この文は正しいです。
⑤:上で示した化学反応式からもわかるとおり、この反応で塩化カルシウムができるわけなので、これが試験管内に残るわけです。よって、これも正しいです。
答え.
問1 ④ 問2 ⑦ 問3 ③