この問題のポイント
ボイルの法則、シャルルの法則、ドルトンの分圧の法則、気体の状態方程式をどのように使えばよいかをおさえよう!
設問(1):この混合気体では、窒素はすべて気体として存在しています。しかし、水は気液平衡の状態かすべて気体になっているかを判断しなければいけません。すべて気体になっているかそうでないかで、法則が使えないということがあるからです。
この問題では、A点~B点では気液平衡の状態、B点~C点ではすべて気体の状態と判断できます。根拠は2つあり、まずB点のところで折れているということがあります。グラフが折れているということは、そこでなんらかの変化があったということが言えるからです。
もう1つは、B点を境にボイルの法則が成り立つようになっているからです。ボイルの法則とシャルルの法則は次のような法則ですね。
ボイルの法則…分子数と圧力が一定なら、圧力×体積は一定
(=圧力を$P$、体積を$V$とおくと、$PV$の値はいつも一定)
シャルルの法則…分子数と温度が一定なら、体積÷温度は一定
(=体積を$V$、温度を$T$とおくと、\( \displaystyle \frac{V}{T} \)の値はいつも一定)
※この2つの法則を組み合わせたのがボイル・シャルルの法則です。
(\( \displaystyle \frac{PV}{T} \)の値はいつも一定)
今の時点では、体積と圧力しか考えるための条件しか与えられていませんから、ボイルの法則しか使うことができませんが、計算すると、
A点…
\( 0.48×10^5×1 = 0.48×10^5 \)
B点…
\( 0.3×10^5×2.8 = 0.84×10^5 \)
C点…
\( 0.21×10^5×4 = 0.84×10^5 \)
A点だけ違う値になっているので、A点のときは液体の水が存在していたとこれでわかるわけです。
ここで、求めなければいけない水蒸気の分圧ですが、分圧を求めるにはドルトンの分圧の法則が使えます。このような法則ですね。
混合気体の全圧(全体の圧力)は、それぞれの成分気体の分圧をたしていけば求められる
それぞれの成分気体の分圧の比率は、成分気体のモル比や体積比と同じ
水と窒素は2:1のモル比で入っていたんですから、水(水蒸気)と窒素の分圧比も2:1です。つまり、水蒸気の分圧は全圧の3分の2です。よって、すべて気体となった状態のB点・C点の水蒸気の分圧は、
B点…
\( \displaystyle 0.3×10^5×\frac{2}{3} \)
\( = 0.2×10^5 = 2.0×10^4 \)Pa
C点…
\( \displaystyle 0.21×10^5×\frac{2}{3} \)
\( = 0.14×10^5 = 1.4×10^4 \)Pa
A点については、この状態は気液平衡の状態ですから、水蒸気の分圧は蒸気圧と等しいので、水がすべて蒸発したB点の水蒸気の分圧と等しいです。つまり、\( 2.0×10^4 \)Paというわけです。
設問(2):設問(1)の解説でA点の水蒸気の分圧は蒸気圧と等しいと解説しましたので、容器内の蒸気圧は\( 2.0×10^4 \)Paとなります。図2のグラフを見ると、蒸気圧が\( 2.0×10^4 \)Paとなるのは60℃になっていますので、容器の温度は60℃です。
設問(3):モル数を求める問題ですが、モル数を使った公式として気体の状態方程式があります。
気体の状態方程式
\( PV = nRT \)
($P$は圧力(atm)、$V$は体積(L)、$n$は物質量(モル数)、$R$は気体定数、$T$は絶対温度)
あくまで気体についての公式なので気液平衡の状態であるA点ではなく、B点やC点の状態を使って求めることに注意です。たとえば、B点で考えるとして、水蒸気の圧力は設問(1)で求めましたし、体積は図1のグラフより、2.8Lです。そして、温度は設問(2)で求めました。それらの値を公式に使うと、
\( 2.0×10^4×2.8 = n×8.3×10^3×(273+60) \)
近似値になりますが、これを解くと、\( n ≒ 2.0×10^{-2} \)
よって、\( 2.0×10^{-2} \)molとなります。
答え.
設問(1):
A点…\( 2.0×10^4 \)Pa
B点…\( 2.0×10^4 \)Pa
C点…\( 1.4×10^4 \)Pa
設問(2):
60℃
設問(3):
\( 2.0×10^{-2} \)mol