この問題のポイント
ハロゲンは4つの物質の性質、フッ化水素の特性、塩素の生成方法を中心におさえよう!
問1 ハロゲンとは、17族の原子(周期表でいうと右から2番目にある縦の列)のことで、主にフッ素、塩素、ヨウ素、臭素などがあります。
このハロゲンですが、ハロゲンそれぞれの原子について、次の原子番号のものはどれも希ガスと呼ばれるものです(ネオン、アルゴンなど)。この希ガスは、電子殻に入る最大限の量まで電子が入っているから、電子的に安定している物質です。
一方、ハロゲンについては、その希ガスの原子番号1個前の物質しかないので、電子殻にあと1個電子を入れないと安定しない物質ばかりです。よって、イオンは電子を1個余分に取り入れたものになりやすいので、1価の陰イオンになりやすいわけです。また、ハロゲンの物質の分子は、同じ原子でできていますので、電荷が安定している、つまり極性がない分子となります。
ここまでのことは、化学基礎で習うことですが、もう一度確認しておきましょう。そして、ハロゲンの物質それぞれのことについておさえるようにしましょう。
名称 |
フッ素 |
塩素 |
臭素 |
ヨウ素 |
色 | 淡黄色 | 黄緑色 | 赤褐色 | 黒紫色 |
原子番号が小さくなるほど(周期表で上へ行くほど)薄い色味となる | ||||
単体の状態 | 気体 | 気体 | 液体 | 固体(※1) |
原子番号が小さくなるほど(周期表で上へ行くほど)バラバラとなる | ||||
酸化力 | 原子番号が小さくなるほど(周期表で上へ行くほど)強くなる | |||
水との反応 | 激しく反応(※2) | 一部が反応(※3) | 若干反応して溶ける | 水に溶けにくい |
原子番号が小さくなるほど(周期表で上へ行くほど)水との反応が激しくなる | ||||
水素との反応 | 冷暗所でも激しく反応 | 光により激しく反応 | 高温で反応 | 高温でわずかに反応 |
原子番号が小さくなるほど(周期表で上へ行くほど)水との反応が激しくなる |
※1…ヨウ素は常温では固体ですが、昇華性があるので、気体になるときは、液体にならずに直接気体となる。
※2…化学反応式は、$\ce{2H2O + 2F2 -> 4HF + O2}$。
※3…化学反応式は、$\ce{2H2O + Cl2 -> HCl + HClO}$。この$\ce{HClO}$が次亜塩素酸で、漂白・殺菌に用いられる。
問2 ハロゲンの水素化合物でガラス容器に保存できないものはフッ化水素の水溶液であるフッ化水素酸です。ガラスの主成分は二酸化ケイ素($\ce{SiO2}$)ですが、二酸化ケイ素に対し、以下のような化学反応をします。
$\ce{SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O}$
$\ce{H2SiF6}$とは、ヘキサフルオロケイ酸のことです。これに変わって溶けてしまうんで、保存できないというわけです。
フッ化水素($\ce{HF}$)には、他のハロゲン化水素と比べて違う特性がまだあります。フッ化水素の特徴をまとめました。重要なので、ぜひおさえましょう!
- 弱酸である(他のハロゲン化水素は強酸)
- 沸点が非常に高い
- ガラスを溶かすので、保存はプラスチック容器の中でする
解答のチェックポイント
- 保存できない理由としてガラスを溶かすことにふれているか
- 溶ける原因に言及しているか(二酸化ケイ素と反応することにふれているか)
問3(1)二酸化マンガン(Ⅳ)は、ここでは酸化剤として機能しています。半反応式はこんなふうになります。
$\small{\ce{MnO2 + 4H+ + 2e- -> Mn^2+ + 2H2O}}$…①
一方、濃塩酸の半反応式は、こんなふうになります。
$\small{\ce{2Cl- -> Cl2 + 2e-}}$…②
①と②の左辺どうし、右辺どうしをたして、$\ce{2e-}$を消去すると、
$\small{\ce{MnO2 + 4H+ + 2Cl- -> Mn^2+ + 2H2O + Cl2}}$
2個の$\ce{H+}$と2個の$\ce{Cl-}$が結合して、
$\small{\ce{MnO2 + 2H+ + 2HCl -> Mn^2+ + 2H2O + Cl2}}$
両辺に$\ce{2Cl-}$を補って、
$\small{\ce{MnO2 + 4HCl -> MnCl2 + 2H2O + Cl2}}$
この反応式はしっかり作れるようにしておきましょう。
(2)洗気びんの順序と、役割は頻出なので、要チェックです。下の「答え」にある、何の液体が入っているか、何の役割があるか、なぜそれができるのかをしっかりおさえましょう。また、洗気びんの上部では、液体の逆流を防いでいることもおさえておきましょう。
答え.
問1
( ア )…ハロゲン
( イ )…価電子(最外殻電子)
( ウ )…1
( エ )…陰
( オ )…電荷
問2
水溶液の名称…フッ化水素酸
理由…ガラスの主成分である二酸化ケイ素と反応し、容器を溶かしてしまうため。(34字)
問3
(1)$\small{\ce{4HCl + MnO2 -> MnCl2 + 2H2O + Cl2}}$
(2)
洗気びんⅠ
液体の名称…水
役割…塩化水素を取り除くこと。
理由…塩化水素は水に溶けやすいから。
洗気びんⅡ
液体の名称…濃硫酸
役割…水分を取り除くこと。
理由…濃硫酸には脱水作用があるから。
(3)下方置換