この問題のポイント
酸化数を使って酸化剤か還元剤かを判断しよう!
酸化数が減少している=酸化剤
酸化数が増加している=還元剤
酸化剤か還元剤かを考える問題では、酸化数という概念を使うと解きやすくなります。酸化数とは、各原子が基準の状態に比べて、電子が何個多いか、少ないかを示した数のことで、電子が基準に比べて多ければ-、少なければ+を使って表します(電子はマイナスの粒子なので)。
電子の面で考えると、酸化は電子を失う反応であり、還元は電子をもらう反応です。ということは、酸化は酸化数が増えることになり、還元は酸化数が減ることになります。
化学反応式の中の原子について、酸化数はこのようにして求めます。
- 単体(1種類の原子だけで構成されている物質)の中の原子の酸化数は0。1種類の原子のイオンについてはイオンの価数と同じ。
例:$\ce{H2}$の水素原子の酸化数は0
$\ce{Cl-}$の塩素原子の酸化数は-1 - 化合物やイオンでの$\ce{H}$(水素原子)の酸化数は+1、$\ce{O}$(酸素原子)の酸化数は-2
- 化合物中の各原子の酸化数の総和は0。よって、$\ce{H}$や$\ce{O}$以外の酸化数は$\ce{H}$や$\ce{O}$の酸化数を使って計算。イオン結合の物質はイオンの価数で判断。
例:$\ce{H2S}$について、水素原子の酸化数が+1のため、硫黄原子の酸化数は-2でないと総和が0にならない。
$\ce{KCl}$の塩素原子の酸化数は-1($\ce{Cl-}$の価数が-1なので) - 複数の原子からできるイオンについては、各原子の酸化数の総和は、そのイオンの価数と同じ。
例:$\ce{CO3^2-}$について、酸化数の総和は-2。よって、このときの炭素原子の酸化数は+4(酸素原子の酸化数は-2なので)。
問1 還元剤とは、化学反応で相手となる物質を還元させる物質のことです。酸化と還元は同時に行われますから、還元剤となる物質自身は酸化してしまうことになります。
ということは、還元剤自身の酸化数は増えているはずですね。なので、酸化数が増えている反応を探しましょう。
①…
$\ce{H2O}$の水素原子の酸化数は+1
→反応後にできた$\ce{H2}$の水素原子の酸化数は0=酸化数が減っている
②…
$\ce{Cl2}$の塩素原子の酸化数は0
→反応後にできた$\ce{KCl}$の塩素原子の酸化数は-1=酸化数が減っている
③…
$\ce{H2O2}$の酸素原子の酸化数は-1($\ce{H2O2}$のときだけ$\ce{O}$の酸化数は-1です!)
→反応後にできた$\ce{H2O}$の酸素原子の酸化数は-2=酸化数が減っている
④…
$\ce{H2O2}$の酸素原子の酸化数は-1
→反応後にできた$\ce{H2SO4}$の酸素原子の酸化数は-2=酸化数が減っている
⑤…
$\ce{SO2}$の硫黄原子の酸化数は+4
→反応後にできた$\ce{H2SO4}$の硫黄原子の酸化数は+6=酸化数が増えている
また、酸素原子は-2で変化なし
⑥…
$\ce{SO2}$の硫黄原子の酸化数は+4
→反応後にできた$\ce{S}$の硫黄原子の酸化数は0=酸化数が減っている
以上より、⑤が還元剤としてはたらいた反応といえます。
問2 酸化剤とは、化学反応で相手となる物質を酸化させる物質のことです。酸化剤となる物質自身は還元されてしまうことになるんで、酸化剤自身の酸化数は減っているはずですね。なので、問1と同じような方法で酸化数が減っている反応を探しましょう。
ア…
$\ce{Cu}$の銅原子の酸化数は0
→反応後にできた$\ce{CuSO4}$の銅原子の酸化数は+2
=酸化数が増えているから還元剤になっている
イ…
$\ce{SnCl2}$のすず原子の酸化数は+2
→反応後にできた$\ce{Sn}$のすず原子の酸化数は0
=酸化数が減っているから酸化剤になっている
ウ…
$\ce{Br2}$の臭素原子の酸化数は0
→反応後にできた$\ce{KBr}$の臭素原子の酸化数は-1
=酸化数が減っているから酸化剤になっている
エ…
$\ce{KMnO4}$のマンガン原子の酸化数は+7
→反応後にできた$\ce{MnSO4}$のマンガン原子の酸化数は+2
=酸化数が減っているから酸化剤になっている
よって、酸化剤となっているのはイ、ウ、エの3つだということになります。
答え.
問1 ⑤ 問2 ③