この問題でおさえておきたいこと
貿易のしかたや分類、先進国と発展途上国の貿易の特徴がどう移り変わったかをおさえる!
解答
問1
A …水平 B …垂直
C …中継
D …加工
E …モノカルチャー F …マレーシア
問2
a…2 b…4 c…3
問3
あ…3 い…5 う…2
え…1 お…4
解説
問1
A ・B 国どうしが生産を分担することを国際分業といいます。その生産物の取引が貿易です。先進国どうしの貿易である水平貿易は水平的分業、先進国と発展途上国の間の貿易である垂直貿易は垂直的分業に対応しています。
C 「ポイントのまとめ」にもあるとおり、中継貿易は輸入品を再輸出して利益を得る貿易なので、輸入品を国内で消費せずに輸出します。倉庫料や手数料を収入として利益を得ているわけです。
D 「ポイントのまとめ」にもあるとおり、この貿易は加工貿易です。技術水準が高く労働力が豊かな一方、資源の産出量が少ない国がおこなう傾向があります。日本もかつては加工貿易がさかんでした。
E 「ポイントのまとめ」にもあるとおり、この経済体制はモノカルチャー経済です。自然条件の影響を受けやすいなどの理由で一次産品は価格が不安定なうえ、工業製品と比べて交易条件が悪化しやすいため、この経済体制だと国の経済は不安定となります。
F ペナン島は交通の要所であるマラッカ海峡にあり、中継貿易で発展しました。機械工業も発達しています。
問2
aで問われているように、各国に子会社を置き、世界規模で活動する企業を多国籍企業といいます。また、bで問われている租税回避地では、租税を極端に安くすることで外国の船主が船籍を置き、外国企業が本社や子会社を置くようになります。税収は得られますが、生産などの経済活動はあまりおこなわれません。
そして、cで問われている産業の空洞化ですが、地域や国の基幹産業(製造業など)が海外移転してしまうと、もともとの国内の産業が衰退する原因となってしまいます。日本でもこれにより地域の人口が減り、商業が衰退するなど地域全体への影響がみられます。
問3
〈う〉と〈お〉の輸出品目には機械類がなく、茶やコーヒー豆、あるいは銅などのような一次産品が目立ちます。この2つの国は発展途上国のモノカルチャー経済の様子を示しているといえます。
チリは銅の生産がさかんで、アメリカ合衆国資本による銅のモノカルチャー経済となっているので、〈お〉がチリです。よって、茶やコーヒー豆を輸出している〈う〉がケニアです。
そして〈あ〉についても、輸出品目に衣類があり、〈う〉や〈お〉と同じく対内直接投資が多いことから発展途上国と判断できます。機械類の輸出額が多いので、日本や欧米から製造業が進出しているタイと考えることができます。
アメリカと日本が残っていますが、〈い〉と〈え〉を比べてみると、〈い〉については輸出品目に鉄鋼があるが航空機がないこと、輸入品目に自動車がないことから、こちらが日本、〈え〉がアメリカを示しているとわかります。
ポイントのまとめ
1.貿易政策
国家が貿易に何の制限もしない自由貿易政策と、国家が貿易を制限して自国の産業を保護する保護貿易政策とがある
保護貿易政策には、おもに次のような政策がある
- 関税政策…
自国の商品と競争関係にある輸入品に高い率の税金を課すという政策 - 管理政策…
輸入を割当制または許可制にして、輸入量や輸入品を制限するという政策
2.貿易の形態
- 中継貿易…
輸入品を再輸出して利益を得る貿易 - 三角貿易…
相手国の間に第三国を入れて、収支のつながりをとる貿易 - 加工貿易…
原材料を輸入し、それを自国で加工・生産して製品に変え、それを輸出する貿易
3.貿易機構
貿易自由化を促進し、保護貿易撤廃を主目的に関税および貿易に関する一般協定(GATT)が発足
各国の通貨の安定をはかることによって貿易を拡大し、為替制限を撤廃することを主目的に国際通貨基金(IMF)も設立
↓
1993年のウルグアイラウンドの国際的合意により、GATTにかわって世界貿易機関(WTO)が設立
これにより、多角的貿易体制のルール管理だけでなく、モノ,サービス,知的財産権の国際取引の統一的な協定も運用されるように
4.先進国と発展途上国の貿易
先進国では、先進国相互の水平貿易がさかんで、国際貿易の中で大きな割合を占める
発展途上国から資源や原料を輸入して製品を輸出する垂直貿易もおこなう
↓
しだいに発展途上国など海外で生産するほうが人件費などが安くすむようになり、生産拠点が海外へと移っていくようになる(=産業の空洞化)
発展途上国では、特定の一次産品(加工を経ていない、または加工度が低い産出品)を先進国に輸出し、工業製品を先進国から輸入する垂直貿易が典型的
↓
少数の一次産品の輸出に依存する経済体制(モノカルチャー経済)により経済が発展しにくい
→先進国が発展途上国の経済を支配し経済格差が生じる(南北問題)
↓
工業化が進んだ発展途上国では、近年、機械類など工業製品を先進国に輸出するように成長
→資源もなく、工業化がまだ進んでいない国もあり、発展途上国間で経済格差が生じる(南南問題)