この問題でおさえておきたいこと
古代から近世までに描かれた代表的な地図について、地球のどこまでの範囲を「世界」とみなしていたかを中心に特徴をおさえよう!
解答
🄰
(1)b (2)d
(3)a (4)d
🄱
問1.(例)
Aは古代ギリシアで描かれ、地中海沿岸での活発な交易を背景として、その地域の海岸線が正確に描かれている。しかし、地中海を中心とした地域のみ描かれており、地理的知識は限定的だった。Bは中世に描かれ、エルサレムや楽園が描かれており、キリスト教の影響を強く受けている。海岸線などは単純化され、科学的知見は後退した。Cは大航海時代に描かれ、南北アメリカ大陸があり、航路や植民地付近の海岸線が正確に把握されていることから、航路の拡大・地球球体説の支持を背景に地理的知識の範囲が全世界へと拡大したことがうかがえる。(250字)
問2.(例)
緯線と経線に囲まれた面積が地球上の面積と比例するよう調整されているので、メルカトル図法では高緯度ほど面積が拡大されるが、Cの地図では高緯度地方の面積が正確である点が長所である。しかし、経線と緯線が直交しておらず、メルカトル図法よりも2地点間の角度が正確ではないため、航海には不向きな点が短所である。(149字)
解説
🄰
(1)「重要事項のまとめ」にあるとおり、現存する最古の地球儀はマルティン=ベハイムの地球儀で、それには日本が描かれていますから、Aは正しいです。しかし、プトレマイオスの世界地図には東は中国の一部までしか描かれていないので、Bは誤りです。
(2)「重要事項のまとめ」にあるとおり、オルテリウスの世界地図が出版されたのは大航海時代以降です。そして、地球球体説は古代ギリシアのエラトステネスがすでに唱えていました。よって、両方の文とも誤りです。
(3)「重要事項のまとめ」にあるとおり、TOマップはキリスト教の影響を強く受けており、地図中の中心にエルサレムが描かれています。また、イドリーシーの地図はイスラームの代表的な地図で、アラビア半島を中心に南を上にして描かれています。よって、両方の文とも正しいです。
(4)行基図はたしかに日本全図としては最も古いですが、諸国を楕円状に描いて位置関係を示しただけの地図なので実測図ではありません。また、伊能忠敬は沿岸などを実際に歩いて距離などを計測したので近代的な方法を使ったわけではありません。よって、両方の文とも誤りです。
🄱
問1.それぞれの地図の特徴や描かれている世界の範囲から考えると、Aの説明で「古代ギリシア」、Bの説明で「キリスト教」、Cの説明で「大航海時代」を使うことがわかるでしょう。(ちなみにAはヘカタイオスの世界図、BはTO図、Cはオルテリウスの世界図です)
それぞれにあらわれた地理的知識について論じるわけなので、世界のどの範囲が描かれているのか、どこの詳細が当時わかっていたのかを中心に論じていくといいでしょう。そして、それだけでは字数が足りませんから、その知識を持つに至った歴史的背景についてもふれるとよいでしょう。
解答のチェックポイント
- Aが古代ギリシアの時代の地図だと判断しているか
- Aの地図から、当時の地理的知識の範囲は地中海沿岸を中心とした地域に限られていたことを読み取っているか
- Aの地図の歴史的背景として、当時の地中海沿岸における交易があったことにふれているか
- Bの地図は中世ヨーロッパのキリスト教の影響があらわれた地図だと判断しているか
- Bの地図にあらわされた情報は正しいものではないことを具体例(楽園の存在、ほぼ直線の海岸線など)を挙げながら指摘しているか
- Bの地図は古代ギリシアの頃より後の時代に描かれているが、地理的知識としては後退していることにふれているか
- Cが大航海時代の地図だと判断しているか
- Cの地図から、地理的知識の範囲が非常に広くなったことを読み取っているか
- Cの地図ができた理由として、航路の拡大や地球球体説の支持などの歴史的背景があったことにふれているか
問2.メルカトル図法と比較することが条件となっていますから、メルカトル図法の長所と短所を思い出してみましょう。
長所:2地点間の直線がそのまま等角航路を示す=2地点間の角度が正確である
短所:高緯度になればなるほど、距離や面積が拡大してしまう
この視点でCの地図を見ると、モルワイデ図法やエケルト図法のような正積図法の地図に似ています。ということは、メルカトル図法で短所となっていた面積についてはこちらのほうがより正確になっているわけです。ただし一方で、メルカトル図法の長所であった角度については不正確となってしまっています。
「面積」と「2地点間の角度」の2点について反対の性質があることを述べていくと、長所と短所両方について述べた文ができあがるはずです。
解答のチェックポイント
- Cの地図の長所として、面積の正確性を述べているか
- メルカトル図法では面積の正確性が不十分だということを述べているか
- Cの地図の短所として、2地点間の角度が不正確だということを述べているか
- メルカトル図法では2地点間の角度が正確だということを述べているか
ポイントのまとめ
・世界の各時代の地図
1)古代
1.バビロニアの世界図
紀元前700年頃に完成。粘土板に描かれている。
バビロンを中心とした円盤状の世界観をもっていたことがわかる。
2.エラトステネスの世界図
世界は球体であると考え(地球球体説)、地球の周囲の長さを算出した。
ジブラルタル海峡からインドのガンジス川、セイロン島までの範囲が描かれていて、北西にはグレートブリテン島とアイルランド島が描かれている。
3.プトレマイオスの世界図
はじめて投影図法を使用し(世界を円錐面に投影)、経緯線を使用した。
東西ではカナリア諸島から中国の西安付近まで、南北ではスカンジナビアからナイルの源流までの範囲が描かれている。
2)中世
1.TO図(TOマップ)
キリスト教の世界観が色濃く反映されている(エルサレムが中心になっている、楽園が存在していて楽園がある東を上にしている)。
聖書に書かれたことが真実とされたため、科学性が否定されている(アジア・アフリカ・ヨーロッパがTの字に分割され、オケアノスという海がOの字になって周囲を取り囲んでいる)。
2.イドリーシーの世界図
プトレマイオスの合理的な世界図を継承したイスラームの代表的な世界地図である。
聖地のメッカがある南が上になっていて、交易を通じて西アジア、南アジア、インド洋、北アフリカの部分の地図の正確性が増した。
3)大航海時代以降
1.マルティン=ベハイムの地球儀
現存する最古の地球儀で、プトレマイオスの世界図に基づいている。
ジパング(日本)が描かれるなどアジアの範囲は拡大したが、アメリカ大陸は当時未発見なので存在しない。
※マゼランが世界一周に成功したことにより、このような地球球体説は証明されることとなりました。
2.メルカトルの世界図
安全な遠洋航海を目的に、正角図法(2地点間の角度が正しくあらわされた図法)で作成された。
この図法はメルカトル図法ともよばれている。
3.オルテリウスの世界図
世界で最初の近代的な地図帳である。
アフリカから南アジアへの海岸線はある程度正確だが、アメリカ西岸は不詳、オーストラリアも認識されていない。
・日本のおもな地図
1.行基図
奈良時代につくられたとされる、日本最古の日本全図である。
行基という僧がつくったとされている。
2.大日本沿海輿地全図
江戸時代に伊能忠敬が日本全国を正確に測量して作成した。
主要な街道や河川、海岸線がすべて載っているが、未踏地は空白となっている。
3.現代の地図
国土交通省の国土地理院が、地形図・地勢図・土地利用図などの作製を担っている。