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この問題でおさえておきたいこと

日本の工業の特徴と工業化のあゆみがどのようなものかを理解しよう!
それぞれの工業地帯や工業地域でどのような産業がさかんかを覚えよう!

解答
(1)
a (例)中東戦争による石油危機で景気が悪化し、失業者が増えたため。(29字)
b (例)バブル景気崩壊後の不景気と、生産拠点の海外移転があったため。(30字)
(2)
B…千葉   C…三重
府県Aの比較…
(例)府県Dと同じく中小企業中心だが、産業構造が高度であり、製造業の集積度も高い。(38字)
(3)
a E…オ   F…ウ   G…イ
b (例)人件費や土地代の節約ができ、航空機輸送を前提に地方の空港近くに集積されたため。(39字)

解説

(1)

a 1970年から1975年の時期には、「ポイントのまとめ」にあるとおり、石油危機が起こっています。これにより、日本の高度経済成長が終わり、景気が悪化したことが、就業者数が減少した原因と考えられます。

ちなみに、日本は省エネルギー化・経営合理化をすすめ、いち早く石油危機の後遺症を脱出し、安定成長期を迎えたこともおさえておきましょう。

解答のチェックポイント

b 1990年代に日本経済に影響があったのは、「ポイントのまとめ」にあるとおり、バブル景気の崩壊です。これを記述に盛り込むべきことは明らかですね。

また、この時期あたりには、企業が生産拠点を海外移転する動きがありました。特に、バブル景気の時期は国内の人件費が上昇したため、国際競争力を回復させるために生産拠点を東南アジアや中国などに移転させる動きが進みました。このような産業の空洞化も国内の雇用を悪化させたこともふれるべきでしょう。

解答のチェックポイント

(2)

事業所数が多いほど、工業化が進んでいると考えれば、事業所数が一番多いAが大阪、一番少ないDが高知と考えられるでしょう。

千葉と三重を比較すると、首都圏に近いということと京浜工業地域の影響をうけて発達した京葉工業地域を抱えるということを根拠に、千葉のほうが工業が発達していると考えることができます。よって、事業所数の多いBが千葉、Cが三重といえるでしょう。

また、府県A(大阪)と府県D(高知)の比較については、事業所数だけの記述だけでは高得点はのぞめませんから、ほかの項目からも読み取れることを記述しましょう。まず、1事業所あたりの従業員数については、大阪も高知もほぼ同じで少ない値ですから、両方とも中小企業が中心といえるでしょう。

しかし、大阪のほうが1事業所あたりの付加価値額は高いので、大阪のほうが産業構造は高度であると読み取れます。これらのことを記述するといいのですが、面積がせまい大阪に多くの事業所があることも表からわかるので、製造業の集積度も大阪のほうがはるかに高いことについてふれると、もっといいでしょう。

解答のチェックポイント

(3)

a E:愛知での割合が特に高いことから、中京工業地帯で生産がさかんな産業を考えると、「ポイントのまとめ」にあるとおり、機械工業となります。豊田を代表として、自動車工業がさかんなので、「輸送用機械器具製造業」だと考えられます。

F:富山や大分で数値が高くなっています。「ポイントのまとめ」にあるとおり、大分では重化学工業がさかんです。

また、富山をふくむ北陸地方の工業は伝統的な繊維工業が中心でしたが、水力発電所の建設が進むと、化学肥料を製造する電気化学工業やアルミニウム工業が発達してきました。とくに富山では売薬製造の歴史を背景に、製薬・化学工業がさかんになりました。以上より、「化学工業」が答えといえます。

G:東京での割合がきわだって高いことから、京浜工業地帯で生産がさかんな産業を考えると、「ポイントのまとめ」にあるとおり、印刷・出版業となります。よって、「印刷・同関連業」だと考えられます。

b 電子部品・デバイス製造業の製品は、小型で価格に対して輸送費がさほど高くなくてすむため、航空機輸送でも対応ができます。そのため、人件費や土地代を節約するために、地方の空港近くに工場が立地されがちです。製品をつくるうえで豊富な用水も必要ですが、それも地方に行くほうが手に入りやすいです。

これらの条件を満たしているのが九州地方だということで、九州にIC(集積回路)産業が進出し、シリコンアイランドと呼ばれるようになったわけです。ちなみに、東北地方にも同じような理由でIC(集積回路)産業が進出しています。

解答のチェックポイント

ポイントのまとめ

1.日本の工業の特徴

2.日本の工業化のあゆみ

戦前までに京浜・中京・阪神・北九州の四大工業地帯が形成
戦前は軽工業が中心で生糸・綿織物・絹織物が主な輸出品

戦後は朝鮮戦争による特需で復興がはじまる
1950年代からは加工貿易で発展していき、高度経済成長をとげる

貿易上の問題が発生

プラザ合意により始まったバブル景気が1990年代に崩壊、不況に

新興国への輸出を中心に2002年ごろからゆるやかに景気回復

2008年の金融危機により輸出が落ち込み
2011年に東日本大震災が発生し、原子力発電所事故や原料費高騰を背景に輸入超過に

3.工業地域の特色

工業生産額の第1位は愛知で、神奈川,大阪,静岡,兵庫とつづいている

1)京浜工業地帯
日本最大級の総合工業地帯で、とくに印刷・出版業がさかん
(都心で流行や情報の中心地になっているため)

2)中京工業地帯
出荷額第1位で機械工業がさかん
自動車工業の豊田、毛織物工業の一宮、窯業の瀬戸や多治見などの工業都市がある

3)阪神工業地帯
中小企業の比率が高い
繊維工業や金属工業の低迷で、現在は地位が低下

4)北九州工業地帯
戦後、地位が低下したが、現在は機械工業が成長

5)関東内陸工業地域
京浜工業地帯の拡大をうけて、機械工業が発達
群馬県では自動車工業がさかん

6)京葉工業地域
京浜工業地帯の拡大をうけて発達
千葉県では石油化学工業がさかん

7)東海工業地域
富士では製紙・パルプ工業が発達
浜松ではオートバイなどの機械工業が発達

8)瀬戸内工業地域
石油化学工業・造船業・鉄鋼業が発達

9)北陸工業地域
伝統的な繊維工業が発達

10)その他の工業都市
パルプ工業の苫小牧、鉄鋼業の室蘭、電気機械工業の日立、繊維工業の郡山、重化学工業の大分、化学工業の延岡など