この問題でおさえておきたいこと
オーストラリアの農業・資源は地形・気候と関連づけて理解しよう!
白豪主義の転換は経済的背景があることもおさえる!
解答
問1
日本標準時子午線にもっとも近い都市
記号:D 都市名:アリススプリングス(アリススプリングズでもOK)
ヨーロッパ人が最初に入植した都市
記号:B 都市名:シドニー
問2
記号…M
答えの根拠…
(例)鉄鉱石が産出される北西部や石炭が産出される東部、ボーキサイトが産出される北部などに分布しているから。(50字)
問3(例)
大半が乾燥気候で大鑽井盆地では被圧地下水を利用した牧羊が、北部のサバナ気候地域では牧牛がされている。(50字)
問4(例)
ステップ気候地域で雨は比較的少ないため、粗放的な牧羊や、スノーウィーマウンテンズ計画などで灌漑を使った小麦の栽培が行われている。しかし、牧羊地域では過放牧による砂漠化が進行しており、小麦栽培地域では灌漑による塩害が発生している。(114字)
解説
問1 日本標準時子午線は東経135度であり、この経線はオーストラリア大陸の中央部を通っています。また、ヨーロッパ人の入植はジェームズ=クックがボタニー湾に上陸したことで始まりました。1788年にそのボタニー湾北方にあるシドニーに最初の入植地が開かれました。
問2 「ポイントのまとめ」にて説明している資源の分布にちょうどあてはまった分布になっていることを根拠に述べればよいでしょう。ちなみに、Lはマーレ―ダーリング盆地などの農業地域に多いので農村サービス都市、残ったNはアボリジニー集住都市です。
解答のチェックポイント
- 記号はMを選んでいるか
- 根拠として、オーストラリアの鉱産資源の分布と一致していることを述べているか
- 具体的な鉱産資源として銅、鉄鉱石、ボーキサイト、金などのうちから複数のものを選んでそれがどこに分布しているかの説明もまじえているか
問3 該当地域はほとんどが砂漠地域ですが、大鑽井盆地や北部のサバナ気候地域も含んでいます。そこでは牧羊や牧牛が行われていますから、そのことを「経済活動」として述べるとよいでしょう。
一応、経済活動としては鉱産物の採掘もあるのですが、「気候条件や土地条件に適応した経済活動」としての説明はしづらいので、それは省略して問題ないでしょう。
解答のチェックポイント
- 砂漠気候、または雨が非常に少ない気候である地域がほとんどということが示されているか
- 雨が少ないので牧羊がされていることが説明されているか
- サバナ気候地域も含まれていることが示されているか
- サバナ気候地域では牧牛がされていることが説明されているか
問4 問3と同じで、ここでも農牧業にしぼって説明したほうがよいでしょう。該当地域で行われているのは牧羊と小麦栽培ですが、これがどういう環境問題を起こしているかを考える必要があります。
まず牧羊については、家畜の過剰な放牧をすると草木が生育しにくくなり、砂漠化を引き起こすことは、ほかの分野などで学んだとおりですから、それについて説明すれば十分です。
小麦栽培については、灌漑を行っていたことがキーになります。乾燥している地域で灌漑をしすぎると、水分の蒸発で土の塩分濃度が高くなって塩害が起こり、穀物の栽培ができなくなってしまうわけです。
牧羊とオーストラリアの灌漑による小麦栽培から一歩深く考えて、砂漠化と塩害ということを導き出す必要があるので、少し難易度は高い問題といえるでしょう。
解答のチェックポイント
- 該当地域はステップ気候、または雨が比較的少ない気候であることが示されているか
- 人間活動として牧羊と小麦栽培がされていることが示されているか
- 牧羊のしすぎによって引き起こされている問題として砂漠化があることが説明されているか
- 小麦栽培は灌漑があるから可能になっていることがわかる解答になっているか
- 灌漑のしすぎによって塩害が起きていることが説明されているか
ポイントのまとめ
1.自然・地形
1)地形
オーストラリア大陸はほとんどが安定陸塊である世界最小の大陸。
東部にグレートディバイディング山脈が走っていてそれのみが古期造山帯
。中央部には大鑽井盆地(グレートアーテジアン盆地)が広がる。
2)気候
- 大部分(中央から西岸にかけて)…砂漠気候・ステップ気候
- 北端…サバナ気候
- 東海岸…温暖湿潤気候
- 南東部…西岸海洋性気候
- 南西部や南端…地中海性気候
2.おもな都市
都市人口率が高く、二大都市はシドニー(最大)とメルボルン(第二の都市)。
首都のキャンベラは計画都市。
3.産業
1)農牧業
- 牧羊…
年降水量250~750mmの地域で発展(←ほとんどが乾燥地域で農業に向かないため)
乾燥に強いメリノ種の羊が多く、世界最大の羊毛生産国
大鑽井盆地(グレートアーテジアン盆地)では被圧地下水を掘り抜き井戸で飲み水として利用 - 牧牛…
北端から東部にかけてさかん(←サバナ気候で雨が多いから牛の飲み水を確保できる) - 小麦栽培…
年降水量500mmの地域で灌漑をして栽培
(例:南東部のマレー川流域はオーストラリアアルプス山脈ふもとに貯水ダムをつくり、地下にトンネルを掘削して導水するスノーウィーマウンテンズ計画を実施)
2)鉱工業
資源が豊富で、産出量も多い
- 石炭…
東部のグレートディバイディング山脈のところで産出(←古期造山帯からは石炭が産出しやすい)
世界最大の輸出国 - 鉄鉱石…
北西部のピルバラ地区などで産出(←安定陸塊では大昔にできた酸化鉄の地層が地表近くにあることが多い)
世界最大の輸出国 - ボーキサイト…
北部の熱帯地域で産出(←熱帯の大量の雨がボーキサイト以外の養分を流しやすいので、ボーキサイトが大地に残りやすい)
世界最大の生産国
※オーストラリアは主要な鉱産資源の産出地域があまりに離れていて輸送コストがかかることと、人口が少なくて市場規模も小さいことにより、工業化が遅かったこともおさえておきましょう。
4.社会の変化
アボリジニーという先住民が採集・狩猟を営んでいた
↓
イギリスの植民地になったことで白人の移民が増加、先住民の人口は減少
(=現在の住民の多くはイギリス系白人)
↓
オーストラリアの最大の貿易相手国はイギリスに
白豪主義政策により、有色人種の移民を制限
↓
イギリスがECに加盟→ヨーロッパ域内での貿易が加速
貿易相手国として日本などアジア諸国の存在が大きくなる
↓
1970年代に白豪主義政策を撤廃し、多文化主義に転換
APEC(アジア太平洋協力会議)を提唱
(これにより、APECは1989年ごろに設立)